0423-MN-3
わたしわ まいごになりました
しらないばしょで とてもこわかったけど
おにいちゃんとおねえちゃんが おうちにつれていってくれました
しろちゃんって おいぬさんと いっぱいあそびました
とてもたのしかったです!
*
明ちゃんと手を繋いでます。
手が熱い。手汗ひどくないかな。
心臓バクバク。聞こえてないよね。
何この青春小説みたいな状況。
俺、女の子と初めて手繋いだんじゃ…!
「巴さんがよそよそしくて気持ち悪いです。何ですか?文句なら私に言わないでくださいよ」
明ちゃんはこの状況の元凶を見た。
めいちゃんはシロに乗っかろうとしている。
めいちゃん、そいつは丸っこいだけで、筋肉はないから耐えられないと思う。
めいちゃんが乗っかればすぐにぺちゃんこになりそうだ。
「シロちゃん乗っても良い?」
「わう?わん!」
「任せろ」みたいな顔してるけどあいつ大丈夫かよ。
「よいしょ。………うわ!」
「わん!………わ…ん…」
やっぱり無理だった。少しだけ奮闘していたが、結局シロが潰れてしまった。2人とも怪我はなさそうだけど。
「めいちゃん、あまりシロを虐めないでください。シロを離れさせますよ?」
「えー!やだあー!」
「わうー」
めいちゃんはシロに覆いかぶさって抗議する。シロはめいちゃんの扱いに慣れてきている。
え?俺だけが手繋ぎに緊張してるの?誰も興味ない感じ?
明ちゃんも平静で…あ、耳赤かった。良かった、緊張してるんだ…やっぱり恥ずかしいなこれ。
さっきの喧嘩でこうなった訳だが、いつまでやればいいんだろうか。
「それで、もう近いんですか?」
手繋いでると声が近く聞こえるな。俺の心音、向こうに聞かれてないよね?爆音なんだけど…。
「巴さん?聞いているんですが?」
「え!?何どうしたの?」
驚いて逃げようとしたけど、逃げれなかった。明ちゃんの腕を強く引いてしまった。
「急に腕を引っ張らないで下さい…。痛かったです今のは…」
「ご、ごめん…」
「それで、近いんですか?お家は」
「え?めいちゃんが見つけた透明の方じゃないの?」
「それも見つけますが、近い方から片付けます。どの辺なんですか?」
「えっと…」
「あっちだよ!」
俺が言うのを渋っているとめいちゃんが方向を教えた。そのまま先導しようとシロと走り出す。
急に走ると危ない気が……
「あう!」
「わう?」
めいちゃんはすっ転んだ。ほれ見たことか…と思ったけど、めいちゃんは運良く、シロの上に乗っかった。
今度は倒れなかった。うまくめいちゃんを支えれている。
「ありがとう、シロちゃん」
「わん!」
シロは「なんてことないぜ」みたいな男前な顔をしている。気のせいだな、シロの顔は基本笑っているし。
突然、腕が後ろに引っ張られた。明ちゃんが立ち止まってしまったのである。よく立ち止まるなぁ、俺たち。
「どうかした?」
「あ、いえ…。何でもありません」
突然に早歩きになった。歩幅をそろえて歩く。
「もうそろそろなんだ、俺の家」
「そ、そうですか」
「家っていうか、部屋だけど…」
そこにはアパートが建っていた。年季の入った鉄階段、木の板扉。《ザッ安アパート》である。
「あんまり、綺麗じゃないから、女の子は嫌かなと思ってたんだ」
「はぁ、そうだったんですか」
明ちゃんはずっとアパートを見ている。自分の家と比べて、差を確認しているのだろうか。
あんまり、見続けられるのも気分が良くない。
そろそろ行こう。
「中に上がるのはダメですか?」
すっごくキラキラした目でそんなことを言う。この見た目のどこにキラキラする要素があったの?
「中が気になります!見てみたいです!」
「中はちょっと……ほんと汚いからさ」
「構いません。見るだけですから、ダメですか?」
「わたしもはいりたい!」
「わう!」
2人が俺らの会話を聞いていた。やばいこれじゃあ多数決で負ける。
結局負けました。部屋の中へ上がることに。
「物は多いような気がしますが、汚いと言うほどでは…何ですかこの布団、盛り上がってますが」
「な、何でもないよ⭐︎」
みんなには入る前に少しだけ待ってもらった。
少しの時間で出来たのは、押し入れに隠すこと。そして、入りきらなかった物は布団の中へ。見られても問題ない物は放置。踏む足場も通り道もちゃんと作れた。頑張った。
「シロちゃん、あしふいたよー」
「入ってきていいですよー」
何故明ちゃんが許可を?まあいいけど…シロは足を拭いてもらって気持ちよさそうだ。
明ちゃんが入る前にタオルを取り出し、シロの足を拭こうとすると、めいちゃんが興味を出してやりたがった。
簡単なことだから任せたようだが、なんか、シロとめいちゃんがどんどん仲良くなっていってないか?いいのか明ちゃん?
「はい、おねえちゃん!タオル!」
「ありがとうございます。シロ、暴れないでね?」
「へっへっへっ………」
おい、犬公。今までなかったセリフじゃねぇか。どう言う意味だそれ?「わん!」とかの返事でよかったんじゃないのか?嫌な気がするんだが…。
俺と明ちゃんは流石にもう手を離した。2人で通れる玄関扉でもなかったので、めいちゃんはすんなり許してくれた。
「では、ここでご飯を食べましょうか」
「ここで!?」
「はい。お母さんが、弁当を持たせているでしょう?それを食べますよ」
「あー、そういえば…」
明ちゃんは袋からお弁当箱を取り出した。背負えるタイプの袋だったから良かったけど、まぁまぁ重たかったんだよなこの袋。でも、取り出した弁当箱は小さかった。あれ?
と思ったら、大小様々な弁当箱がたくさん出てきた。何この数!?他に水筒2本と箸とフォークが入った入れ物、紙コップが出てきた。多っ!
「さあ、お弁当は好きなのを選んで下さい。おかわりもありますから」
え?選択制なのこれ?とりあえず一つを取った。
「わたし、これ!」
「では、私はこれを」
パカッと開けると、ドッグフードが入っていた。
「あ、それはシロのですね。シロにあげてもらえますか?他のを選んで構わないので。食べたかったら我慢させますが…」
「くう…ん」
「犬の餌を食わないよ!もちろんあげるさ。ほらシロお前のだ!」
「わん、はぐはぐ……」
「では他のをどうぞ?」
「これにする」
パカッと開けると、果物だらけだった。め、飯がない!?
「あ!いいないいな!めいもそれ食べたい!」
「デザートの箱でしたね。みんなご飯を食べたら頂きましょう。巴さんが1人で食べたいなら仕方ありませんが…めいちゃんの顔を見てください」
「お兄…ちゃん!」
「もちろん、みんなで食べよう!これは後に食べるから退けようか」
もうハズレは無いよな。残り三つのうち一つを取った。
てか、2人は開けてないのか?
俺が開けるのを見てから決めようとしてないか?
俺は箱を開けた。
おかずがたくさん入った箱だった。
「ご飯は!?」
「おかずが沢山ありますね。1人で食べたいなら…」
「分けるよ!みんなで食べよう!」
もう一個の箱を開けると白飯だけが入っていた。美穂さんどうしてこんな入れ方したの!?
最後の一個を開ける前に2人にも確認した。
「俺が開けた結果で自分の箱変えようとしてない?」
「いいから早く開けてください」
「やっぱりか!君たちも同時に開けよう。変えてもいいから」
「わかった」
「分かりました」
「いくよ?せーのっ!」
パカッと開けると、3人とも1人用の弁当になっていた。めいちゃんのは少しだけ小さい箱で量も他のより少なくて、かわいらしくデコられていた。
「わあ、かわいい!」
「さっきまでのがおかわり分だったのか…てわかるか!」
「では頂きましょう。手を合わせまして…」
「はーい!」
「「いただきます!」」
「…いただきます」
弁当は文句なしに美味しかった。ただ説明が無かったのがな…
「袋の中に紙が入ってました。有彩色の方が一人分の弁当で、無彩色がおかわり、その中の白色がシロの餌だって書いてますね。」
「説明あったんだね…」
「ごくごく…おいしかった!!」
「わふ!!」
水を飲み終えためいちゃんはシロと遊ぶことにしたようだ。シロと部屋の探検をしてる。こどもの気にいる物は有っただろうか?
それよりも…ご飯、美味しかった。食ったら眠くなってきたな…
「寝たら、牛になっちゃいますよ?」
「もぉお………」
「牛だったんですか。自分の家だからと、だらけないで下さい。弁当箱を洗うので手伝ってくださいよ」
「…君も昨日だらけてたじゃないか」
「コタツは仕方ないです。あれは魔性です」
「分かるけど…なんかずるいな」
台所はそこまで広くないので、明ちゃんは洗う係、俺は拭く係になった。
「はい」
「ほい」
作業は順調。最後の一個になった。その時、シロと遊んでいためいちゃんが遠くから、聞いてきた。
「おにいちゃん!これめくっていい?」
「え?…は!ダメダメ!!」
振り向けばめいちゃんが布団の前に立っている。さっきの弁当みたいで興味が出たのだろう。箱の中身はなんだろな、みたいに。
子供は何を想像するだろうか。きっといい物だ。おもちゃやお菓子。女の子ならぬいぐるみも好きかな?
だが、そんな物は入ってない。
「えい!」
「あぁ!」
中から出てきたのは、大量の服。畳まれておらずぐちゃぐちゃだった。したのは俺だけど。後、雑誌と食いかけのお菓子が入っていた。雑誌はエロではないけど表紙がグラビアだったから隠した。見つかってしまった…。
「おふくいっぱいだね。きたなーい!」
めいちゃんは笑った。愛らしいが憎らしい。本当に悪戯っ子だな。洗い物を終えて、手を拭いた明ちゃんがめいちゃんの元に向かった。
「めいちゃん?勝手に人の布団をめくってはいけませんよ?」
明ちゃんがめいちゃんの行動を叱っている。
そうだ、こう言う時は叱らないといけないな。
「布団に近づいたら襲われてしまいます」
「ごめんなさい…」
「いや、襲わないよ!?俺をロリコン扱いしないでよ!!」
明ちゃんが振り返って言う。めいちゃんを抱きしめ、守るような姿で。
「ロリえさん、服はちゃんと畳んで仕舞わないと場所を取りますし、衛生的によくありませんよ?」
「その呼び名は絶対許さない。言ってることは正しいとしてもその姿勢と呼び名は絶対に許さないから」
明ちゃんはめいちゃんを離した。めいちゃんは逃げるようにシロの元へ。襲われると言う言葉に怯えたのだろうか?また冤罪が増えた。
「叔父がいないからといって、自分の好きなようにしていては叔父が帰ってきた時に困りますよ」
「聞いて。言ってることは正しいんだけど、俺の言い分も聞いて?」
「おじさんがいるのー?」
シロの裏側から、めいちゃんが聞いてきた。明ちゃんが答える。
「そのようです。まだ会ったことはありませんが、痕跡のような物は見えますね」
「ふーん」
聞いておいて興味はそれほどらしい。それにしても、明ちゃんの洞察力が凄い。
2人分のコップや食器。歯ブラシ、サイズの違う男物の靴。明ちゃんはそれらを見て言う。
た、探偵っぽい!!
「いつから、帰ってきてないんですか?」
「えっと…いつからだろう。もう長いこと帰ってきてない気もするし、最近出ていった気もするな…」
「昨日や、一昨日は?」
「居なかったね。出かけてる間は知らないけど、家にいる間は一度も帰って来なかった」
「ふむ…」
「シロちゃんなにしてるの?」
めいちゃんの声に釣られ、シロの方を見る。シロは押し入れをじっと見つめた状態でお座りしていた。
「わん!」
一度吠えたと思ったら、押入れの襖をカリカリしている。
わぁ、やめろやめろ!!
「シ、シロ!流石にそれはやめて!」
明ちゃんも止めに入る。襖が傷つくことを恐れたらしい。
シロを引っ張り上げて止める明ちゃんを横目に俺は押入れの中身が心配だった。
バレなかった、セーフ。俺は襖から視線を外す。
あれ?めいちゃんは?
「えい」
スパン!という音とめいちゃんの声がした。
声は襖がある方向。明ちゃんもその方向を見ていた。
襖の中には沢山の絵があった。花や鳥、建物や風景の絵と一緒に、裸の女性の絵が見えている。
「これは…」
俺は襖を閉めた。
「忘れて?」
「……」
「なにがあったの?」
めいちゃんが俺を見上げた。家の押し入れは少し高い段になっている。小さいめいちゃんには見えなかったようだ。
それでいい。見せられるようなものじゃない。
「面白くないものだよ。さあ、お昼ご飯は食べたし、めいちゃんのお家を探しに行こう。ご両親も心配しているよ」
「えー、みたいのに…」
「いいから、ほら明ちゃんもシロも鍵閉めなきゃだから」
「分かりました」
「わう」
明ちゃんはお弁当箱を片付けた。水筒と入れ物も袋に戻して立ち上がる。
めいちゃんも渋々玄関の方に歩いてくる。
「ほらシロ、行くよ?」
シロは襖の前でじっと座っていた。明ちゃんが呼んでも反応がない。
「シロちゃーん!行こー?」
めいちゃんが呼んで、ようやく歩いてきた。その姿を明ちゃんが怖い顔で見ている。
「なんで、めいちゃんが呼んだらくるの…?」
「わう?」
俺たちは想定以上に立ち止まっているな。
これは、めいちゃんの親御さんが警察を呼ぶ前に届けなきゃ、誘拐と疑われそうだ。既に捜索届が出てたら、どうしよう。説明考えとかなきゃ…。
みんなが出てから鍵を閉める。
ガチャリ。
「じゃあ、行こうか」
明ちゃんから荷物を預かった。本人は遠慮したけど、なんとなく預かった。渋々渡してくれたし。
めいちゃんは俺たちを見て言う。
「あっちからきたの」
めいちゃんが指している方には道があって、霧が出ていた。街中で霧?昼過ぎだぞ。
*
わたしわ おにいちゃんと おねえちゃんと シロちゃんと いっしょにあるきました
おうちに かえります
おかあさん おこってないかなぁ
読んでいただきありがとうございます。
2022/10/13 タイトル変更
1060-MN-3
↓
0423-MN-3




