4話 めいちゃん は 迷子
何なんだよ。あいつが書いた日記が何だってんだよ。
そこに書いてあることは全て消える。
いや、消してやるんだ。
お前もそれが見たくて協力するんだろ?
「………」
いいよ、どうせ何も言わないんだろ。
だったらそのまま消えていくのを見てろよ。
「………」
失色はもう広がってる。
想定していたよりも規模が広すぎるけど、他のやつのことなんて知らない。
俺はこれが変えてくれると信じたんだ。
俺は結果しか見ない。過程なんて知るもんか。
俺の世界は俺が変えるんだ。
ブツブツ言いながら、その人物は眠ってしまった。
男の目の前にあった色は姿を変えた。
白と黒が混ざった長い髪、化粧をしていて唇が紅く艶めいている。霞んだ虹のようなドレスを着ていて、中性的な顔立ちの若い女の姿。
女は眠っている男の顔を愛しそうに見つめた。
そして、男の頬に触れようとするが、手を引っ込めた。
机の上の日記帳に視線をやる女。
「イロの契約者に何しようとしてるの?」
「あら、いたのあなた。」
女が日記帳から視線を外すと、居たのは透明だった。
「困るなぁ、彼はイロのお気に入りなんだ。いくら君でも彼の前でうろちょろされると彼の計画が歪んでしまう。」
「彼の計画?あなたの間違いでしょ?」
「考えたのはイロだけど、やってるのは彼自身だ。僕はただ観てるだけだよ。」
「最悪ね。あなたに監視され続けてる彼が可哀想よ。」
「嫌われてるなぁ。前はあんなに楽しく話をしたのに。」
「あなたのことをよく知ってなかったからね。知ってたらあの時、切り捨てたわ。」
「へー、それより何だいその格好?汚いね、イロは嫌いだ。」
「あなたの感想なんていらないわよ。もう行くから。」
女の色が薄くなった。声がそれを止める。
「まちなよ、何を企んでいるんだい?」
「教えない、彼の元から離れるなら教えてもいいわよ?」
「嫌だね。イロは彼に期待しているんだ。計画完了のその時までイロは彼を手放すつもりはないよ。」
「イロ…皮肉ね。あなたの一番嫌いな名前じゃない。」
「仕方ないさ、名前なんてどうでもいい。彼からもらったんだ。君の時はどうだったかな…ああ、《アン》だったっけ?」
「覚えてるのは意外ね。あなた、何でも忘れたがってるからもう覚えてないと思ってたわ。」
女の色が消えた。もう気配は残っていない。
「彼が言った通り、邪魔されてるのかな。」
透明も気配を隠した。この部屋には男1人になる。
「うぅ……」
うなされる男の目から一筋の涙が溢れた。
世界は色褪せていく。
ー
よし、今日も続けて書こうとしてる。
俺は成長してるんだ。
よしよし、このまま一ヶ月…いや、一年だって続けてやる。来年読み返すのが楽しみだ。
と、今日は何を書こうか。
そうだ、女の子にあったんだ。
迷子の女の子を助けた。
無事にご両親の元まで届けることができたんだぞ。
女の子とご両親の嬉しそうな泣き顔を見て、こっちも嬉しかった。いいことすると1日頑張れる気がするよな。
未来のお前はいいこと出来てるか?
もし、気持ちが沈んだ時は隣に貼った絵を見てくれ。
女の子が描いてくれた絵だよ。
よく描けてるよな、この真ん中のが俺なんだぜ?
隣の女の人が女の子らしい。キスしている絵なんだってさ。
大きくなったら俺と結婚してくれるって言ってたよ。
その頃には忘れてしまってると思うが、お前は忘れるなよ?この先ずっと宝物として取っておいてほしい。
人助けっていいよな?
*
「あの、その子は誰でしょうか?」
「えっと…迷子みたいでして……」
俺の手は小さい小さい手と繋がっている。
小さな女の子の手だった。
俺は女の子と手を繋いで明ちゃんの家に来ていた。
「誘拐じゃないですよね?」
「冤罪だよ。信じてくれ。」
「何故、家まで連れて来たんですか。親御さんの元へ返してあげてください。」
「えっと…それが…」
「わんこ!」
「「え?」」
女の子は明ちゃんの後ろを通ったシロを見つけ、声を上げた。
「わう?」
パタパタとシロは駆け寄って来た。
「なでていい?」
「いいですよ。」
「きゃー!もふもふだぁ!!おなまえは!」
「シロって言います。」
「シロちゃん!かわいいー!」
女の子は撫で撫でからいつのまにか抱きついている。シロは女の子に興味が出たのか、匂いを嗅いでいる。
「巴さん、可愛いものを誘拐しようとしてたりしないですよね?」
「だから、冤罪だって!あと、この子について説明したいんだ…」
「…誘拐の片棒を担がせるなんて話をしないで下さいよ?居間で話しましょう。」
明ちゃんは渋々ではあったが、話を聞いてくれるようだ。
人様の子を勝手に家にあげるのはそりゃあ、躊躇うよ。でも、外は寒いんだ。少しの間だけです。許してください!
居間に入ると、秀人さんがソファで寛いでいた。
「お父さん、私たち話があるので他の部屋に行ってくれませんか?」
「え、いいけども……ん?その子は誰かな?」
「近所の子です。シロと遊んでくれてるんです。」
「シロはたくさん友達がいるんだな…」
女の子はシロのお腹や背中を撫でまくり、足を振ったり、歯を見たり、おもちゃのようにして遊んでいた。
シロはされるがまま。嫌ではなさそうだけど…。
秀人さんが部屋を出て行った。
「お母さんもいいですか?」
「はいはい、終わったら呼びに来てね。」
「分かりました。」
台所にいた美穂さんも部屋を出て行った。
ガチャと、明ちゃんは開け放していたドアを閉める。
「それでは、聞かせてください。誘拐の詳細を…」
「違うって!」
昨日の食卓が尋問室の机みたいになった。
明ちゃんの手元には雰囲気作りの照明がある。部屋は明るいので、電源は入っていない。
わざわざ秀人さんのところに行ってアームライトを借りて来たのだ。
本当はつけて遊びたかったんだろうけど、さっき暗くしてやったら結構明るかった。これを人に向けたりしたら目が痛くなるかもしれないと配慮してくれた。尋問はするのにそこらへん優しいのかどうか。
無灯のライトを俺に向けている。
「さあ、白状してください。何故こんな小さい子を?」
「えっとね、今朝起きましたら、もう10時過ぎでして。」
「朝なんですかね?それは。」
「ギリギリだね。まあ10時過ぎに起きまして、いつ此処に行けばいいのかと悩んでおりましたら、インターホンの方が鳴りまして。」
「ほうほう。」
「どちらさん?と思ってドアを開けましたら立っていたのは女の子でして。」
「ほう。」
「悪戯かと思ったんですけどね。いきなり目の前で泣かれまして。」
「泣かしたと…」
「いえいえ!泣かしてはいないよ。ただ聞いただけです。何処から来たの?って。」
「………ふむ。」
「それで女の子がいうのはですね。透明からだそうです。」
「はぁ。誘拐だけじゃ飽き足らず、嘘まで…」
「いやいや!本当に言いました!ねぇ君、何処から来たのかこのお姉さんに教えてあげて?」
「いいよ。おいでシロちゃん。」
「…わん。」
女の子はシロをとても気に入っていて、離れようとしない。対してシロの方は少し疲れているように見える。すぐに息が上がるのは運動不足だぞー。って、犬は息が早いのが普通か。女の子はシロを抱き上げた。持ち上がらなかったけど。
「にゅーすでやってたの。
とーめいになっちゃうばしょのこと。
おかあさんは、いっちゃダメっていったけど、わたしはそこにいったの。
そしたら、しらないばしょになってたの。
だれもいなくて…こわくて…
おうちのひとをよんだら、おにいさんがでてきたの。
いっしょにいてくれて、うれしかったよ。
このおうちまで、てをつないでくれたんだ。
おねえちゃんはだあれ?」
女の子はゆっくり、ゆっくり、言葉にした。最後の質問にお姉さんは答える。
「御見透明って言います。あなたのお名前は何ですか?」
「めいだよ。なかしまめいです。よろしくおねがいします。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
「おねえちゃんのかみ、きれいなおいろだね。シロちゃんとにてる。」
「そうですかね。ありがとうございます。」
明ちゃんは嬉しそうに髪を梳いた。確かに綺麗な色だな。汚れていない真っ白。シロに似てるというのはどうかと思ったけど、めいちゃんなりの表現なのだろう。好きなものを例えにするとかそんな感じ。
「めいちゃんはお幾つですか?」
「いくつ?くつのこと?」
「何歳ですか?ってことだよ。」
「5さいだよ。」
右手を開いて明ちゃんに見せている。左手はシロを撫でたまま。
「何故、透明な場所へ行ったのですか?」
「おともだちがいたんだけどね。
どんなこかわすれちゃったの。
とうめいなばしょにいけばあえるとおもったの。」
「何故、会えると思ったのか聞いても?」
「わかんないの。でも、そこにいるとおもったから。みつからなかったけど。」
めいちゃんはシロにもたれかかる。悲しそうな表情をしていた。
「透明を通って来た場所、最初に見た場所に案内してもらえますか?」
「おにいさんのいえのちかくのこと?」
「はい、もしかしたらお家にすぐ帰れるかもしれません。」
「ほんと!?」
「確証はありません。でも、行ってみなければ分からないことはあります。あなたのお友達も見つかるかもしれませんし。」
「いこう!はやくいこ!」
「では、巴さん。あなたに判決を与えます。」
いつのまにか、尋問室が裁判所みたくなってる?
「この子のお友達を見つけ、親御さんの元に返してあげてください。もちろん私も手伝いますので。」
「わん!」
なんとなく、こうなるかなと思ってはいた。迷子を送り届けるのは賛成だけど…お友達探しとやらはどうすれば?
とりあえず、バイトの方は後回しだな。
「じゃあ、行こうか。」
明ちゃんはライトを返しに秀人さん達を呼びに行った。その間、玄関で待っている。
すると、美穂さんが駆け寄って来た。
「あ、巴くん、これ持ってちょうだい。」
「え、なんですかこれ。」
「お弁当よ。今日、明がお出かけするって言うから準備してたの。多く入れといたから、その子の分もあると思うわ。帰りは明に持たせればいいから。」
「すいません。お昼前に来ちゃって…」
「いいのいいの。殆どが昨日の残りなの、ごめんなさいね。」
「いえいえ、すごく美味しかったんで嬉しいです。ありがとうございます。」
「うん、気をつけて行ってらっしゃいね。」
「はい!」
と、そこで階段を降りてくる明ちゃんと目があった。
「何ですか?その荷物。」
「あら、上にいたの明」
「ええ、忘れ物してまして。」
「おっちょこちょいね。」
「………ええ。そうですね。」
明ちゃんは不服そうな顔をした。
そして、なんか睨まれた。何で?
「では行ってきます。」
「夕飯までには帰ってくるのよ。」
「はい。」
玄関を出ると日差しが眩しかった。
俺、シロ+めいちゃん、明ちゃんの並びで歩いている。
「おねえちゃんのおかあさん、やさしいね。」
「そうですね。」
「いいなぁ、あたしのおかあさんはすぐおこるの。どろであそんだときも、むしをとったときもおこられたの。りふじんよね。」
「ふふ、そうですね。」
「こーしろあーしろいうおかあさんはいや!」
「そうですか。」
「…でも、あえないのはもっといや。」
「……そうですね。」
「あたし、もうおかあさんにあえないのかな?」
女の子はまた泣きそうになっている。俯いて目が潤んでしまっている。
「悲観は良くありませんよ。絶望な時こそ、希望は必ずあります。《There is Hope in Despair》です。」
「なにいってるの?よくわかんない。」
難しい言葉と英語に女の子は顔を顰めている。理解できないことで、悲しい気持ちはかき消えたらしい。明ちゃんを見る目が険しくなっている。昨日、明ちゃんが俺にした顔と似てる。
「分かりやすく言うと、あなたは必ずお母さんに会えますよ、ということです。」
「ほんと!?うそじゃない?」
「ええ、このお兄さんが絶対に見つけてくれます。なので失敗は許されませんよ?」
明ちゃんは最後の文だけ俺を見て言った。
「…頑張ります。」
「元気がないですね。誘拐が失敗したからですか?」
「いや、違ったでしょ!!それ、いつまで言う気か!?」
「怒えさん、子供の前で声を荒げないで下さい。怯えてますよ。」
めいちゃんの方を見るが、シロにべったりで特に気にしていなさそうだった。うそかよ!揶揄いやがって、そろそろ注意しなくちゃ。
「君だってまだ子供だろ!大人に無礼すぎるよ?」
「ほう私はまだ子供ですか。そうですね、私は子供ですね。では、大人は何処にいるのでしょう?」
「君の目の前にだよ!俺はもう社会人だ!」
「一つ二つしか違わないのに、その間に大人になる段階があるんでしょうか?」
「そうさ、一年後、君は道を選択しないといけない。どんな大人になるのかって道を。」
「一助言ありがとうございます。その時に活用させていただきますね。忘れてなかったらですが。」
ふん、と明ちゃんは顔を振った。なんかご機嫌斜めだな…。
「君、なんでそんなに俺の扱いがぞんざいなの?俺なんかした?」
「うちの犬を誑かしました。」
「そ、それは…」
「結局、約束も破りましたし、家にまで押しかけて来ましたね。」
「いや、君が許可してくれたじゃん!家入ったのも君がいいって…」
「そうでしたっけ?あらら、記憶が抜けてますね。…記憶が抜けているといえば巴さん、忘れていることはないですか?」
「な、何を?」
「これのことです。」
明ちゃんはハンカチとビー玉を取り出した。
いや、ビー玉の持ち方がおかしいな。なんか、宙に浮いて……は!!
「それ、なあに?」
めいちゃんが明ちゃんの手を見ていた。どう説明するか悩む。しかし、明ちゃんはめいちゃんにそのビー玉入りのモノを手渡した。
「こういうものに見覚えはありませんか?ビー玉ではなく、ビー玉が入っているモノの方です。」
「わあ、ビーダマがういてる!なんかかたい!」
「その硬い方の事です。」
「これなあに?」
「透明になったコーヒーの缶です。」
あっさりと教えていた。女の子はじーっと透明缶を見つめている。
「これ、みえないよ?どうなってるの?」
「仕組みは分かりませんが、缶ということは分かります。試しに落としてみてください。」
「わかった。」
「え!?ちょ、ま…」
女の子は地面に放り投げた。ビー玉が宙に浮いて放物線を描く。地面に当たる前に跳ねて、音を鳴らした。
カカン、カン、コロコロ……
昨日とは少し違う音。そしてもう一つ違うのは透明缶のありかを見失しなかったことだ。ビー玉が地面の上で揺れている。
「な、なんで?」
「それはこういうことですよ。」
明ちゃんはさっと缶を拾って、それをまじまじと見せつけてくる。
「これは、セロハンテープ?」
「そうです。」
缶の一方だけにセロハンテープが何枚も貼られていた。
そして、テープの下には半月型の薄いプラ板のようなものが見える。
おそらくだが、飲み口の方に蓋ができていた。
だから、中のビー玉が飛び出ることなく缶の中で転がっていたのだろう。こんなことで見えるようにするなんて考えてもいなかった。
「すごいな、これなら何度落としても見つけられるじゃないか!」
「いえ、多分数回落としたらテープが剥がれますよ。そんなに補強できてないので…。」
「それなら、もっとテープをぐるぐる巻きにすればいいんじゃないの?簡単に剥がれないように。」
「…それはやめておきます。きっと、その方がいいです。」
「どうして?」
「私の勘です。」
探偵っぽいことを言い出した。雰囲気だけは一丁前だ。
それなら、君がこの子の謎を解き明かしてくれよ…。
明ちゃんは再び女の子に缶を見せる。
「どうですか?あなたが見た透明と似てはいませんか?」
「わたしがみたのは、おうちだったよ。カンじゃないもん。それに、ぜんぶはきえてなかったよ?」
「大きくなりましたね、お家ですか…。いつ見つけたのですか?」
「ニュースをみて、すぐにでかけたの。
おかあさんがみてないときにカギをあけて、おそとにでて、ばしょはおぼえてたからあるいていったの。
おじさんがいっぱいいたけど、すきまからはいったら、みつからなかったよ。」
「大人が複数警備してたんですか。よく掻い潜れましたね。あなたには《悪戯っ子》の銘を与えましょう。」
「おねえちゃんのはなし、むつかしくてわかんない。」
「褒めたんですよ。今の話どうでした?」
明ちゃんは俺に問う。俺の答えは決まってる。
「えっと…ごめん、分かんないわ。」
明ちゃんは俺に何を期待しているのだろう。
明ちゃんの方が探偵役が似合っているじゃないか。俺の役は助手にすらなれない、通行人Aくらいだと思うんだが。
「そうですか。そういえば、家はこっちの方だったんですね。あのコンビニ真逆じゃないですか。」
「あ、うん。でも、バイトに行くとき通るから利用してるのは本当。いう必要ないかなって。」
「へー、そうですか。」
「「………。」」
会話が終わった。特に話すこともないからいいけど…。なんか空気が重たいな。
めいちゃんがその空気を破った。
「おねえちゃんたち、ケンカしてるの?」
「何故そう思うんですか?」
「おとうさんとケンカしたときのおかあさんみたいな、かおしてるもん。」
「喧嘩じゃないです。食い違うことがあったから、何でだろうなと思っていただけです。隠したかったのかなと。」
「隠したかった訳じゃない。説明する必要ないと思ったんだよ。」
「なぜ、そう思ったんですか?理由は?」
「だって、友達でもない奴の家を教えられても、興味ないだろ?」
「あー、そういうことですか。友達じゃないですもんね。それは、いらない説明ですね。気遣い感謝します。」
「なんなの、その言い方。なんか気に入らないんだよね…」
「すみませんね、元々こういう喋り方なもので。気に入られなくて結構。」
「嘘だね。君の本当の喋り方は違うんだろ?シロに対する話し方が違ってたよ。」
「……っ!」
明ちゃんの顔は赤くなっていた。図星だったんだろう。ほぉー、こういう反応は可愛いね。
「だから、何なんですか?」
「別に?自分は距離を取られるのは嫌なくせに、距離を取ってるんだなぁと思っただけさ。」
「何なんですか、急に。」
「明ちゃんの癖を教えてあげただけだよ。俺も教えられたからね。《けどけど》って。だから、気をつけるようになったよ。教えてくれてありがとう。」
嫌みたらしくお礼を言ってやった。
当然、彼女は反応する。
「お礼を言われるとは思いませんでした。良かったです。イライラすることが一つ減って。他にも治した方がいいんじゃないですか?例えば、嘘をつくとか。」
ほうら、返してきたよ。また冤罪のことか。
「ついてないよ!俺がいつ君に嘘を言ったんだ!君こそ嘘をついてんじゃないのか!!」
「はぁ?すぐ約束を破るじゃないですか!巴さんは甘いんですよ!」
「ぐ!君は俺に両親がいたこと黙ってたじゃないか!あの言い方は絶対嘘だったんだろ!」
「っ!巴さんは、この缶のこと隠そうとしてましたよね。扱いも雑だったし!私が気づかなかったら、どうせどっかに落として忘れてましたよ!巴さん忘れやすそうだし!」
「別にそれでも良かったさ!他の人がこれを見つけたら、そいつが秘密を見つけるんだろ?君の言う物語は万々歳じゃないか!!」
「なんで、そうゆうこと言うんですか!巴さんが見つけたんだから、最後まで責任持ってくださいよ!」
「無理だよ!俺は頭がいいわけでも、何か特殊な力を持ってるわけじゃない!分からないものは分からないままなんだ!!覚えてたことも忘れちまう普通のやつなんだよ!!」
明ちゃんの期待が分からない。俺と彼女の間に何が出来てるんだ。まだ会って3日目だぞ?普通の人なら、緊張してよそよそしくなるはずだろ?
何でこんな言い合いばっかで喧嘩してるんだよ。
「それは君が待っててくれ。君の方が何かに役立てそうだし。探偵役、似合ってるじゃないか。」
「私は…探偵じゃありませんよ。」
「そうか、俺もだ。そいつの謎は解かれそうにないな。」
「「………。」」
みんな立ち止まっていることに今気づいた。また静かになり、空気は最悪だ。俺がいない方がいいか…?
そして、静寂を破ったのはまためいちゃんだった。
「……う、うあああああぁぁぁん!!!」
「わ、わう!?」
「ど、どうした?」
「め、めいちゃん!?」
めいちゃんは大泣きした。
怖がらせちゃったか!?
「ごべ、ん、なざ、いぃぃ、あだ、じ、が、ゲンガ、で、いっだがらぁぁああ!!!」
要約「ごめんなさい、あたしが喧嘩って言ったから。」
「あだじの、ぜい、だがらぁあ、ごべ、ご、ごべんだざぁぁああああいぃ!!!」
要約「あたしのせいだから、ごめんなさい。」
「違いますよ!めいちゃんのせいじゃないです!」
「そ、そうだぞーお兄ちゃんとお姉ちゃんは少し仲が悪いんだ!君のせいなんかじゃ…」
「びぇぇええええん!!!」
「な、何で泣くんだぁ!?」
なぜか、俺が言った後の方が泣き方が酷くなった。な、何故!?
「と、巴さん。泣かさないでくださいよ…」
「今の俺のせいなの!?分かんないんだけど!?」
「けど、出てるじゃないですか…」
今のは無意識だ。それにそんなこと言ってる場合じゃないだろ?
「わん!わん!!」
シロが俺たちに吠える。ん、俺たち?
「シロ、何で私にも吠えるの?」
「わん!」
明ちゃんは動揺していた。初めて飼い犬に手を噛まれたような反応だ。どうしたらいいのかまるで分からないのだろう。俺もだが。
「ぐすっ、ぐす、シロちゃん、ほえないであげて…。わるいのはわたしなのよ。」
「く、くうぅぅん?」
「ん、くすぐったい。」
めいちゃんがぐずりながらシロを止めた。シロはめいちゃんの頬の涙を舐めとった。めいちゃんが少しだけ笑った。
「ごめんなさい、あたしがお姉ちゃんたちをケンカさせちゃったのよね。あだ、じの、ぜいで……」
またぐずりだしためいちゃん。シロは俺たちのことを睨んでいる。
「めいちゃん、泣かないでくれ!お兄さんたちもうケンカしてないから!」
「…え?」
「ほら、お兄さんたち仲良しなんだよ!な、明ちゃん?」
「え?仲良しじゃないですけど?」
「うえ…うぅ……」
馬鹿かこいつは?状況を見ろや。お前、飼い犬に本当に噛まれるぞ?永遠の傷がついちゃうぞ?
俺は明ちゃんの方に近づいて、小声で話す。
「…仲良くなったふりでいいから、合わせて。じゃないと2人ともシロに吠えられ噛まれるよ?」
「…分かりました。」
めいちゃんがじっとこっちを窺っている。目尻の涙がこぼれそうなくらいに溜まっている。
「私たち、すっごく仲がいいんですけど、時に言い合うことがあるんです。でも、それは愛情の裏返しと言いますか…相手を思い遣ってのことであり、決して、憎しみや恨みが詰まっていることはなく……。」
こいつ何言ってんの?俺でも理解できなかったわ。もっと分かりやすくていいんだよ。
「見てみてめいちゃん!お兄さんたち手を繋ぐほど仲が良いんだ!ほうら、繋いじゃったぞー?仲が良いだろー!」
「なななににぎってるんですかぁ!」
「…ふりだふり、合わせて。」
「…ぶつぶつ。」
「な、何言ってるか聞こえないよ?」
その時、繋いでいる手の甲をつねられた。いたいいたい!
「どうですかめいちゃん。私たち仲がいいでしょぉ?」
「ど、どうだいめいちゃん。これでも仲が悪いと思うかい?」
「ううん!おかあさんとおとうさんみたい!」
「そうかー。めいちゃんの両親は俺たちみたいに仲が良いのかー。羨ましいなー。」
「そーですねー。」
「うん!ケンカしたあとは、なかなおりのチューをしてるよ?おにいちゃんたちはしないの?」
チュー?ネズミかな?仲直りのネズミとはいかに?
明ちゃんの顔を見ると真っ赤だった。白い髪がその赤さをより際立たせている。
え?その反応は、え?赤くなること…え?マジで?
めいちゃんの親御さんはとんだ教育方針だったらしい。
子供の前でする親いるの?
「しないよ!俺たちはそう言う関係じゃないからな!」
「そうですよ、いくらふりでもそこまでは…」
「ふり?」
「おおい!何でもないよー!とにかく、お兄ちゃんたちは仲が良いんだ。もう泣かないでくれるかい?」
「えー、でもチューがみたいよ。」
「「しないって!」」
めいちゃんは口を窄めてそう言った。この子すでに泣き止んでるじゃないか!
「しょうがないなぁ、じゃあ、ふたりがてをつないでいくなら、なかないよ。」
まさかとは思うがめいちゃん、企んでないよね?
急にケンカした奴らを纏めるために嘘泣きしたとかそんなことないよね?もしそうなら、この中で一番大人なの、めいちゃんになっちゃうんだけど…
「…どうする?この状況?」
「…もう、何でも良いです。キスよりマシなら手を繋いだままでも…」
「…まじ?」
2人の顔は真っ赤だった。さっきまで喧嘩してたのに、仲直りをすっ飛ばして、手繋いでるんだけど。
そして、このまま歩行を再開するらしいんだけど。
めいちゃんはすっごく笑ってる。シロも睨むのをやめて、めいちゃんに擦り寄ってる。
並びが変わりました。
俺、明ちゃん、めいちゃん、シロ
これで謎の場所に向かいます。
ー
起きたら、涙が出ていた。夢にうなされていたらしい。
あいつは…気配がないな。
どれだけ寝ていたのか、それとニュースが気になってテレビをつけた。
くだらないドラマも動きの遅いアニメも見ない。何でチャンネルが変わってるんだ!
失色症に関する情報を見せろ。
チャンネルを切り替えたタイミングで報道番組が映った。
いきなり速報だった。
『速報です。〇〇市に住む、〇〇ちゃんが行方不明との情報が入って来ました。〇〇ちゃんが行方不明になったのは昨日の事のようで、朝方、母親の目が離れてる隙に外出。そのまま1日経ちますが、未だ帰って来ていないようです。母親は〇〇ちゃんがいなくなっていることに気づき通報、警察は周辺住民に聞き込みをしている模様です。〇〇ちゃんは母親とよく周辺地域を散歩していたようでして、地形については覚えているようですが、あまりにも幼いため誘拐もしくは事故
に巻き込まれていないか現在捜査中とのことです。
〇〇ちゃんが無事に家族の元に帰ってくることを願います。
周辺地域にお住みの方、知っていることがありましたら情報提供をお願いします。
続きまして…』
俺が住む街だ。
失色症が関係しているかは分からないが、子供が行方不明になっているのは心が痛む。
昔、似たような事件があった気がする。
その時は…
いや、今はどうでも良い。どうせみんな消える。
忘れてしまって良いんだ。
俺は涙を拭き取った。
読んでいただきありがとうございます。
読み返して、英語の部分に誤訳を確認しまして、直しました。
《Hope is in Derspair》
↓
《There is Hope in Despair》です。
翻訳機を使って考えずしたことが仇となりました。
上記を「希望は絶望にある」と考えていたのですが、「希望は絶望している」と訳されます。
そのまま行ってやろうかとも思いましたが、明ちゃんの発言が矛盾していて馬鹿みたいに思われるのは可哀想だと思い、私が責任を負うことにします。
失礼しました。




