白と黒の戯れ
出逢いは一度。
別れは無数。
ではこの「生」は?
「……わたしにそれを問うのか」
「答えられませんか?」
「愚問だと言っている」
何もこのわたしでなくともよかろうに。ついに頭の方までいかれたかと思った。こいつがいなくなるのはせいせいするが、なにぶん困る。これ以上こいつのせいで面倒事が増えるのはごめんだ。
大体何故わたしがここにいなければならない? なんだか無性に腹がたってきた。
「ならいいでしょう。答は?」
「……………知らぬ」
「相変わらずひねくれた性格してますね」
「腹の探れぬたぬきよりはましだ」
「さて、誰のことでしょうか」
とぼけるでない腐れたぬきが。
ふんと鼻を鳴らして、彼女は背もたれに寄りかかる。まだ充分に少女と呼べる彼女は、不釣り合いな古風の話し方をする。随分前から改めろと散々言い含めてきたがこの様だ。多分ずっとこのままだろう。少なくとも私と一緒にいる間は。
いつもまとっている黒衣をひるがえし、彼女はチェス盤に手を伸ばす。彼女はいつも黒。後手で私の手をみよう、という魂胆ではない。白が嫌いなのだ。
「知らぬものは知らぬ。それが答になるだろう」
「逃げるのですか?」
「……いいか、その減らず口今すぐ黙らせろ」
ほらまたふてくされる。
ここで職務を放り出さないのは、これが楽しいせいなのかもしれない。
「まぁ、気が向いたらいつでも教えてください。それこそ時間は悠久なのですから」
「――帰る」
突然立ち上がり、彼女は霧のように消える。またか、と大げさに肩をすくめた。思い通りにならないといつもこうだ。
だがあれでも自分の半身なのだ。違えることのできない、重い責を背負った。
「また来てくださいね、魔王」
生と死の狭間の、邂逅。
その出逢いは、如何に?