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後日談5(未来の話)

若い男は書類を手に淡々と口を開く。

「事故現場を調査させていただきましたところ……こちらの術式痕跡が発見されました」


「ははは、すみません。うちの若いモンがふざけて使ったものです。今回の事故とは関係ないですよ」

それを受けた恰幅のいい男が笑い飛ばすと、若い男はにこりと微笑み、その美しい顔を惜しみなく利用する。


「左様でしたか。隠匿術式の使用形跡もございましたが……今のお話を含めて、その旨報告書に記載させて頂いても?」

洋燈の灯りに照らされた、若い男の髪が鉄色に輝いた。



「ルクス君、あの案件自責とれたの!?」

「え、普通に取れましたけど……?」


ここは王都にある大手保険会社。

アウリアドで古参かつ最大手のこの会社は、高額かつ難しい案件がよく舞い込む。

ルクス――例の若者はここで保険調査員として働く若手だ。


ルクスから報告を受けた上司は、心配そうに彼を見る。

「君……いつか刺されない?」

「襲撃を受けたら返り討ちの上、小まめに警邏官に突き出してるので、まぁ大丈夫かと」

「え、受けてるの!?報告して!?」

「分かりました、今度から報告しますね」


上司とのやりとりを終えたルクスは、いそいそと帰り支度を始める。

若手ながらも優秀なルクスは、抱えている案件も多い。

こんな早い時間に帰ろうとするのは珍しかった。


普段から隙のない部下に、上司はつい声をかけてしまう。

「何?今日はデートでもあるの?」

「はは、そんな相手いればいいんですけどね。……母の誕生日なんです。実家に帰らないと父がうるさくて」



王都の中を歩き、高い塀に囲われた地を訪れる。

詰所で魔力紋照合を受け、来場者識別用の腕輪を着けて塀の中に入る。

――中にあるのは、普通の住宅地。


いくつかの住居が建ち並ぶ道を通り、一軒の家の呼び鈴を鳴らす。

内側から扉が開き――銀髪の女性が顔を出した。

「ルクス!おかえりなさい。お仕事大変なのに来させてごめんね」


ルクスは肩をすくめ苦笑いすると、途中の花屋で購入した一輪の華を女性に渡す。

「主役が何言ってんの。誕生日おめでとう、母さん」


ルクスの母は嬉しそうに微笑み、華を受け取る。

「まぁ、綺麗!早速活けるね」


玄関先でそんな話をしていたら、家の奥から声と共に赤茶色の髪の男性が出てくる。

「ルクス、カレン、そんなところで話してないで早くおいで」

「父さんも久しぶり。母さん行こう」

「うん!あなた見てください、ルクスがお華をくれました」

「ふふ、よかったね」


――相変わらず、父さんと母さんは仲がいい。


約半年ぶりに見る両親の姿に、ルクス・ストックリーは静かに微笑んだ。

これにて完結です。

ここまでお付き合いくださり、本当にありがとうございました。

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