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4-5

いつも理路整然と話すリュート様が、ゆっくり、少しずつお話になる。

「キミが……自分の意思でここに居たいっていうなら……まあ、いいけど」

「……?」


リュート様の仰っている意味がわからず首をかしげていると、リュート様の眉根が少し寄り、口調が苦々しいものになる。

「今日みたいな目にはなるべく遭わせないように僕も努力するけど、それでも……ここにいる限り、キミが嫌な思いすることがあるかもって話」


思わず目を瞬かせる。

本当に優しい人だなぁと、いっそ感心してしまう。そんなこと、気にしなくていいのに。

ふふっと、つい笑みがこぼれた。

「それでいいんです。今日みたいにいくらでも利用してください。使ってください。リュート様が気に病むことなんて、何もありません」


リュート様は心配そうにこちらを見ていた。こんなに感情がしっかり面に出ているリュート様を見るのは古書の件以来、二度目だ。

――どうせ見るなら、もっと嬉しそうな顔がよかったな。

「変なこと言わないの」

「はい。ふふ、すみません。でも大丈夫ですよ!リュート様のお役に立てるなら、それ以上の幸せはありませんので」


そう笑っていたら、リュート様が何気なく呟く。

「でも良かった。もしこれで働く動機に色恋話が出てくるようなら、悪いけど配置換えも視野に入れてた」

「――っ!」

「そっち方面は昔、やらかされたことがあって。……というか、ぶっちゃけ、いい思い出ない」


思わずビクリと体を震わせる。

だって、リュート様に畏れ多くも恋心を持っていることだって、本当のことなのに。

配置換えは嫌だ。動揺するな、絶対気取られてはいけないと自分に言い聞かせていたら、リュート様から言葉が飛んできた。


「……サンビタリア。念のため言っておくけど僕は、自分に向けられた感情に対して、鈍感じゃないつもり」

“バレてないなんて思うなよ"という、副音声すら聞こえた気がした。

これは、絶対に見抜かれている。


どうしよう、配置換えなんてしたくない。

体が震えて段々と動悸は激しくなるのに、血の気が引いていく感覚がした。


「お、お慕いしているのも、事実です。ですが、この想いが分不相応なのは、り、理解しておりますっ」

身体も声も震わせながら、なんとか答える。

本当に、どうして恋なんてしてしまったんだろう。鉄屑娘に想われても迷惑なことなんて、重々承知しているのに。


「ご迷惑なんて、絶対にかけません。ご心配であれば誓約術式だってかけていただいて大丈夫です!ですから――」

「……うん、()()()変なことしないだろうし、今すぐにどうこうする気はない。業務面では助かってるし」


言い募ろうとした私に対し、あっさりとリュート様が答える。

ぽかんとしていたら、「その代わり」と言いながらリュート様が私に目線を合わせて告げる。


「キミの気持ちには応えられない。部下として扱う。……それでいい?」


ええと、つまり、どういうこと?

急展開に頭の整理が追い付かない。


「サンビタリア?」

「……結局私は、補佐官のままでいられるのでしょうか?」

「いまのところはね。あとは、キミ次第」


――ああ、よかった。安心して肩の力が抜ける。

要は、想い自体はバレてしまっているが、分不相応な望みを持たずにいれば補佐官でいさせてもらえる。という話だったらしい。


「承知しました!補佐官として、精進させていただきます!」


ニッコリと笑う。笑ってみせる。

私の願いは、目標は、リュート様の傍でお役に立つ事。


涙を流し、何かを叫んでいる恋心は黙殺した。

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