表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/159

41-3

しばらくの沈黙の後、小隊長様が佩剣から手を離したと思ったら……同級生の一人の鎖骨を掴み、身体を持ち上げ、勢いよく床に叩きつける。その拍子に、骨の折れる音がした。


「……被害者への侮辱、貴族女性への侮蔑罪、近衛内部規律重大違反に聴取公務執行妨害……」

淡々と罪状を呟きながら、残りの二人も同様に沈めていく。

小隊長様の外套に刺繍された王家の紋章が、それに合わせて動く。


鎖骨を折られ、身動きできず震えている同級生達を眺めながら、小隊長様は口を開く。

「近衛の品位を下げるなと、言ったはずだ」


私のそばで、シュウさんが「こっわ。あの人俺より強いのに、ガチギレさせんなよ」なんてことを呟いていた。



「ストックリー男爵夫人。誠に申し訳ございませんでした」


騎士の何人かで同級生三人を連行し、場の空気が落ち着いてきた頃、小隊長様と副長様が謝罪してくださる。

「あ、い、いえ、皆様のせいでは……」

「今夜の件、ゼフト……技術開発部長と連名で抗議させてもらう。そのつもりで」

私の言葉を遮るように、隣に立ったリュート様が仰る。

――そうだった、リュート様に黙るよう言われていたんだった。


口を閉ざして大人しくしていると、近衛のお二人は深々と頭を下げた。

「勿論です。我々の監督不行き届き、誠に申し訳ございません。我々からも上長に報告させていただきます。……もしお許しいただけるなら、後日謝罪の機会をいただけますでしょうか」


違うのに、私だからいけないのに。

彼等だって、私以外の貴族女性にはこんな馬鹿な真似、するはずないのに。

……どうしてこうなるんだろう。


視界を下げると、胸元に己の髪が見える。

お母様譲りだから銀髪と呼んでいたけれど……鉄にしか見えない、鈍色の髪。

私がこんな髪じゃなかったら、せめて瞳だけでも瑠璃色だったら、攻撃魔術が使えたら……。

全部、違ったのだろうか。誰にも迷惑をかけず、生きられたのだろうか。


「カレン」

声に慌てて顔を上げると、リュート様が心配そうに私を見ていた。

「カレン、どうする?キミが嫌なら謝罪は受けなくてもいいよ?」


後日謝罪の機会を設けるかについては、私が返事をしてよかったらしい。

慌ててしまい、考えがまとまらないまま近衛の皆さんに向かって口を開いてしまう。

「あ、えぇと、お手間でしょうし、あの、大丈夫です!どうせいつもの事というか、同窓生は皆あんな感じですから……」


――時が止まったかのように、部屋が一瞬で静かになった。


リュート様も近衛の方も、向こうでお話をしていたゼフト部長やブノワさん、カイル班長まで目を見開いて、こちらを見ている。

な、なんで……?


副長様が、恐る恐るといった風に話しかけてきた。

「……いつもの事、と仰いましたか……?皆……?」

「そ、そうです。本当にいつもの事なので、そこまで大ごとにする必要も無いかと……申し訳ございません、気を遣っていただいたのに」

そう伝えた途端、後ろから抱き寄せられる。


慌てて振り向くと、リュート様は目を閉じてじっと耐えるような顔をされていた。

「リュート様?」

「…………キミが謝る必要はどこにもない」

眉間に皺を寄せながら薄らと目を開いたリュート様の瞳は、再び柘榴色に輝き始めていた。


副長様がにっこりと、安心させるように微笑みかけてくださる。

「夫人、大丈夫です。彼らは近衛騎士としての戒律を乱したから罰せられているのです。夫人が気に病む必要はございません」


確かに、私以外の貴族女性にあれをやったら大問題だろう。私にもそれを当てはめてくださる、近衛の皆さんの優しさに心が温かくなった。


私も後ろ向きになっていないで、やれる事をやろうと気持ちを切り替える。

「温かいお言葉ありがとうございます。あ、それで結局聴取は……?」

「とんでもない!お疲れでしょう?後日でもよろしいのですよ?」

……それだと、近衛の方々は完全に無駄足なのでは?


そう思った時、シュウさんが副長様の肩を叩いてニッと笑いかける。

「じゃあ俺の制服でも見る?ヤバくね?これ」

「シュレイン、いまそれどころじゃ」

「もう!シュウさん駄目ですって!」

慌てて注意した私の様子に、驚いた副長様。

シュウさんは何故か、そんな副長様とリュート様に目配せをした。


私達の様子を見ていた小隊長様が、リュート様に声をかける。

「ストックリー卿。夫人は副長にお任せいただきまして……ほんの少々で結構です。お時間を頂けますでしょうか?」

リュート様は、しばらく私のことを抱きしめたまま見ていた。

心配をかけたくなくて、微笑みを浮かべる。

「リュート様、あの、私は大丈夫ですからっ!聴取、受けながらお待ちしております」


リュート様はそんな私を見て頷くと、ゆっくりと離れる。

「うん、いいよ。シュレイン、カレンのことよろしく。……ゼフトとカイルさん、ちょっと来て」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ