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孤児という理由で世界に否定された天才、世界の頂点を目指す  作者: 雷覇


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第25話:武力無効化

静まり返った執務室の中で、ガラスの破片が音を立てて床に散った。


レイモンドは壁に叩きつけたグラスの残骸を見下ろしながら、荒れた呼吸を整えようともせず、ただ怒りに任せて机を拳で叩き続けていた。


「クラリッサ……あのAIがここまでやるとはな……!」


口元を引きつらせ、狂気にも似た笑みを浮かべる。


「そしてカイ……!」


低く唸るような声。

喉奥から噛み殺すように名前を吐き捨てた。


「リアナを連れ出して……私の顔を潰しただけでは飽き足らず、あろうことか――このセントラルに土足で踏み込んだと?」


思考のなかに、かつての記憶がよぎる。

ただの孤児。力も地位も何もなかったはずの男。

自分が一瞥もしなかった相手。


だが今、その男の名が、組織全体を震わせる“脅威”となっている。


「許さない……絶対に、許さない……!」


壁面のディスプレイを手元の指示で起動させる。


「軍団コード:ハウンド――起動準備を。目標はエデン。即時殲滅を前提に作戦を構築しろ」


通信官の声が戸惑いを含んで返ってきた。


《ハウンドはセントラル戦略抑止力です。いかなる反撃も想定し――》


「言ったはずだ。殲滅だ」


レイモンドの目には、もう冷静な理性はなかった。

ただ、奪われた所有物への報復と、

かつて自分が切り捨てたカイを地に伏せさせるという欲望だけが、彼の行動を突き動かしていた。


「エデンなど……燃やせばいい。カイも、そして――裏切ったリアナもな」


レイモンドの顔に浮かぶのは、静かで不気味な狂気の笑み。

その瞬間、セントラルは人類管理体制において最も危険な戦力を動かす道を選んだ。


―――――

カイたちがエデンへ帰還した直後、リアナは静かに懐から小さな六角形の装置を取り出した。それは、ただの記録媒体ではなかった。


「これは……?」


カイが眉をひそめる。

リアナはうっすらと微笑んだ。


「中央コアの制御キー。セントラルの核へ干渉できる唯一の媒体よ」


「……まさか、監禁される前に?」


「ええ。最後まで気づかれなかったわ」


カイはその手をそっと受け取り、彼女の目をじっと見つめる。


「……ありがとう、リアナ」


言葉は少なかったが、その瞳に宿る誠実な想いが、リアナの胸を確かに打った。


クラリッサの中枢室。

制御キーを挿入すると、光が走り、空中に立体インターフェースが立ち上がる。


「アクセス認証確認。セントラル管理コード取得完了」


クラリッサが目を伏せ、静かに報告する。


「このコードにより、セントラル側が展開しようとしている兵器群およびその支援網を無力化できます。敵は数分後に全兵器起動を予定。ギリギリのタイミングです」


「よし!兵器を無効化する!!」


カイはインターフェースに手を伸ばし、リアナの想いを託された制御コードを入力する。


「命令:セントラル兵器群――全システム凍結、優先制御権をエデンに移行」


カウントが0に近づいた瞬間、赤い警告画面が一斉に書き換わった。


【警告:兵器群への指令が無効化されました】


【権限変更:制御権をエデンに変更】


セントラル中枢――


「なにっ……!? なぜ停止したッ!!?」


レイモンドの怒声が響き渡る。


「敵が……制御系に直接干渉を……っ、あり得ません! 中枢へのアクセスは不可能なはず――!」


「いや……ひとつだけ方法がある」


参謀の一人が呟いた。


「中央コアのキーを……外に持ち出されたとすれば……」


レイモンドの顔が引きつる。


「……リアナ……!」


拳を握り締め、机を殴りつける。


「またしても、あの女が――!」


だが時すでに遅く、セントラルの兵器網は全域で停止。

カイたちはついに、圧倒的武力に頼った支配構造を無効化することに成功したのだった。


セントラル広域放送網――

長らく支配階級に独占されてきたその電波に、今、新たな声が響いた。


「こちらはエデン代表、カイ。セントラルに告げる。今この瞬間、君たちの兵器システムはすべて無効化された」


画面には、カイの凛とした姿と共に、凍結された兵器群のステータスログが並ぶ。


「これまで人々を押さえつけ、管理するために使われていた機械の暴力は、もう動かない。君たちは今、裸の王だ」


一瞬、街は静まり返った。

だが次の瞬間、抑圧されていた怒りが火種に火をつけた。


「自由だ……!」


「奴らの武器が……止まったんだって!?」


「今なら、立ち向かえる!」


都市の至る所で、市民たちが武装警備隊の詰所に詰めかけ、拘束されていた仲間を解放し始める。地下水路、スラム区、居住区、そして上層区画すら次々と火の手が上がる。


かつて手を取り合うことすら許されなかった人々が、今は怒りと希望を共有し、立ち上がる。


一方、セントラル政庁区――


「どういうことだ!? 反乱が……都市全域に!?」


「警備隊、応答なし! ドローンも動きません!」


「嘘だろ……我々は無敵のはずだった……!」


レイモンドは、呆然と映像モニターを睨みつけていた。

街が、崩れる――秩序が、音を立てて瓦解していく。


(……カイ……お前が……)


怒りと恐怖が混ざり合う中、レイモンドはなおも口元を引き結び、声を絞り出す。


「……奴だけは……必ず潰す。私の手で、必ず……!」


彼の声はもはや、自らに言い聞かせる呪詛のようだった。


だがその背後では、もはや止めようのない変革の波が――

セントラルという巨大な支配構造を、根本から飲み込もうとしていた。

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