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会議の後、ゼフトとカイルさんにより僕とカレン、ベスさんとシュレインが部長室に集められる。
部長室に入ると、ウェンが作業していた。
ウェンは会議中に緊急の相談や対応があった場合を想定し、部長室で業務をしていたのでシュレインを見て不思議そうな顔をしている。
「どーも、カレンの『矛』になったシュレインっす」
「ああ、今日からになったそうですね。よろしくお願いします」
そんな挨拶もそこそこに、今日の襲撃についての情報共有が始まる。
――酔っ払いが喧嘩をしていたらしい。
昼間から飲むやつも喧嘩するやつもいる。でも、この大通りで?とベスさんは内心警戒していたそうだ。
そうしたら、よろけた拍子を装って、瓶が馬車の車輪に振り下ろされた。
警戒して既に防護術式を張っていたので馬車は無傷だったが、酔っ払い達は直接謝罪したいと馬車の扉に手をかけた。
勿論、防護術式のおかげで連中は扉の取っ手にすら触れられなかったらしいが、業を煮やした一人が酔っ払ったフリで馬車にもたれ掛かり、防護術式の相殺を試みたらしい。
応援が来るまで待てないと判断したベスさんは、そのまま連中を振り切って馬車を走らせ、技術部棟まで戻ってきたというわけだ。
「あー、今日から俺着いて行けばよかった」
シュレインが面白くなさそうに呟くと、ベスさんも苦笑を浮かべる。
「『矛』のシュレインが一緒に居たら、本当にすぐ片付いたでしょうね」
「班長、やっぱ『盾』一人の運用はキツいってー」
「だからお前を配置したんだろうが」
「そりゃそうか。つぎ変な奴が来たら、俺が捕縛優先で動くからベスさんは応援呼んで『盾』に集中しててよ」
「そうするわ。ありがとうね」
軽快に話す護衛官達を見て、カレンは眉尻を下げて困ったように笑う。そっと手を繋ぐと、僕のことを見てふわりと頬を赤らめた。
――僕のせいで危険な目に遭っているはずなのに、カレンの瞳はいつも僕に「大好き」を伝えてくる。
それが嬉しい反面……心臓が引き裂かれそうに痛かった。
会話が惰性になりかけたところで、ゼフトが口を挟む。
「と、いうわけだ。今までは様子見だったが、今回は明らかにストックリー本人を確保しようとする動きがあったんで『襲撃』に格上げした。今後は襲撃を前提とした護衛体制をカイル達に依頼している」
ウェンがカレンにそっと近づき、囁くように話しかける。
「カレンさん、大丈夫ですか?疲れたでしょう、何が業務代わりましょうか?」
「い、いえ!大丈夫です!むしろお仕事してた方が気が紛れると言いますか……あ!あとで書類のまとめ方で相談してもいいですか?」
「わかりました、あとで話聞きますね」
微笑み合う補佐官二人を見ながら、カイルさんはシュレインに声をかける。
「シュレイン、お前、今日一日はストックリーに付け。棟内の動線も念のため把握しろ」
「うーっす。んじゃ夜は家まで送るわ」
そうか、今日は一日中シュレインがいるのか。と思った瞬間気がついた。社交があったのでカレンは今日、顧問室に泊まる約束だけど……。
チラリと見ると、カレンも気が付いたのか頬がみるみる赤くなる。恥ずかしくて言い出せないらしい、明らかに戸惑っていた。
――まあ、こういうのは僕から言ったほうが後々良いだろう。
「……シュレイン、でいいんだっけ?呼び方」
「お?おー、好きに呼んでよ。んで何?」
急に話しかけられて驚いたらしいシュレインがこちらを向き、焦ったカレンが繋いだ手をギュッと握ってくる。
「今日、カレンのこと家まで送らなくていいよ」
「……へ?」
まさか、と顔に書いてあるような顔をされたが、気にせず淡々と返す。
「今日は社交があったから。業務進めるために、泊まり込み」
「へー……りょーかい」
「……っ!」
シュレインが、手を繋いだ僕らを見ながら気のない返事をする。
隣でカレンが顔どころか耳や首まで真っ赤にして、小さく縮こまっていた。




