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幕間(33話~35話 後日談)

「この度は誠に申し訳ありませんでした。顛末書および再発防止策を提出いたします」

カイル班長が普段とは全く異なる、丁寧な口調と神妙な表情で頭を下げ、書類を渡す。

合わせて隣にいる副班長のベスさんと、更に隣にいる背の高い青年……ウェンさんを担当していた護衛官が頭を下げた。


ゼフト部長とリュート様、ウェンさんがそれを受ける。

部長たちと違い、当のウェンさんはハラハラと心配そうに護衛官達を見ていた。


――ウェンさんが直接傷を負ったということは、事実上の任務失敗に等しい。

謝罪は避けて通れない。


とはいえ休日中、しかも目立ちたくないから最低限の護衛で済ませて欲しいと頼んだのは、ウェンさん自身だ。

部長もリュート様も、それは理解しているのだろう。

形式的に謝罪を受け取った後は、砕けた雰囲気になった。


「気にすんな、とは言ってやれねぇが……カイル達がよくやってくれてるのは、俺が一番わかってるからな。これからもよろしく頼む」

「本当にすまなかった。そう言ってもらえて助かる」


部長と班長がそんな話をしている隣で、リュート様がじっとウェンさんの担当護衛官を見る。

「ねぇ、もしかして……その人って前に中庭で、シュレインに血塗れにされてた人?」

「せいかーい」


リュート様の言葉に答えたのは、シュウさんだ。

シュウさんは謝罪に参加せず、室内警備を担当している。腕を組んで大きな溜息を吐いた。

「そいつ自己治癒特化型志望のくせに、自己治癒まじ遅ぇの。被弾してそのまま動けなくなるとかあり得ねぇ」


今のやりとりで、どうしてシュウさんが組手で血塗れにしてでも彼を攻撃し続けたのか分かった。

自己治癒特化型は、被弾しても即回復してとにかく動くのが役目だ。

そのために、組手でも基本的には容赦なく攻撃され、即回復か対応を迫られる。


見慣れない人だし、私と同い年くらいに見えるのでおそらく新人だろう。

青年は改めて勢いよく頭を下げた。

「すいません、シュウ先輩。ウェンさん、本当に申し訳ありませんでした!」

「俺からも謝らせてよ。こいつの教育担当、俺だからさ」


二人に謝られたウェンさんは、慌てたように手を振った。

「気にしないでください。今回の事は私が我儘を言ったことが原因ですから……」


大分空気が砕けてきたので、そっとベスさんに話しかける。

「あの、なんでシュウさんが自己治癒特化型志望の人を教育してるんですか?教官は?」

「あの人、この間近衛に引き抜かれちゃって……」

「ああぁ……」


以前いた自己治癒特化型の教官は、それはそれは厳しい方だったけど、非常に素晴らしい人だった。

近衛騎士団に引き抜かれたとしても、何の不思議もない。


「おかげで自己治癒特化型の教育ノウハウがいまちょっと途切れててね~」

「……取り返しがつかなくなる前に、堅牢型に転向してもらった方がいいのでは……」

「カレンちゃんもそう思う?」

自己治癒特化型志望という事は、彼は『盾』だ。

本当なら大半の『盾』同様、堅牢型――防護術式をメインとする運用をするべきだろう。


そんな内緒話をベスさんとしていたら、ウェンさんの声がちょうど会話の谷間に入ってくる。

「分かりました。じゃあシュウ、今度お昼奢ってください。それでチャラです」

「お前マジで良い奴過ぎんだろ。なんなら一週間奢るわ」

「……一週間奢ってもらえるなら夕食にしましょうか」

「うわ前言撤回したろ」


笑い合う二人を見て、本当に仲良くなったなぁなんて思っていたら、視界の端でリュート様の肩が揺れる。

「リュート様?どうされました?」

「いや、なんでも……」


そんな話をしていたら、ゼフト部長が呆れたような顔で音頭を取る。

「ほーらお前ら、いつまで駄弁ってんだ。解散ー」


春の陽気の中、技術部にようやく穏やかな雰囲気が戻ってきた。

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