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瞼越しに、明るい陽の光を感じる。

寝返りを打つと、最近慣れてきた仮眠室の夏掛けの感触がする。


――あれ、いま、何時?


慌てて跳ね起きると、寝台に寝ていたのは私だけだった。

窓を見ると、カーテン越しに眩い陽の光が差している。

「ね、ねぼう……っ!」


泣きそうになりながらベッドから出たタイミングで、仮眠室の戸が開いた。

「おはよー!カレンちゃん!」

「レン!起きた!?」


セリナさんは朗らかな笑顔で挨拶してくれ、リーリが泣きそうな顔で駆け寄ってくる。

そのままリーリにぎゅうと抱き締められた。


「レンっ、く、詳しくは教えてもらえなかったけど、昨日、大変だったって……!」

「……心配してくれたの?ありがとう、リーリ」

私の肩に顔を埋めて泣き始めてしまったリーリを、そのまま抱き締め返す。

優しくて、可愛いリーリ。

笑顔の似合う友人に、どうにか笑って欲しくて必死に宥める。


リーリとくっついていたら、セリナさんも仮眠室に入ってくる。

「カレンちゃんは今日はお休みか、午前休だって〜。だから寝坊じゃないし、大丈夫だよ」

「あ、ありがとう、ございます……?」

休みって……昨日なんにも業務をしていないのに、今日も休むわけにはいかない。いろいろ整ったら、業務を始めよう。


でも、それよりも……。

「あの、リュート様は?」

戸越しに見えている執務机には、誰も座っていなかった。

部屋の主であるリュート様は、何処に行ってしまったのだろう?


セリナさんがニマリと笑う。

「リュート君は部長室だよ〜。でも、カレンちゃんは、これから私達とまず朝ごはんでーす!」



「……以上が、昨夜の王宮会議の内容だ。詳細はブノワが議事録まとめてくれてっから、そっち読んでくれ」


ゼフトがそう言って、応接用のソファに身を預けた。

仮眠はとったと言っているけれど、やはり疲れているのだろう。いつもより顔色が悪いし、ブノワさんも珍しく少し姿勢が崩れている。

ウェンが気遣わしげに、そんなゼフトとブノワさんにお茶を淹れた。


話の内容は大体分かった。

今後はカレンの外出に、近衛が一人付く事。それ以外、カレン本人の生活には特に変化は無い事。

ただ……。


「王太子に宰相って、随分大物が出てきたね」

「王都でここまでやられたらって感じだな。報告だけは小まめに上げておいて助かった。おかげで宰相閣下がほとんど庇ってくれたぞ」


今までの社交や他国からの接触、襲撃について、ゼフトや魔術院長、治安院長はきちんと報告を上げていた。

一歩間違えば外交問題に発展するそれについて、実は宰相閣下まで、きちんと報告が届いていたらしい。


どうして作戦行動まで許すことになったのか、何故王室や近衛に今まで共有がなかったのかなど経緯については、宰相閣下が説明してくれたそうだ。


ブノワさんがお茶のカップを置いて口を開く。

「言い方は悪いですが、ウチは研究部署です。襲撃予測は治安院や軍本部の仕事であって、技術部ではありません。閣下や各院長もそれは分かっているんでしょう」

「ウチはあくまで被害者ってことでお咎め無しだとよ。」


欠伸を噛み殺しながらいうゼフトを、ウェンが心配そうに見る。

「ゼフト。対外対応については、何か変わったんですか?」

「ん?あぁ、俺んとこにくるアレか?表面上は変わらず、外交官の真似事してろってさ。ったく、転職した覚えはないんだがな……」


ゼフトが苦笑する。

カレンの身柄引渡し要求などについて、他国の外交官からしたら、折衝や根回しなどで普段から動き回っているゼフトの方が、外交筋からの接触より魅力的に見えるのだろう。

直属の上司を抱え込める可能性があるというのも大きい。


「ただし、返答は宰相府指定文言に統一していいってよ。報告書は最短で読んでくれるし、今後は王太子殿下まで目を通してくれるとさ」

表の外交責任者は王太子殿下だからな、と伸びをしながら答えるゼフトに、ウェンがお茶のお代わりを用意する。

それを眺めていたゼフトだが、不意に僕の方を見て真剣な表情をした。


「……リュート。ここまで来たら多分、強硬派は抑えられる。多分な。宰相閣下と王太子殿下がこっちに注目してるんだ。下手なことはしてこない」

「わかった」

「カイルはまだ宮廷情報局の長が誰かは教えてくれねぇが……この機会に、長を突き止めてみせる。もうちょっと待ってろ」


宮廷情報局――強硬派の主団体。

書類上の局長が本当の長ではないなんて、公然の秘密だ。

しかし、では本当の長は誰なのか?それは国の上層部か上位諜報員しか知らないらしい。


ずっとずっと、結婚すると決めてから、ゼフトに探ってもらっているのに、まだ分からない。

それでも……知らなければならない。

僕が、カレンと安心して暮らすために、強硬派に対抗できる手段を徹底的に用意しなければならない。

「ありがとう、ゼフト」


礼を言いながら立ち上がり、部屋を見回す。

「カレンがそろそろ起きるかもしれないから、部屋、戻るね」

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