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第三話 参加契約をする

 別の空間に【瞬間移動】させられたトーマは尻もちを搗く。

 ずっと座っていたため椅子を抜かれると転げてしまう。

 それはどうしようもないのだが、正直惨めにも思える。


「ごめんね~。人は移動できるんだけど、マーキングしていないものは運べないんだ。そうそう!【シャドロン】のルールと規約説明だったね!」


「あの、誰も【シャドロン】なんて略してないですよ?」


「カタいこと言わないの。なんならキミが広めてよ?【シャドロン】」


 ケタケタと笑っているゲームマスターと非常に嫌そうな顔をするトーマの二人きりの空間は異様なものだった。

 咳ばらいをし、本題へと入っていく。


「その端末を見ながら聞き給え。まずキミは【シャドロン】に選ばれた。これは拒否することもできるけど、次回から二度と選ばれることはない。要は参加の意思無しって思われるからね。一応やってくれそうな人を絞っているんだよ?参考に、二割くらいは不参加の人はいる」


 この世界では有名なバラエティ番組としてサブスク放送しているゲーム:【シャドウズ・オブ・ロンギング】への出演は憧れの的である。

 それにもかかわらず不参加を表明する人が二割いることにトーマは驚く。

 総合成績がトップならば【なんでも願いを叶えられる】条件があるからだ。

 途中、脱落者が現れることもあるが、それはゲームの進行や演出として仕方がない。

 疑問に思っていると、ゲームマスターは話を続ける。


「一応知っていると思うけど、最終的に勝てば『好きな願い』を【なんでも叶える】よ!大富豪や大統領にだってできる!それからどうするかは君たち次第だが……。ただし、【シャドロン】は一つだけ注意してほしいことがある」


 トーマは何人かテレビで【シャドウズ・オブ・ロンギング】の勝者のインタビューを見ていたが、どれも最後は新しい大会の始まりとともに注目は薄れていっていた。

 そしてゲームマスターの忠告を聞くために顔をあげる。


「このゲームは死ぬ可能性がある……ということだけ覚えていてほしい。まあ、リスクとリターンだね。ゲーム内容によっては大変危険なものだってある。一応我々のほうで配慮はしているんだけど、どうしても起こってしまうもんなんだ」


「まぁ、仕事をしていても死の危険だってあるし、当然じゃないのかな?」


「おや?キミ、やけに理解が早いんだね。本当に高校生?」


「……父親が、建設現場の事故で死んだから」


 ゲームマスターはトーマのカミングアウトに驚き、フードの上から後頭部を掻く。


「そ、それはすまないね……。でも大丈夫!お父さんを蘇らせることだって可能だよ!」


 ゲームマスターのその言葉にトーマは思わず吹き出す。


「無理でしょ!さすがに【なんでも願いを叶える】って言っても、死んで五年経っているんだ。いくら何でもありえないさ」

 

「実績ならあるよ?死んだ恋人を生き返らせてほしいって願いだったけど」


「その後はどうなったんだ……?」


「さあ?基本的に二度目の参加希望は例がないからね……。追跡調査はしないよ?個人情報を守る意味でもね」


 参加するときには個人情報を調べ上げるくせにと思いはしたが、トーマの中では不参加の意思はなかった。

 それは、【シャドウズ・オブ・ロンギング】に参加すると、プライベートの生活を保障される。

 いじめを受けなくなるということだった。

 いくらハヤトが同じ参加者でも、それを侵害することができない。

 それだけでも十分な価値を見出していた。

 トーマは端末の画面にサインをし、ゲームマスターに渡そうとしたが止められた。

 相変わらず表情は全然見えないのだが、なんだか喜んでいるような気がした。

 そして、うんうんと頷き人差し指を立てる。


「これでキミは【シャドロン】に参加決定だ!それじゃあ、キミのアバターを作っていくよ!【なんでも好きな姿になれる】から試してみなよ!端末で出来るからね」


「なんでも?」


「【なんでも】」


 トーマは頭の中でモヤっとイメージを沸かせると、エディット画面にそれが映し出される。

 すごい技術だと感心しながら、詳細を調整していく。

 ゲームが得意なトーマにとってはキャラクタークリエイトは朝飯前だ。

 しかも、【なんでも好きな姿になれる】ときた。

 微調整を繰り返していき、「ふぅ」と息を吐く。

 画面を覗きに来たゲームマスターは微妙な反応だった。


「えぇ……キミ、こんな格好で良いの?せっかくイケメンにも、おじさんにも、性転換して女の子やアイドルにだってなれるし、ほら、ここにボイスチェンジだってあるから声も変えられるよ?」


「いいんだ。オレのずっと憧れていた姿だったから。これにするんだ」


「憧れ……ねぇ。キミがそう思うのならば、それでいいのかもしれないね。もう二度と変えられないよ?本当にいいね!?」


「しつこいなぁ。いいんだよ。人とは違う、それが中二病ってもんだ!」


 そう言って完了ボタンを押すと『データ転送完了』と表示がされ、端末を返す。

 サインした時より少しテンションが下がったことが気になったが、トーマは気にしない。

 ゲームマスターはどこからともなく袋を取り出し、それを渡す。

 中にはガントレットのようなものとヘッドギアのようなものが入っていた。


「これがデバイスね。両手と頭に着けて『トランス、オン!』といえば、さっき作ったアバターになれるよ!まぁ楽しみは本番に取っておくんだよ?それじゃあ、これで終わり!バイバイ!!」


 ゲームマスターが手をパンッと叩くと教室へと瞬間移動させられていた。

 いつの間にかマーキングをされていたのだろうか、デバイスも一緒に送られた。

 目の前には黒ずくめの男と教師の男に囲まれており、ぎょっとする。


「一瞬消えた思うたらお前だけ帰ってきちょるわ!」


「ゲームマスター様はどちらへ……?」


「ば、バイバイっていわれてオレだけこっちに……」


 黒ずくめの男たちは焦った様子で教室から出ていった。

 静けさに包まれた教室でハヤトが立ち上がった。


「トーマ……!どんな汚い手を使ったんだよ……!」


 ハヤトの顔が憎しみにあふれており、トーマは目を合わすことができずにいた。

 ハヤトの拳がトーマの顔面に向けて振り回された瞬間、トーマとハヤトは【飛ばされた】のだった。

いつもありがとうございます!

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ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。

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