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幕間(32話から数日後 ブノワ視点)

かちゃり、とそっと扉を開くと中には静寂があった。

窓からは茜色の光が差しており、夕刻を告げている。


「……やはりこうなりましたか」

部屋の会議机では、ウェンさんとストックリーさんが書類の山の中、眠っていた。

ウェンさんは椅子にもたれ、ストックリーさんは机に突っ伏している。


声をかけてから数日、それでも二人は連日のように小会議室で業務をしていた。

襲撃が落ち着いたことを受け、今まで出来ていなかった分を取り戻すかのようだった。


先日なんか、ストックリーさんはリュート様に内緒で深夜まで業務をしていたらしい。

――バレたらどれだけ恐ろしいことになるか、彼女が一番理解していないのが何より恐ろしい。


「やっぱり寝ちゃってた?」

そう話しかけてくるのは、ふんわりとした雰囲気の女性……渉外系補佐官のセリナさんだ。

毛布を持ってきたらしい彼女は、2人の肩にそれを掛け始める。


「ゼフト部長とリュート様は?」

「ここで集中してるって聞いてるから、特に探したりはしてないみたい」

「……教えるべきだと思いますか?」

「ん〜、本当はそうなんだろうけど……ウェンさん達が隠したいなら、まだいいんじゃない?」


チラリと2人を見る。

2人とも、文導機には打ちかけの文章。

手には内容確認中の申請書類がある。

どうせ最後は自分のところに来る書類だ。彼等の手からそっと抜き取る。


「やってあげるの?」

「というより、お二人が僕の負担軽減でやってくださってるので。腹を括ってやりますよ」

「1班から10班分全部?うわぁ大変……」

「セリナさんこそ、社交に駆り出されまくってるでしょう。帰れてます?」

「痛いとこつくなぁ、帰ってはいるよ。ただずーっと書類や資料とにらめっこしてるから、家って何だっけ?って感じだけど」

セリナさんがカラカラと笑う。


彼女の軽やかな雰囲気に釣られ、つい己の口も軽くなる。

「国家最先端研究所と言えば聞こえはいいですが……そこに所属する補佐官がたった4人で、他は部長も顧問も全員研究職って、冷静に考えて頭おかしいですね」

「あ、言っちゃったぁ……でも、困ったことにさ」

「はい?」

「この仕事も、仲間も、大好きだから頑張れちゃうんだよねぇ。困った困った」

セリナさんが、やはりカラカラと笑った。


「本当に……困りましたね」

気が付けば、やっぱり釣られた自分も笑みを浮かべていた。


「お前ら、こんな所に集まって何してんだ?」

声が聞こえて慌てて振り返ると、1班長が立っていた。

セリナさんと2人で、思わず「しぃっ」と人差し指を立てる。


「あ?…………あー、なるほど、な」

中で突っ伏して寝ている2人を見つけてしまったのだろう。

班長の声が小さくなり、ガリガリと頭をかいている。


「苦労かけちまってるなぁ……他の班には俺から声かけとくから、もう少し寝かせてやってくれ」

「ありがとうございます」


1班長は意外そうに目を丸くする。

「なんでお前らが礼言うんだよ……こっちこそありがとな。ウチの補佐官はみんな優秀で、本当に助かってる」


部長も顧問も班長も、いつもこうだ。

1班長は機密案件が増え、リュート様ほどでないにしろ外出に制限がかかり、今では警邏官の同行無しでは敷地外に出ることもできない。

それでなくても忙しくて寮に戻れてもいないはずなのに、我々を気遣ってくれる。


だから頑張ってしまうんだよな、とセリナさんと目を合わせ、微笑み合った。

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