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それは幸せな味がした。

作者: みひゃ
掲載日:2023/03/14


「え?いや、ま、ちょっと!ちょっと、まって!」


キスをしようとしたのに、君が口元を手で覆ってしまった。

それにすこしむくれながらも、その真っ赤な顔に

つい頬が緩んでしまう。


「ふふっ、顔、真っ赤だね。」


「い、言わないでよぉ…」


慌てた君が真っ赤な顔を隠すから、もっとイジワルしたくなる。


「幸くんのそういうところが好きだよ。」

ね、もうキスしていい?


君の手を取り、顔から退けながら

君と目を合わせる。

返答なんて待たないで

ただ、君にキスをした。

君は慌てていたのが、ピタリと固まって静かに目を閉じる。


ああ、この時間が続けばいいのに。







僕、鈴宮幸が

彼女に出会ったのは、

数年前のとても暑い夏の日のことだった。


中学校からの帰りに小川へ寄り道した僕はそこに見慣れない女の子が浮いているのが見えた。

綺麗な黒髪に真っ白な肌、とても綺麗な女の子が小川に浮いている。


浮いている?


「し、しんでる?!」


あわてて駆け寄ろうとしたら、そこで彼女が目を開けてこっちを見た。


パチッ


と目が合う。



その瞬間まるで時が止まったように感じた。

ぶわっと体温が上がって、顔が熱い。 

てんし、てんしさまがいる。


すると彼女は僕を見てニコリと笑った。  


「こんにちは、今日は暑いね。」


「あ、う、えっと………。」


彼女は声まで綺麗だったけど、僕は彼女に話しかけてもらえたことに動揺してうまく言葉を返すことができずに逃げてしまった。


また別の日、暑いから、てんしさまを見に行くわけではないからと自分に言い訳しながらその小川へ行った。

そこで彼女が小川のそばに座って目を閉じて寝ているのを見つけた。


今度は僕から声をかけるんだと意気込んで、ゆっくり彼女の元へ行く。

あと少し、あと少し、やっと彼女の横へ行こうとした時


「ふふっ」


と笑い声がした。


それに僕は驚いて


「わあ?!」


と飛び上がって転けてしまった。


するともう目を覚ましていた彼女(寝ていたんじゃなかったことに後で気がついた。)が

僕の目の前に来て


「ビックリさせてごめんね、私に気づかれないようにゆっくり来るのが面白くって。」


とまたおかしそうに笑った。

僕は彼女が綺麗に笑うから、それに見惚れていたけれど、はっとして彼女にこう言った。


「こ、こんにちは!今日は暑いね!」


彼女はきょとんとしてまた笑った。


それから僕と彼女は自己紹介をした。

僕たちは同い年で彼女は咲木麗那という名前だと知った。てんしさまじゃ無かったのは残念だけど、"咲木麗那"名前まで綺麗だなと僕は思った。

彼女は僕の名前の漢字を聞いてきて、幸だと答えるととても素敵な名前だねと褒めてくれた。


彼女、麗那ちゃんとはそれから何度か小川で会って話をする仲になった。

でも何日に小川でという約束はせず、会えたら嬉しいね、というような感じなので、会えるのは夏が一番多くて他の季節にはあまり会えなかった。(僕は毎日そこに通ったけれども)


そんな関係を続けて2年が経つ頃、もうすぐ高校生だねという話になった時、

麗那ちゃんに聞いてみることにした。

どこの高校に行くの?と

すると麗那ちゃんは〇〇高校に行くと笑顔で教えてくれた。

それに僕は飛び上がって喜びそうになった。

そこに僕も行く予定だったから!

麗那ちゃんと学校でもお話できるなんて!

それがとても嬉しくてその日は眠れなかった。


「というのが僕と麗那ちゃんの出会いです。」


話をそう締めくくると高校からのお友達、守谷紬くんはふぅん、へぇ、とニヤニヤ笑っている。

「てんしさまかー、いや〜幸くんは可愛いねぇ。」


「もー紬くん!笑わないで〜」


紬くんが麗那ちゃんとの出会いを聞いてきたから答えたのに〜。

とすこししょぼくれていると


さっきよりもニッコリとした紬くんが言った。

「それで付き合って今に至るか〜。いいね〜青春だ!でも咲木さんから告白するのは意外だね。」

「ぼ、僕もびっくりした!」

そう、僕と麗那ちゃんは高校に入ってすぐの時から付き合っているのだ。

それも麗那ちゃんから告白された。


「好きだよ。幸くんが良ければ、私と付き合って欲しいな。…だめ?」

「ひぇ…。」


あの時もうまく返事出来なかったけど、麗那ちゃんと付き合えて良かった。

だって麗那ちゃんは優しいし、僕がうまく返事が出来なくても笑って許してくれるし、勉強だって教えてくれる、それにか、可愛いし…。








あれ?







これって付き合ってるって言えるの?

まって、手って繋いだことあったっけ?

それに、キ,キスだってしたことないし、





あれ…?






「ーい、おーい!戻ってこーい!お、戻ってきた。大丈夫〜?すごい顔になってたけど?」


「つ、紬くーん!!!!」


「うん?」

 

かくかくしかじか、丁寧に紬くんに説明する。


「ふむふむ、特に不満があるわけでもないし、幸せだけど、付き合ってるっていえるか分からないって訳ね!じゃあ幸くんから手繋いでキスすれば完璧じゃーん!」


!?


ちょ、ちょっと待って?紬くんはなんて言った?

僕から手を繋いで、き、キスしろって?


「む、無理だよ、それに麗那ちゃんは嫌かもしれないし」


「いやいや、だって嫌な男に告白するぅ?そういうこともしたいから付き合うんでしょ〜?

だーかーらーほら!いいから行っておいで〜」


そうやって僕は廊下に出された。

そういえば、麗那ちゃんもうすぐ部活で絵のコンクールがあるから屋上で絵描いてるんだよね。

うーん、紬くんに背中押されちゃったし、でも邪魔にならないかな?

え、えっと、どうしよう。


そうこうしているうちに屋上への入り口までたどり着いてしまった。


いや、別にしなくても、会いにきただけって言えばいいし、だ、大丈夫だよね?

でもしてみたいといえばしてみたい…。僕だって麗那ちゃんのこと好きだし。

うーん、でもいきなり言い出したらヤバいやつみたいにならないかな?

いや、でも、うーん、


悩んでいると扉が開いて


「幸くん?どうしたの。」


麗那ちゃんが出てきてくれた。


「あ、えっと、その、」


「屋上、入る?」


「あ…うん。」




麗那ちゃんに屋上へ入れてもらったはいいものの、何も会話は無く、ただひたすらに麗那ちゃんが描いているのを横で見ているという謎の空間が出来上がってしまった。


ど、どうしよう?


僕が焦っていると


「ふふっ、幸くん、何かあったでしょ?」


麗那ちゃんが笑って首を傾げて僕に聞く。


「え?!」


「教えてくれないの?彼女なのに。…だめ?」


すごい、麗那ちゃんはなんでもわかってしまう。

それにそんな言い方されたらだめなんて言えない…

なら…じゃあと、僕は口を開いた。



「え?ふふ、キスがしたいの?」


「えっ、としたいわけじゃなくて、その、恋人らしいことをしてないなって思いまして…。」


「なんで、敬語?」


「あのえっと、緊張してて…。」


「ふふっ、でもなーんだ。したいわけじゃないんだ。私はしたかったのに。」


「は、え、」


多分僕は耳まで真っ赤だろう。

心臓がバクバクと鳴ってうるさい。

麗那ちゃんはイジワルだ。

それを聞いて僕がこう言うだろうと考えて

そう言うことを言う。


「やっぱり、し、したいです…。」


そう言えば麗那ちゃんは僕に近づいてきて

それから口元に顔を寄せて…


?!


「え?いや、ま、ちょっと!ちょっと、まって!」


彼女がいきなりキスをしようとするから恥ずかしくなって口元を手で覆った。

それに頬を膨らませた彼女は次に僕の真っ赤な顔を見てニコリとした。


「ふふっ、顔、真っ赤だね。」


「い、言わないでよぉ…」


慌てて手で顔を隠すとまた彼女が笑う。


「幸くんのそういうところが好きだよ。」

ね、もうキスしていい?


僕の手を取り、

顔から退けながら彼女は言った。

彼女と目が合わさる。

僕の返答なんて待たないで

ただ、彼女は僕にキスをした。

僕は慌てていたけれども彼女からのキスにピタリと固まって静かに目を閉じた。


ああ、この時間が続けばいいのに。

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