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孤児という理由で世界に否定された天才、世界の頂点を目指す  作者: 雷覇


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第18話:エデン殲滅に向けて

セントラル中央統制室――


緊急召集された会議室の空気は、張り詰めた冷気に満ちていた。

大理石のテーブルを囲む高官たちの顔に、焦りと怒りが浮かんでいる。


「……確認されたのか?」


「はい。セントラルの情報が外部ネットワークに流出。送信先は――エデンです」


一瞬、空気が止まる。


「どうしてそんな都市がまだ機能している……!」

「廃棄されたはずだろ! 規定通りならエネルギー供給も絶っているはず……!」


その言葉に、別の幹部が苛立ちを隠さず机を叩く。


「残存していた旧都市コアを起動させた者がいる。名は――カイ」


会議室がざわつく。


「また奴か……!」

「試験で除外したはずだ。なぜ今さら……!」

「だから言ったのだ。放逐ではなく、抹消すべきだったと」


通信スクリーンが明滅し、最上層管理者――レイモンドの姿が映し出される。

彼の表情は平静を装っていたが、その奥には確かな怒りが宿っていた。


「……全データを開示したのか?」


「はい。構造マップ、人口選別記録、階級コードまでも……すべてです」


レイモンドは目を細めると、冷ややかに告げた。


「ならば――やるべきことはひとつだ」


彼が指を一本立てる。


「エデン封鎖作戦――発動せよ」


「封鎖だけで済むと思っているのか?」と一人が口を挟むが、レイモンドはそれを制すように首を振る。


「封鎖は始まりにすぎない。

この情報感染は拡大する。手遅れになる前に、根を焼き払うしかない」


「つまり――」


「武装弾圧だ。必要とあれば、実行部隊を投入する」


「報道対策は?」


「旧都市でのテロ発生として処理する。

真実を求める者など、そもそも“階層の上”にはいない」


一同は沈黙した。誰もが理解していた。

これはただの情報漏洩ではない。

セントラルの構造そのものが揺らぎ始めているのだ。


「……命令を。最高指導者として」


レイモンドは、冷徹に宣言した。


「エデンを、瓦礫に戻せ」


クラリッサのホログラムが、中央タワーの戦略室に浮かび上がった。


「警告。セントラルよりエデン周辺空域および地表に対し軍事用輸送体の接近が確認されました。総数、約24機。搭載人数、最低でも300」


その場にいた面々の空気が変わった。


「とうとう来たか……」

カイは、静かに息を吐きながら呟いた。


「クラリッサ、彼らの目的は?」


「盗聴した通信から推察するに、エデンの占拠・制圧が目的と推定されます。標準武装のほか、鎮圧用ガスおよび電子妨害装置の搭載が確認されました」


「つまり、最初から話す気はないってわけだな」


カイは視線を上げ、各セクターの代表に向き直る。


「ここから先は――防衛戦になる」


「だが、我々には……兵はいても、武器は限られている」


「その通りだ。しかし、俺たちにはこの街を守る意思がある。

そして、クラリッサという最強の頭脳もな」

クラリッサのホログラムが軽く会釈する。


「既に都市構造物の一部を防御モードへ移行可能です。

さらに過去の廃棄プロジェクトより再利用可能な機兵を20体起動済み」


「旧式で十分だ。戦える」


指令室に続々と集まる面々の中で、重たい足音が響いた。


「ようやくその気になったか、カイ」


ゲイルが壁に背を預け、腕を組んだまま低く笑う。


「俺はな、ずっと思ってたんだ。

エデンを守るってことは、俺たちが生きてる証を守るってことだってな」


彼は、かつて兵士だった男。

だが、セントラルでは使い捨てとして処分対象にされた過去を持つ。


「もう誰にも、仲間を捨てさせねぇよ。

剣も銃も持ち方は忘れちゃいねぇ。……その日が来るのを待ってたんだ」


次に立ち上がったのは、リアだった。

瞳に揺れるのは、迷いではなく――静かな火。


「私、怖がってばかりだった。でも、もう分かったの。

ここで逃げたら、今度こそ何も変わらないまま終わるって」


彼女は通信と情報解析を担うが、同時に精神的な支柱でもあった。


「私にも、できることがある。絶対にみんなを死なせない」


そして、バルナが無言で立ち上がる。

黒いマントの下、重厚な戦装備をゆっくりと身に着けながら言う。


「私は戦士だ。死ぬのも、生きるのも選べる立場にない。

だが――誰かが守ると決めた場所なら、その盾にはなれる」


その瞳には、炎のような決意が宿っていた。

カイは皆を見つめ、静かに頷く。


「ありがとう。……お前たちがいるなら、俺は戦える」


重く、だが確かな絆がその場に生まれた。


都市は迎撃態勢に入り、空にはすでに警戒ドローンが飛び交っている。

戦いは避けられない。だが、彼らの意志は、もう揺らがない。

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