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第二話 夢だった?

 ――ガガガッ!!


 鈍い音が響き渡り、トーマは目を開けると、透明な壁によって攻撃を免れていた。

 そして、学校の昇降場からフードを被った、いかにも怪しい格好をした人?のようなものが現れた。


「げ、ゲームマスター!?」


「なぜ止めるんですか!?あの人はハヤマさんのデバイスを勝手に使っているのですよ!」


「早めに記憶操作するべきかと思うのだが?」


 三人がそれぞれゲームマスターと呼ばれるものに意見する。

 後頭部を搔きながら意見に対して答える。


『すまないね。本来デバイスは他の人間には使えないようにプロテクトがかけられているんだ。それを突破できる人間が現れたということは何か事情があるはずだよ。さて、ギャラリーが多いからね【飛ばす】よ』


 ゲームマスターが手をパンッと叩くと、瞬時に場所が変わった。

 トーマの元に近づき、顔を覗き、体を嘗め回すように見る。

 明らか男性の声のするゲームマスターにじろじろと見られて嫌な顔をするが、当の本人はまったく気にしていない。


『ふうん。デバイスが馴染んでいるね。今までにない現象だ。でも一旦返してもらうよ』


 ゲームマスターは一瞬のうちにトーマからデバイスを取り上げられた。

 不思議そう?にデバイスを見つめながらトーマのほうへ振り向く。


『また、正式に君の所へ向かうよ。まあ、【覚えていない】だろうけどね』


 そう告げた瞬間、トーマの意識は刈り取られ、視界が暗転した。


 §


「トーマ起きなさい!」


「うーん……もうちょっと……」


「あんたゲームばかりして何を言っているの!!早く準備して学校へ行きなさい!」


 母親に布団をはがされ、無理やり起こされる。

 寝ぼけ眼をこすりながら、歯磨きをし、カバンを背負って家を出る。

 通学路を眠たそうにあくびをしながら歩いていく。

 すると、トーマは地面にダイブする。

 明確には背後から蹴られて、転がったのだ。


「トォマくぅん!毎日眠そうだなァ!」


「朝から良いザマだ!」


「オタクは帰ってテレビの画面でシコシコ絵でも愛でてな!」


 トーマを蹴り飛ばしたのはハヤト。

 取り巻きの二人は名前を知らなかった。


「朝からテンション高いな……てて……」


 トーマの言葉にイラついたのかハヤトはトーマの髪の毛を引っ張り、無理やり立たせる。

 

「アァッ?なんか文句でもあんのか?勉強しか取り柄のないオタクが!この俺、ハヤト様は今回の【シャドウズ・オブ・ロンギング】の参加者に選ばれたんだ!優勝したあかつきにはお前を一生奴隷にしてやるからな!アハハハハハハハハッ!!!」

 

 そう高らかに笑いながらトーマの元から離れていった。

 埃をパンパンと叩き落とし、再び歩いて学校へと向かっていく。

 通学路にはハヤトと取り巻き以外はいない。

 すでに時刻は九時を回っており遅刻である。


「わざわざそんな自慢をするために遅刻すんのかよ……」


 トーマはそう呟きながら通学路をとぼとぼ歩くのだった。


 §


「くぉらっトーマ!誰がのんきに遅刻をしちょる!……お前はあと一回遅刻しちょったら、留年じゃ言うとるじゃろう!!話を聞いちょるんか!!」


「へぇい、聞いてますよ……」


 そんな返事をしていると担任の教師に教科書の背表紙で叩かれる。

 国語の時間であり、それなりに分厚い教科書のためダメージが大きかった。


「痛ってぇ!体罰じゃんか!」


「こんぐれぇで体罰なぞぬかすんじゃあないわ!お前がキチッとしちょればええんじゃ!反省せぇ!」


「じゃあ、ハヤトと仲良し二人は怒ったのかよ!」


「ハヤトは特例じゃい。デザ何とかに選ばれたんじゃ。学校も手出しできんわ」


 トーマは再びその名称を聞いて悪態をつきながら自席へと座る。

 二階の窓際の席で授業そっちのけて校庭を見る。

 ちょうど他クラスで体育の時間であり、ソフトボールをしていた。


(一死一・三塁か……スクイズ警戒だな……。野球なら盗塁も警戒しないとな)


「のんきにソフトでもみちょるんか?」


「そうで――あ」


 そこには鬼の形相の担任の教師が立っていた。

 さすがにまずいと思ったトーマは再び教科書攻撃に備えた。

 しかし、教室の扉が突如開き、視線はそちらへと向かう。

 そこには怪しげなフードを被った謎の人物が立っており、脇には黒ずくめの男が三人立っていた。


「失礼するよ?」


「ゲームマスター!」


 ハヤトは嬉しそうにゲームマスターの所へ飛び出すが、黒ずくめの男に阻まれる。

 謎の人物はハヤトに手を振る。

 

「やぁハヤト君。元気そうで何よりだ。でも、今日は君に用がある訳じゃないんだ。先生?このクラスにトーマという人物がいると聞いたのだが?」


「あ……はぁ……?こちらの生徒がトーマですが……」


「そうかそうか!君に出会えてよかったよ!今日はこれを渡しに来たんだ。ついでにサインしてくれるかな?」


 瞬間移動のごとくトーマの側に立つと、端末を取り出す。

 その画面には【シャドウズ・オブ・ロンギング】のロゴマークとくるくるしたフォントの金文字で招待状と書かれていた。


「これ……なんすか?」


「またまた〜。いつもゲームばかりで退屈してたでしょ?それは招待状だから、サインしてよ?」


「……利用規約は?」


「おっと!私としたことが!先生?トーマ君連れて行くから今日は特別欠席にしてね!ハヤトくん。キミの活躍にも期待してるからね!んじゃ」


 手をパンッと叩き、トーマと共に姿を消す。

 ハヤテは期待されていることに感動していたが、同時に嫌悪感も抱いていたのだった。

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