◆47「待ってくれ。その前に。俺にも助けたい奴がいるんだ」
こいつ、やりやがった。
ちゃっかり〈生まれ直し〉てやがる。
「どうしてお前。〈生まれ直し〉は嫌だったんじゃ」
「いやー、まあ、エリオットさんのお陰で安全確認はできましたからねぇ」
「でも、あんだけリスク取るのを嫌がってたのに……」
いくら〈生まれ直し〉でステータスを盛ったとしても、戦うとなれば命懸けだ。
召喚された先の、見知らぬ世界のために命を張るなんて真似を、あの消極的で、事なかれ主義のイシダが?
「みなまで言わせないでください。それもエリオットさんのお陰……、いや、これはエリオットさんのせいでって言うべきなんでしょうか」
照れ臭そうに、タハハと笑いながら頭をかくイシダ。
「俺の……? 俺を、助けに来たのか?」
「はい。王城前の広場でエリオットさんらしき人が魔王に連れ去られたという噂話を聞きまして」
「そういう話じゃねーよ。魔族が王都に攻めて来たときにも何もしなかったお前が、なんで俺一人のために」
「いやはや。かないませんね。さすがに全部言葉にしちゃうのは無粋が過ぎると思うんですが」
そのとき、俺の横でうずくまっていたライオネルが低い姿勢のまま、四つ足を駆るようにしてイシダに襲いかかった。
横なぎで右腕を振るい、イシダの腸を掻き切らんとする──その爪が突如現れた青白い光を放つ障壁によって弾かれた。
「グゥッ……!」
「貴方も無粋ですね。ああ、まあこれは敵地でのんびり話し込んでた私たちが悪いのかもしれませんが」
ライオネルの奇襲にも、何ら怯む様子のないイシダ。
今のは機敏に反応して弾いたというよりも、最初から自動で防御する魔法の技だったらしい。
イシダは腕を押さえうずくまるライオネルの脇をツカツカと通り抜け、俺に手を差し出した。
「さあ、急ぎましょう。どうやら魔王がこちらに引き返して来るようです」
【魔力99】のイシダと【魔力89】のロキ。
遠く離れていても今の二人は互いの存在をはっきりと認識できているはずだった。
今の俺には無理な芸当だが、過去に自分の【魔力】を上げたときの経験からその感覚は分かる。
イシダがそう言うのだからロキが戻ってくるというのは確かなのだろう。
「さあ、お早く。私の目的は魔族や魔王の討伐なんかではなく、エリオットさんを救助することなんですから」
俺はイシダのその手を取りかけ、しかし逡巡する。
「待ってくれ。その前に。俺にも助けたい奴がいるんだ」




