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幕間(3話の後 ウェンさん視点)

「ウェンさん!おはようございます」

「トベラ補佐官、ご相談したいことが……」


仮眠から目覚め、シャワーを浴びて技術部棟に戻ると、一歩歩くたびに話しかけられている気がする。

一刻も早くリュートのところに行きたいが、昨日は一日不在にしてしまった。

その間の担当班たちの苦労を思えば、声をかけられるのも仕方ない。


ゼフトは優秀な研究者だが、部長職として政治的な仕事が多く、現場に顔を出せる時間は少ない。

そのため担当班からの実務的な相談は、指導研究員でもない私のところに集まりやすい。


なんとか急ぎの相談だけ対応し、顧問室の扉を開くと銀髪の女性が事務机から顔を上げた。


「おはようございます、ウェンさん」

リュートの補佐官のサンビタリアさんだ。昨日は彼女にほとんどの仕事を押し付けてしまったが、頑張ってくれたらしい。

ゼフトからも、道すがら話しかけてきたリュートの担当班員からもそう聞いた。


「おはようございます、サンビタリアさん。リュートは?」

「夜中に一度起きました。あと、先ほども少し起きられまして……またお休みになりました」

その発言に驚いた。あの子は一度起きたら無理やりにでも仕事を再開すると思っていたのに、大人しくまた寝るなんて。


彼女の机の上には、急ぎの案件や確認事項についてのメモが並んでいる。

書かれている内容からして、リュートが一度起きたことは間違いないらしい。


「……ウェンさん?どうされました?」

サンビタリアさんが不思議そうな顔をして、こちらを見ている。

彼女は、あのリュートが無理せず仕事を任せる、ということの意味をあまり理解していないようだ。


――何故か、それが逆にとても嬉しかった。



その日の夜、深夜に近い時間に顧問室を再度訪れる。

扉を開くと、昨日まで寝込んでいたのが嘘のように仕事をしているリュートの姿があった。


「……また持ってきたの、ウェン」

リュートの視線は、私が持ってきた荷物に注がれている。


「あれだけ寝込んだ後に、丸薬だけで済まさないでください」

持ってきたのはスープだけだが、小食なこの子にはちょうどいいだろう。


実は普段から、週に一度程度、こんな風にリュートに食事を差し入れるようにしている。

彼の生活習慣を心配しているサンビタリアさんには申し訳ないが、事情を説明することが難しいのでまだ話せていない。


リュートは他人が用意した飲食物を食べたくないのではなく、体が緊張してしまい"食べられない"こと。

それでも「子どもの頃から食べてるから」と、なんとか私が作ったものだけは食べてくれていること。

お茶については特に症状が酷く、私やゼフトが淹れても飲めないでいること。


――いつか、彼女にも話せる日が来るだろうか。


「……ホント、僕の周りって世話焼きばっか」

呆れたように言う、彼の表情は柔らかい。

誰を思い浮かべているかなんて、聞かなくてもわかった。


補佐官を新設すると聞いたときは、どうなるかと思ったけれど。

……そろそろこの弟分の面倒も、卒業の兆しが見えてきたかもしれない。

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