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コロナに感染したので、明日会社休んでいいですか?

作者: ナカマクン

コロナの主な症状


・体温は37〜39度を行き来。眠ると特に上昇。起きている間は38度台を前後。

・味覚消失。食欲不振。食べなければ薬を飲めないため、義務で流し込む。

・頭痛、喉の痛み、寒気、鼻水、全身の痛み、まれに鼻血あり。特に頭痛が強く、常に目から涙が溢れている。





経緯


【一日目】


・三月一日に職場にて発熱。当時の体温は37.2度。病院に直行したかったものの、上司からPCR検査を必ず受けるようにとの指示があったため、空港内の検査所へ30分ほどかけて歩いて向かう。飛行機に乗る人以外は検査を受けられないと断られたため、20分ほどかけて駐車場へ徒歩で移動。車内で体温を測ると、38.5度と急上昇。こんなに遠い帰り道は今までなかった。


・空港内でのPCR検査は受けられなかったと上司に連絡。無料で受けられる場所があるはずなので必ず受けるようにとの釘を刺される。スマホにて検索したところ、そもそも熱がある人はPCR検査場では検査を受けられないとの事実が発覚。何も知らないくせに職場の環境のことしか考えていない上司への殺意が芽生え始める。


・意識が朦朧とする中で車を運転し、渋滞を潜り抜けてようやく近所の病院へ到着。しかし受付時間は20分前に終了していたため、受診を断られる。余計な寄り道をさせられなければ……と、ますます殺意が膨らみ、熱が上昇。体温を車内で測ると39度台に到達。


・とりあえず明日は休みたいため、車内で職場へと連絡。診察を受けられなかったこと、明日の朝にあらためて病院へ行くことを伝えて終わりだと思っていた。考えが甘かった。病人の苦痛を思いやる心が無い上司から、根掘り葉掘り執拗な質問攻めを10分も受ける。ワクチン接種の有無や今朝の体調はまだしも、家族構成や親戚でコロナに感染した人まで聞いてどうするのかと問い詰めたい。現在の体調? この長電話のせいで死にそう。


・家に帰るなり、布団にダウン。熱は39度台をウロウロ。ほぼコロナだと確信を得る。食事を取らなくてはいけないため……ええと……何食べたんだったか……意識が曖昧のまま食事だけは取って自室へと引きこもる。両親と弟には、絶対に部屋に近づくなと忠告。家にあったEveを飲む。寝返りを打った拍子にクソフレ様クッションを破いてしまい、絶望。


・その後も激しい頭痛と喉の痛みと戦いつつ、布団で起きたり眠ったりを繰り返す。深夜にとうとう熱が40度台に突入。眠気も来ないため、現実逃避にネトフリを起動。適当にアニメを見て気分を少しでも紛らわせる。死ぬかもしれないので、ついでにウクライナに一万寄付。夜明けはまだか。病院が開く時間はまだか。時計の進みが遅すぎる。明後日? そんな先のことは分からない。




【二日目】


・どうにか生きて夜明けを迎えた。しかし病院はまだ開かない。薬物中毒者のように薬を求めてドアを引っ掻く謎の遊びを思いついてしまう。耐える。病院が開くまであと3時間。ただ耐える。ジャクリ抱き枕とウマ娘ちゃんだけが心の支えになり始める。


・やっと9時前だ。病院に行こう。俺が一番乗りだ。絶対はボクだ。ブロロロ、車を飛ばして病院へ。10分前に着けば真っ先に診察を受けられるだろう。ん?なんでこんなに駐車場が混んでるんだ? まさかこの俺が先を越された? どけ! 俺はお兄様だぞ!


・意外とすんなり診察してもらえた。PCR検査を受ける。結果は陽性。やはりコロナか……。この程度、想定の範囲内だよ。まだ慌てる時間じゃない。だが俺が職場や家族にコロナを撒き散らしていたのか……なんてことだ。愛犬までコロナで死んだら、俺は明日から何を撫でればいい。


・職場へ連絡。鬼のような質問攻め再び。PCR検査はすぐに結果が出ないと主張する上司。出たもんは出たんですよと繰り返す私。再び10分以上の長電話を車内で繰り返す。そのうち薬局の人が車内にお薬を持ってきてくれたので、電話を切る。ありがとうありがとう。これで少しは楽になる。今すぐコンビニでご飯を買って帰って食べて、お薬を飲もう。


・コンビニで弁当を買う。お釣りを直接手渡ししようとしたレジのお姉さんを拒否。ご、ごめん。お、おで、コロナだがら、おでにさわると、みんなふごうになるがら。見た目は化け物だけど心優しい怪物と化す。店を出た直後、知識不足の上司から再び電話。PCR検査はすぐに結果が出ないから、抗原検査に違いないと執拗に何度も何度も主張。再び病院に戻ってPCR検査を必ず受けるようにとの指示。だからそれは今受けたやつなんだよ! ゆっくりりかいしてねっ! 言い合う時間があったら一刻も早く飯を食って薬を飲みたいので、病院へと向かう。


・病院到着。「今受けたのって、PCR検査ですよね?」「はい、そうですよ?」〜確認終了〜「もしもし? やっぱりPCR検査でした」「あ、そうなんだ。早いねー」○す。○す。絶対にこいつを○すまで俺は死なない。差し違えてでも○す。誉れは浜で死にました。命捨てがまるは今ぞ。


・怒りを抑えながら帰宅。味のしないコンビニご飯を流し込んで、待望のお薬を飲む。首をゴキゴキ鳴らしてゲイリーオールドマンの真似を忘れない。ふぅ〜……こいつは効くぜ……。お薬バンザイ! あとは寝て安静にするだけ! 勝ったッ! 第三部完!


・寝ていたらまた上司から電話で叩き起こされる。テメェ状況確認状況確認って、いい加減にしろ。お前が病人の安息を潰してんだよ。保健所からの電話があったら連絡するっつったろ。何なら職場でマスクしないで咳しまくりましたって保健所に嘘ついて事務所閉鎖に追い込んだろか。


・電話が終わって横になった20分後、また上司から電話。知らなかった。怒りのエネルギーって消耗品なんだ。心の力が足りなくなったから、もう術も使えないよ。適当に流してハイハイ言って電話を切る。内容はどうでもよすぎて全く覚えていない。ザイバツザイバツ。




【三日目】


・二度の眠れぬ夜を超えて、今日に至る。それにしても、どこで感染したんだろう。普段は職場と家の往復しかしてないのに。叔父さんの葬式で宮古に行った時、おばさんが執拗に勧めてきたおにぎりか? 手で握ってるからなぁ……。


・発熱三日目にして、ようやく一日中家で休める喜びを噛み締める。10分以上に渡る上司からの長電話が無ければもっと良かった。もうスマホの電源切ろうかな。でも保健所からまだ連絡きてないし、ダメか。


・夕方ごろ、保健所から電話が来る。発熱から10日は自宅で療養してほしいこと。家族全員PCR検査を受けてほしいこと。電話は必要なことだけ話して5分で終わった。うちの話がチンタラ長い上司に見習わせたい。


・そして熱は下がらない。ネットを見るとウクライナのニュースばっかり流れてきて、さらに気が滅入る。ロシアめ、メチャクチャやりやがって。どんな理由があっても戦争は悪に決まってるだろ、チクショウ。


・熱が波打っている。37度台から39度台を乱高下している。薬も飲んだのに何故。ホワーイ、ホワーイ。頭が痛い。涙が止まらない。初日より悪くなっている気さえする。そろそろ限界が近いのかもしれない。ふざけた文章を書くと気が紛れる。


生きていたらまた明日。








【四日目】


・私、生きてる。なぜ。


・昨夜は辛かった。熱が39度台後半から動かず、頭痛と涙が止まらなかった。起きている間は苦痛しかないので、寝て少しでも時間を消費しようとしたが、過去にやったゲームの断片的な光景ばかりがなぜか頭に浮かんで眠れない。もしかしてこれが走馬灯? 脳が死を察知して、膨大な記憶の中から危険を回避する方法を検索していたのかな? ゲーム世界では確かに死にまくったとはいえ、うちの脳みそさんポンコツすぎませんかね。そろそろ新しい頭買わなくちゃ。


・夜明けをいつ迎えたか、はっきりとしない。体の節々が痛い。咳も出てきた。寒気も強くなっている。しかし不思議と熱は安定の兆候を見せ始めた。39度台に突入することがほぼ無くなる。もう少しの辛抱だ。戦えマイボディ。


・9時になった途端、職場からの電話。だがその攻撃はすでに予測済みだ。スマホはすでにマナーモードになっているので、部屋の外にポイ。電話確認、ヨシ!


・家族のPCR検査の結果が来た。父は陽性。弟は陰性。父は無症状なのが救いか。父も弟も別室に隔離。ここでようやく人の話を聞かない母も、渋々PCR検査を受けに行く。


・12時以降、体温が38度台後半を頑なに維持。バカな。もう四日目だぞ。まだこのウイルスは粘るのか。それならこっちも覚悟を決めて長期戦だと風呂を強行。溜まりに溜まった汗を洗い流す。……ふぃ〜……さっぱりした。さーて体温はっと。【39.5】ンンンンンンンンンンン!


・スマホの着信履歴を見なかったことにする。


・18時現在。体温は37度台を維持し、ひと段落。しかしこのウイルス、体温の上昇下降の幅が尋常ではないので、体温が治癒の目安にならない。


・また夜が来る。病んでいる時ほど長く感じる夜はない。明日には熱も引いてくれるだろうか。そうだ、コロナが治ったら焼肉を食べに行こう。きっと涙が出るほど美味いに違いない。




【五日目】


・熱が37度前後で安定してきました。この様子なら治るまであと一歩だと思います。ご心配おかけしました。



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― 新着の感想 ―
[良い点]  良かった〜!  3日の日に新着で読んで、感想を書き始めたのですが、この状態で書いても、迷惑なだけだと、全部消して、ブラバ。密かにご無事をお祈りしておりました。 [一言]  職場の方は酷い…
[良い点] はじめまして。 心無い誹謗中傷の飛び交うこのご時世ですが、どうかご自愛ください。 コロナウイルスは今や、どれだけ気を付けていても運が悪ければかかってしまう病です。 くれぐれもご自身を責める…
[良い点] 体調が安定されたようでよかったです! 無理をしないで、ゆっくり休んでくださいね。
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