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48-1

ウェンが顧問室にやってきて、とにかく馬車寄せでカレンを迎えてゼフトと合流しろ、細かい話はゼフトから聞けと言われた。


予定より帰棟時間が遅かったので心配だったこともあり、慌てて馬車寄せに行くと、ちょうどカレンの馬車が帰ってきたところらしい。

シュレインと近衛の副長が、馬車の傍で困った顔をして立っていた。


シュレインが僕に気付き、手を振ってくる。

「よかったー!えーと、詳しい話は俺らからは出来ないんだけど、早くアイツ回収してやって!」


訳もわからず馬車の中に促されると……カレンが、ベスさんに縋り付いて泣いていた。

姉に甘える子どものように泣きじゃくっている。


ベスさんが僕に気付き、カレンに声をかける。

菫色の瞳が僕を捉え、更に涙を溢れさせた。

「う、ぁ……りゅー、と、さまぁっ……!」

「カレン……?」

ベスさんと場所を代わり、カレンを腕の中に仕舞い込んだ途端、妻はわんわんと泣き始める。


怪我は無いようだが、カレンがここまで人前で崩れているのを見るのは初めてだ。

心配もあるが、どちらかというと戸惑いの方が強い。思わずベスさんを見ると、彼女はそっと僕に頭を下げた。

「今回の件は、ゼフト部長よりご説明いただくため、説明しないようにと指示を受けております」

「……そう」


とにかく、カレンをこのままにはしておけないだろうと、カレンを抱えて馬車を降りる。

ここを離れ、いったん顧問室に行こうか迷っていたら、ちょうどゼフトの馬車が着いた。



ゼフトと三人で顧問室に入り、カレンが襲撃を受けたこと、無傷で無事だったことを教えられた。

なんでも修道女見習いが、拉致組織の手引きをしていたらしい。


そこまで聞かされて、やはり首を傾げてしまう。

見た限りだと、シュレインもベスさんも、近衛の副長も全員無傷だ。

カレンの心的負担が無かったと言う気はないが、それでも、ここまで崩れる要素が思いつかない。


カレンは泣き疲れたのか、顧問室に運んでいる途中で気を失うように眠ってしまった。

仮眠室に寝かせてこようかと思ったが、「そのまま抱えてろ」とゼフトに言われたのもあり、カレンを膝の上に抱えたまま応接スペースのソファで話を聞いている。


ゼフトは応接ソファの向かいに腰掛け、神妙な顔をしていた。

なんと説明しようか考えているのか、視線を下げていたが、深呼吸してから口を開いた。

「……さっき話した修道女見習いが、ストックリーに刃物を向けた。ついでに暴言妄言もセットでな」

「は?」


まさかまた、鉄屑と呼ばれたのだろうか?

修道女見習いの年齢は聞いていなかったが、もしかしてまた学園の――。

「その修道女は、マルグリットと名乗っている」


……一瞬、思考が完全に停止した。

ありふれた名前だ。そんなはずは無い。


それでも……兄さんが単騎で王都まで駆けてきたこと、その名前、教会。

全てが繋がってしまいそうで混乱する。

「え、は?……え?」


あの女が、王都の教会に来た挙句、カレンの拉致を手引きして……刃物を向けた?暴言??


ガタン、と部屋の一番小さい本棚が揺れる音が、遠くで聞こえた気がした。

ああ、ゼフトの言う通り、カレンを抱き締めたままでよかった。

腕の中に愛しい存在がいなければ、本当に暴走していたかもしれない。


「……俺から言えることは以上だ」

「カレン、あの女に何言われた」

「そこまで詳細な会話内容は、俺のところに来ていない」

「シュレインを呼んで」

「リュート」

「あの女がカレンに手ぇ出したんだろ。僕が把握しなくてどうすんだ」


侯爵家に居た頃の日々を思い出す。

行儀見習いの癖に、養母に我儘を言い、僕のお茶係になったあの女。

「お疲れでしょう」とか「いつでもお話し聞きますからね」なんて言葉を暇さえあれば掛けてくる。

押し付けがましくて、苦手だった記憶しかない。


怒りのあまり、ギリ、と奥歯を噛み締めた時だった。

「……りゅーとさま……?」


カレンが目を覚ましたらしい。

視線を向けると、心配そうに僕を見ていた。

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