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孤児という理由で世界に否定された天才、世界の頂点を目指す  作者: 雷覇


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第19話:リアナの反撃

戦火の足音がエデンに迫る。

セントラルの動揺とともに発令された軍事封鎖命令。その矛先は、かつて「廃棄都市」と呼ばれた街エデンだった。


クラリッサは異常な通信傍受を解析し警報を発令。

迎撃準備が始まり、都市全体が緊張に包まれる中、カイは仲間たちを集めた。


「もう逃げる場所はない。だから……ここで、俺たちの場所を守る」


静かに、しかし確かな決意を込めたその言葉に、皆が頷いた。

最初に名乗りを上げたのは、かつての兵士ゲイルだった。


「俺はな、ずっと思ってたんだ。エデンを守るってことは、俺たちが生きてる証を守るってことだってな」


爆風が瓦礫を巻き上げる中、ゲイルは一人、前線に踏みとどまった。

迫る敵兵を前にブレードを構える。

「来るなら来いよ、セントラルの犬どもが……!」


斬撃が閃き、敵の前衛が倒れる。

背後から部下の声が飛ぶ。


「ゲイル! 一人で突っ込みすぎです!」

「黙ってろ! 俺が開ける道だ、後ろは任せた!」


その頃、情報制御室ではリアが緊迫の中で端末を操作していた。


「ゲイル、左フロントに狙撃手!狙われてる!」

《助かる! お前がいてくれてよかった!》


戦場を見つめるリアの瞳は決して逸らさない。

「私にも、できることがある。後方支援でも絶対にみんなを死なせない」


リアの手元のスクリーンに映るのは、もう一人の仲間――バルナ。

中央防衛区画で、無言の巨人が敵の装甲車両の前に立ちはだかる。


セントラル兵士が叫ぶ。

「何者だ!? 単独か!? 無視して進め――」


バルナの盾が地面を叩いた。轟音。衝撃波。敵兵が吹き飛ぶ。


「この道は、俺の仲間の子供たちが遊ぶ場所だ。お前たちに、通らせるわけにはいかない」


バルナは重装の一撃で敵の前進を阻む。エデンの空に火線が走る。だが、そこにあるのは恐怖ではない。希望だった。

カイは全戦力の指揮をとりながら、傍らに立つレイナの横顔を見る。


「お前も、戦うのか」

「うん。だって……ここでなら、私も誰かを守れる気がするから」


そして、通信越しに一人の少女が戦場を見つめていた。

リアナ。

彼女の瞳にも、かつて失ったはずの火が、わずかに灯り始めていた。


この都市はただの拠点ではない。

“奪われた者たち”が、自らの未来を取り戻す場所――


エデンは、いま戦場に変わる。

だがそれは、希望のための戦いだった。



エデンへの制圧作戦が進む中、セントラルの一室。

そこは上層部しか入れぬ、機密情報端末が集まる暗い制御室だった。


リアナはドレスの裾をそっと揺らしながら、誰にも気づかれぬようにその部屋に足を踏み入れる。かつて「レイモンドの所有物」と呼ばれた彼女の立場は、誰の目にも疑問を抱かせない仮面だった。

だが、その仮面の奥には、冷たく澄んだ決意があった。


「……こんなものが都市の心臓部とはね」


彼女は細く笑いながら、指先でセキュリティパネルをなぞる。かつてレイモンドの傍にいることで得た暗号と認証情報。それらを駆使し、彼女は機密ネットワークに接続した。指は震えない。迷いもなかった。


『システム異常:自動攻撃が目標を識別不能』


『エネルギー供給ラインに異常』


『戦闘アルゴリズム、誤作動の疑い。再起動が必要です』


リアナはスッと息を吸い込んだ。


「……やっと、私にもできることができた」


そのとき、扉の奥から誰かの気配が近づいた。

彼女はすぐに端末を閉じ、何食わぬ顔で資料棚を整えるふりをする。ゆっくりと扉が開かれ、レイモンドの側近が通りすぎていく。

冷や汗は流れなかった。

今、彼女の中にはただ一つ。希望の都市エデンを守るという意志だけが燃えていた。


数分後、エデンでは突如として敵の砲台が目標を見失った。

クラリッサの目がわずかに見開かれる。


迎撃システムの異常は、敵の編成を狂わせ、突撃部隊の動きを鈍らせていた。クラリッサが分析を終え、カイの前にホログラムを展開する。


「セントラル側の迎撃アルゴリズムに複数の異常。起動順に食い違いがあり、発射命令が誤認識で中断されています」


「……それって、誰かが内部から干渉したってことか?」


クラリッサはわずかに頷いた。


「この都市において、ここまで正確にセントラルの軍用プログラムへ侵入し、改竄できるのは内部関係者のみ。現在、アクセス元の特定は不能」


カイはホログラムを見つめ、息をついた。


「……内部の協力者か。誰かが、こっちの味方をした……?」


彼の脳裏に浮かぶ名前は、ひとつだけあった。しかし、その人物がそこまでのことをするとは思えなかった。いや、思いたくなかった。


「正体不明でも構わない。……ありがとう、名もなき同志」


彼は静かにそう呟いた。

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