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33-2

「班長経由で、班長以下全員に敷地内待機令出す。外棟がある範囲に出るのもナシ。内棟側の門閉めて。治安院と魔術院上層部への報告、公休者の安否確認はブノワさんに任せて大丈夫?」

「大丈夫です、お任せください」


ゼフト部長が棟内に居ない以上、今は顧問であるリュート様が現場責任者だ。

顧問室に来たブノワさんとリュート様が、淡々と打ち合わせをし手を進めていく。


「カレン、打ち合わせ終わったらすぐ全部の班回って口頭連絡。現時点では安全確保のための外出自粛程度でいい。一時間後に説明するから班長全員集まれってついでに言っておいて。ブノワさんは全班員向けの通知文作成、これも班長会議に間に合わせて」

「承知しました」


「今日の外出予定者は?」

リュート様の言葉にブノワさんが顔を上げ、私と目が合う。

午前中の打ち合わせで急遽決まったので、ブノワさんに申請はしたがリュート様に報告をあげていなかった。


「わ、私です。リュート様」

「……………………は?」

魔力で部屋の空気が揺れるが、なんとか口を開く。


「今日は社交じゃなくて、資料を受け取りに……」

「絶対に行かないで。指揮不足を疑われたらゼフトの影響力が下がる。ブノワさん、悪いけど警邏官に早馬で連絡届けるように頼める?治安院の人動かすの不味い?」

「いえ、普段から早馬対応はお願いしているので問題ないかと。詰所に連絡します、保安上の理由にしますか?」

「軍務上……だと嘘になるか。業務上の緊急対応でいいと思う?」

「よろしいかと」

「じゃあそれで」


こういう時のリュート様の意思決定は速い。他の事もどんどんと決まっていく。


そうしていると部屋がノックされ、ベスさんが入ってきた。

「ウェン・トベラ筆頭補佐官の所在が確認できました。頭部に怪我はありますが、意識があり自力歩行可能な状態です。街の警邏官および診療所、追加派遣の護衛官からの報告、全て内容一致しています」


ベスさんの言葉を聞いて安堵で膝から崩れ落ちそうになるが、なんとか堪えて大きく息を吐く。

ウェンさんが無事だった。怪我はしているけれど、無事だった。よかった……!!

リュート様も表情は厳しいままだが、雰囲気が明らかに柔らかくなる。


「調書および保安上の理由から、技術部棟内医務室に護送してよろしいですか?」

「うん。お願い……そうだ、ベスさん」

「なんでしょうか?」

「……ウェンを担当してた護衛官さん、大丈夫?さっきはそこまで気が回らなくてごめん」


リュート様の言葉に、ベスさんが目を瞬かせてから微笑む。

「……ありがとう。まだ安静にする必要はあるけど、命に別状はないわ。あとで正式に謝罪と顛末報告をさせてください」

「わかった。そっちはゼフトと一緒の時に受け取るよ……さて」


リュート様がチラリと時計を見る。

「……ウェンの所在確認が終わったとしても、技術部の外出自粛は取り下げない。報告とゼフトとの協議を経てから解除については判断する。ブノワさんに色々頼んじゃったけど、一時間で全部終わる?」

「大丈夫です」

「ありがとう。カレン、今すぐ全班回ってきて。今から一時間後に会議を始めるつもりで。ブノワさんはさっきお願いしたのよろしく。僕は進行準備と、以降の業務スケジュール組み直す」



班長達と、会議という名の情報共有と再度の外出自粛指示、外出不可に伴う不都合があるかの確認を終えた頃、ウェンさんが戻ってきた。

調書用に傷口を検めるため、まだ魔術的な治療は施されていない。ガーゼをあてられ包帯を巻かれた姿が痛々しい。


「……すみませんでした、ご心配おかけして」

少しだけフラつきの残るウェンさんは、辛いだろうに会議室に集まっている班長達に、そう声をかけに来てくれた。


会議が終わったのをいいことに、そのままウェンさんと一緒に医務室に向かう。

リュート様も「直接話を聞きたいから」と後ろからついてきていた。


「あ、そうだ。顧問さん、これ」

移動中、ウェンさんに付き添っていたシュウさんが、リュート様にそっと何かを手渡す。

ウェンさんの追跡魔導具だった。


「……良かった、ちゃんと動いてる。これなら探せる」

そう言うリュート様の目は、何処までも冷たかった。

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