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幕間(過去編 ウェンとリュート2)

(リュート15歳、ウェン24歳頃)


「また遊びに来ちゃった。いい?」

「気にしないでください、貴方は客員研究員でもあるんですから」


文導機の情報流出事件から一年。

リュートは客員研究員として、よく技術部に顔を出すようになった。


私自身はまだ研究所敷地から出れないでいる。

終わりのない迷路の中にいる気分だが、これが最善だとも理解している。

どうにかしようと奔走してくれているゼフトのためにも、大人しくしているしかない。


「これ、頼まれてた文導機の魔術式側の中核パーツ。これだけあれば足りる?」

リュートが大ぶりのトランクに入れて持ってきたのはキューブ型の水晶。その数、実に数十個。


「……まさか貴方、これ全部脳内構築からの記述ですか?」

「あれ、ダメだった?細かいブレはあると思うけど、設計思想や段取りは変えてないから使えると思うけど……」


駄目ではないが、既存の魔術理論の外にあるはずのそれを、何十回も脳内で構築して刻印するのは並の地力と体力、集中力では無理だ。


――15歳でこれか。

相変わらず、この子の才能には背筋が凍りそうになる。


「ありがとうございます。組み立てを進めますね」

「うん、よろしく」

もともと、自分達用と開発用に三台しかなかった文導機。

新たな魔術理論で動くそれは、当然のことながら熾烈な奪い合いの対象となった。


ゼフトと軍上層部、侯爵家で話し合った結果、文導機をあえて数十台量産することに決まった。

最小構成なうえにプロテクトをかけられたそれを外部に流すことで、情報の主導権を取り戻し、鎮火を狙う算段らしい。


リュートが私の隣に座って、卓の天板にべたりと伏せる。

「ねぇ、ウェン。お腹すいた」

「はいはい、食堂の厨房が借りられてよかったですよ。どうぞ」

そう言って用意していた食事を振る舞うと、リュートは目を輝かせて食べ始めた。


「ふふ、ウェンのご飯、おいしい」


思わず唇を噛む。

最近、リュートが招待された先では、ほぼ確実に薬品や術式が付与された飲食物しか出ないらしい。

そのせいか、育ち盛りのはずの彼は明らかに食が細くなり、身体が痩せてきていた。


「リュート」

「なに?」

「……細く、なりましたね」


「……背が伸びたからじゃない?いくら食べてもお腹空くんだ」

そう言って微笑む少年に、何もしてやれず閉じこめられているだけの自分が、恥ずかしくて仕方がなかった。


「じゃあ、どんどん遊びに来て、どんどん食べてください。たくさん作りますから」

「やった。ウェンのご飯、おいしいから嬉しい」

リュートの微笑みは、幼いころから変わらない。


ふと部屋の入り口に目をやると、ゼフトが悔恨の表情のまま、リュートを見ていることに気付いた。

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