1122-HK-2
日記から一部抜粋。
*
巴さんはコンビニの店員にデレデレしていました。まぁどうでも良いことですが。
巴さんはコンビニ弁当を買っていました。人の食事事情に深入りするのはどうかと思います。
が、私は夜はどうするのかと尋ねてみます。
「コンビニかなぁ。」
巴さんは迷うことなくそう言いました。
一人暮らしの男性と言ったら、このような形になるのでしょうか?
「いや、俺は一人暮らしではないよ。おじさんと暮らしてるんだ。滅多に帰ってこないけど…。」
なんと、一人暮らしではなかったことも驚きですが、両親ではなく、叔父と暮らしているんですか。きっと、事情があるんでしょうね。どこの家にも。
「まぁ、こんなことになってるんだから、おじさんにも会えないのかもしれないなぁ。」
会いたいですか?と尋ねました。
「どうだろうな。会いたいような会いたくないような。」
煮え切らない答えでした。
その時、シロが巴さんに擦り寄りました。
どうやら、巴さんが持っている袋が気になるみたいです。
「お、なんだこれはお前の餌じゃないぞ!おい、離れろ、歩きづらい。」
シロは巴さんの足元をウロウロします。
巴さんは踏まないように千鳥足になりました。
「こら!あ、明ちゃんリードちゃんと持ってよ!」
ごめんなさい。手から抜けてしまいまして。きっとコンビニの袋を覚えてしまったんですね。巴さんのせいですよ?
「そ、そんなぁ。ごめんって、今日はお前が食えるものは買わなかったんだよ!」
「わん!」
シロは尻尾を振ってます。
これからは、コンビニの利用を控えた方がいいかもしれませんねぇ。シロがどこから来るか分かりませんよ?
「そ、それは…ど、どうしよう?」
巴さんは本気で困ってました。その顔、笑えますね。私はリードを拾ってあげました。
シロは今も擦り寄り続けます。
中身を見せたら落ち着くかもしれませんよ?
「本当に?大丈夫かな…」
ガサガサと袋の中から取り出した一つ目は唐揚げ串が入った紙袋でした。
「わん!わんわんわん!!」
「ちょ、うるさいうるさい!」
匂いで食べ物と分かったのかシロが吠えます。飛びかからんとする勢いはすごく、リードを持っていて正解でした。しかし、この子食べ物のこととなると元気になりすぎる。矯正しないといけませんね。
「唐揚げって与えても良いのかな?」
私の真逆なことを言い始めた巴さん。あなた昨日やめるって言ってませんでした?あれは嘘だったんですか?私騙されたんですか?
と、自問している余裕がなくなってきました。
シロの力が強すぎる。腕が疲れてきました。甘言に…甘言に………
「二個までだぞ。落ち着いて食えよ。」
「ばぐ、ばぐぐ。」
な、なんて事ですか!?巴さんがシロに唐揚げを与えてしまっているではないですか!
と、被害者ぶるのはやめます。私が許可しました。私、弱い子…。
私たちは道端にあった花壇の前に腰掛け休憩することにしました。
「明ちゃんも食べる?」
巴さんは食いかけの唐揚げ串を差し出してきました。手をつけてない唐揚げが一個だけ残っています。食いかけなんて要りませんよ。
「あ、じゃあ、アメリカンドッグがあるよ。そっちあげる。」
巴さんは袋をガサガサして中身が膨らんだ紙袋を取り出しそのまま手渡されました。
「食べて。それとも親子丼の方が良かったりする?」
私をなんだと思ってるんですか。そんなに食にガメツイ女だと?
「飼い主とペットは似るって…ごめんなさい。」
まぁ、こっちの方を頂きます。お金は…
「そんなの良いって。口止め料的な感じでどうか…」
何となくですが、それを認めると同じ手口をこれからも使われそうなんですけど。しかし、既にシロが貰ってしまっているので何も言えない。
巴さん、実は策士?と私は心の中で思います。
「あ、水もあるよ?飲む?」
尽くされてると勘違いしてしまいます。シロ、あなたがこの人を気に入ってるのはこれだけが理由じゃないわよね。
ペットボトル一本を渡されました。自分はいいのでしょうか?
「実はもう一本買ってあるんだ。だからどーぞ。シロお前も飲むか?」
「わん。」
やばいです、うちの犬が横柄に見えてきました。いや、私も似たようなものか。巴さん、召使が似合いますね。
巴さんが搾取されていく構図が不憫に思えてきます。してるの私とシロだけど。
アメリカンドッグうまい。
「入れ物は…これ使えばいっか。」
巴さんは最後の購入物を取り出した。
さっき言っていた親子丼ですね。それをどうするというのか。
カパッと蓋を開けた巴さんは丼の方をまず地面に置きました。
それに向かおうとするシロを抑える私。
つぎに、ペキッとペットボトルの蓋を開け、弁当蓋に水を注ぎました。
あ、蓋の内側を餌入れに見立てたのね。
シロに差し出す巴さん。
「飲みづらいかもしれんが、許せ。」
シロは渋々水を飲んでいました。ピチャピチャと舌で掬ってて、器用だと思いました。
「お前…遊んでないでちゃんと飲めよ。」
え?遊んでるんですかこれ?
あ、本当だ舌で掬っては戻してる。
なぜ私ではなく巴さんが気づいているんでしょうね。むむ!案件ですよこれ。
そんなもの初めてできましたが。
私は巴さんを恨めしく思いました。
「何?やっぱり欲しい?一口いる?」
だから違いますよ!どんだけ食べさせたいんですか!シロの食い意地もひどいですが。巴さんは与える意地がひどいです!矯正すべきです。
「ど、どうやって矯正するの、それ…」
知りませんよ。自分で考えてください。
「…美味しいんだけどなぁ。」
巴さんが親子丼を食べる横で私はアメリカンドッグを食べ終わりました。
ゴミはどうしようかと思っていると巴さんが袋を渡してきました。コンビニ袋です。中には既に串や紙屑が入ってました。
「ほえい、いえて。」
巴さんは箸を持った手で口を押さえながらしゃべります。モゴモゴと咀嚼しながら喋るので聞き取りづらかったです。意味はなんとなく分かりましたけど。
気が効くのに、残念な人ですね。
私はお礼を言ってゴミを入れさせてもらいました。
「ふぉんふぉに、ふぁべぼい…えっげほっ。」
飲み込んでから喋ってもらえません?
分かりにくいし、詰まってるし、咳き込んでるし、汚いです。
水を飲んで落ち着いてから喋ってください。
「…けほ、…ごめん。言い直すね。本当に誰も通らないなって。」
そうですね。
「本当に俺たちだけしか居ないのかな…」
知らないです。
「…なんか、冷たくない?」
みんなお家にいるだけかもしれませんよ。集団引きこもりです。
「あり得るのそれ?政府から発令されたとか?」
そうですねぇ。もしかしたら、この街に細菌がばら撒かれてみんな家に退避しているのかもしれません。それなら辻褄が合うでしょ?
「いや、それだったら俺たち大変じゃん。歩く感染源になっちゃうよ。」
大変ですねぇ。誰にも会えなくなっちゃいます。家族にも、友達にも。
「それは、悲しいね…。でも、治れば会えるんじゃない?」
治ったらいいですね。治らなかったら最悪ですね。死んじゃう可能性もあります。
「死……。」
巴さんが急に固まったように一点を見続けました。いえ、これは見ていませんね。心ここに在らずってやつです。
帰ってきてぇ巴さん
「あ、ごめん、何?」
急に考え込まないでください。しかも「死」についてとか…。不吉ですよ。私たちは大丈夫です。現に今、私たちピンピンしてるじゃないですか。ね、シロ?
「わ…ゲフゥ……ん。」
大きなゲップ。水をちゃんと飲んだようです。お前は平和よね。
「はは、こいつ本当に自由だよな。」
困ったやつです。愛らしさが最も憎らしいですね。
「そうだね。」
巴さんは私を見てきました。何か言いたいことでもあるのでしょうか。
「君とシロと一緒なら頑張れる気がしたよ。」
何言ってんですか?やめてください。いきなりなんなんですか。頭壊れたんですか?
「はは、そうかも。」
バカ言わないでください。あの女性店員さんがいたでしょ。それに夜のバイトの人もいるとか。それに…。
とにかく、悲観は良くありません。
「ごめん。」
まったく、早く食べちゃってください。待ってますから。
「うぃす。」
なんですか、その腹立つ返事。
「え?可愛くない?」
まったく。そもそも似合ってません。誰の真似ですか。
「…秘密。」
どうでもいいですが。まだなんですか?私たち行っちゃいますよ?
「急に冷たい。すぐ食べます。」
巴さんは残りを掻き込みました。半分くらい残っていたのが、すぐに消えてしまった。
口大きいんですね。
「もぐもぐ…ごくん。ご馳走様。」
巴さんは合掌しました。私もそれに倣います。シロは伏せました。目を閉じてます。真似してるのでしょうか?
「じゃあ、行こうか。」
と、巴さんは立ちあがろうとした時、ポケットから何かが落ちました。
小包?
落としましたよ。
「うえ!?本当だ気づかなかった。」
巴さんは焦るようにソレをポケットに、素早くしまった。
大事なものだったのだろう。小包にして持ち歩くくらいに。
何でしょう、私気になります。
ここはシンプルにソレは何ですか?と聞いてみました。
「…ひ・み・つ?」
行け、シロ!
「わん!」
「ああ!?」
シロは器用にポケットにあったソレを咥えて盗ってきました。お前は食い意地以外は素晴らしいね。
あ、違う。これおもちゃにしようとしてない?あれ、小包の結び目緩まってない?
ちょ、シロ!ぶん回すのやめ…て……
「ああ!!」
結び目が目の前で解けました。
手拭いがシロの口から垂れています。中身は大丈夫でしょうか。これはやっちゃった?
「シロ!咥えてろ!」
巴さんは叫びました。シロがびっくりして口を開いてしまいます。
「あああ!!!」
カンッて音の後にコロコロという音がしました。
三者三様の表情をしました。しかし、声を上げるものはいませんでした。
巴さんは目を見開き、私は口を開け、シロは首を傾げています。
見えない硬いものが転がっている音だと認識しました。
音がしなくなってから、巴さんは膝をつき手を地面に着けました。
これはやってしまいましたね。
「ああ…」
シロは私の後ろに隠れています。まぁ、私が首謀者ですしね。罰されるの私の方でしょう。巴さん、ごめんなさい。
「いや、いいんだ。…あれ君の家で見つけたコーヒー缶なんだ。…多分だけど。」
巴さんは悲しそうではあるものの、怒ってはいませんでした。それが余計に罪悪感を募らせました。
「昨日、飲んでた缶を、持って帰るのを忘れて帰っちゃたんだ。それで取りに戻ったら、見つからなくて、でも、手探りで探したら見つかって…見えてはいなかったけど。」
あの硬い音は缶が落ちた音だったんですね。透明な缶。ガラスは透明ですが、形は見えますよね。でもあれは形すらも見えなかった。
「大事なものではなかったんだけど、すごく気になってて、形が分かるように包んでたんだ。」
何でソレを持ち歩いたんですか?悪いのは私たちですけど、保管しておけば…
「そうだね、そうしてればよかった。もしかしたら君のものかもしれないかと思って、勘違いだったんだ。」
探しましょう。まだ近くにあるはずですよ。手当たり次第探せば何とか見つかるはずです。
「わ、分かった。」
もしかしたら、街の人が消えたことと関係あるかも知れません。巴さんが見つけた手がかりですよ。何でそんな大事なものを持ち歩いたんですか!もう。
「あれ?さっきまで悪いのは自分だって…」
早く見つけて帰りますよ!
「はい。」
2時間くらい探しました。結局見つかりませんでした。
「全然見つかんないな。」
透明缶、これほどまでに厄介だとは思ってませんでした。
30分くらい、二人で頑張れば見つかるだろうと考えてましたが、やばいですね。
「諦めようか…」
何言ってるんですか、巴さん!もしかしたらキーアイテムかも知れないですよ?ソレがなければ話が進まない可能性があるんですよ?ソレを見つけずのままにしてどうします!
「ごめんなさい。」
まったく、真面目にやってください。
あの缶に特徴とかないんですか?
「特徴…?何があったかな…。黒っぽい?」
馬鹿なんですか?透明になっているのに色の説明してどうするんですか!
他のやつ!捻り出して下さい!
「え〜、透明なのに水は透けないとか…?」
具体的な説明を。
「えと、さっき言ってたガラス。それみたいだよ。」
詳細な説明を。ガラスしかわかってませんが。
「ガラスって水を入れたらどれぐらい入ってるかってガラスを通しても見えるだろ?あの缶も同じように中に入れたものが見えるんだ。」
ほうほうそれで?
「で、逆に外側に水がついてるとすると形そのものが浮き上がってくるのを今日の朝発見したよ。」
ほうほう…。なぜそれを早く言わなかったんですか!!知ってたら、2時間も探してませんでしたよ!!
「え、マジで!?どうすれば。」
水を使えばいいでしょうが。あなたが買ってきた。
「あ!…全部飲んじゃった。」
私がさっき少し飲んだお水は9割残っていました。
良かった、これで終わる。私は少しずつ周辺一帯に水を撒いてみました。
びちゃびちゃびちちちびちゃびちゃ…
今一瞬だけ音が違いましたね。
見れば、水が一箇所だけ浮き上がってます。有りましたー!
「有った!良かった!」
巴さんも同時に確認しました。ガッポーズで喜んでます。子供みたいですね。
私は透明缶を手に取り、巴さんに手渡しました。
今度は落とさないでくださいよ。
「うん、気をつけるよ。」
もうソレ探しはこりごりですね。シロ、悪戯しちゃダメよ?
「わう?」
「明ちゃんが命令してたよね。」
忘れてください。それより疲れました。残りの水は飲んでもいいですかね?
「あげたもんだし、どうぞどうぞ。」
では、遠慮なく。
巴さんはその間に風呂敷に包もうとしますがなかなかうまくいかないようです。
手先は不器用なんでしょうか。結び方が緩いせいで解けたのではないかという疑念が浮かんできましたよ。
まあもう見つかったのですし、飲みきっても良いですよね。
ゴクン。
「あ!転が…」
不吉な声が聞こえましたよー。私の喉は鳴りましたよー。もう嫌ですよー。
結局、また探すことになりました。
水が無くなったので、今度は花壇の土を周辺にばら撒くことにしました。
罪悪感なんて言ってられない。
幸い、今度は1時間ほどで見つけることができました。
…幸い?
「ご、ごめんなさい。」
私が結びます。手ぬぐいを渡して下さい。
「はい。」
手ぬぐいは汚れても構いませんね?
「はい。」
手はどろんこ状態です。多少落としてはみましたが、完全には落ち切りませんでした。
簡単には解けないように、入念に結んでおきます。キュッキュッと。
空は夕暮れに染まっていました。時間が流れている証拠ですね。
私は巴さんに包みを渡そうとしました。
巴さんが取ろうとしたときに力を込めます。
もう今度こそ落とさないでくださいね?いいですか?
「はい!」
私は巴さんに渡すことにしました。今度落としたら承知しません。
肝に銘じて下さい。
「分かりました。」
それでは帰りましょう。とても長かったです。この帰り道。
「申し訳ありません。」
いえ、最初の一回はこちらにも非がありますのでね。おあいこ、という事にしてあげます。
「ありがとうございます。」
では、行きましょう。
私たちは、ようやく歩くのを再開しました。
十分もせずに着きました。そりゃコンビニまでの道中ですもんね。無駄な時間が多かっただけです。
巴さんは門の前で立ち止まりました。
「じゃあ、帰るよ俺。」
手を洗ってから帰られては?それに喉が渇いたでしょう、お茶を出しますよ。
私は優しく言います。
「いや上がるわけには…」
早く入って下さい。
私はすぐさま手を洗いに行きたいのです。
今度は強めに言ってみました。巴さんの焦ったさが少しイラついたので。
「は、はい!」
巴さんは門を自分で開けて、中に入ってきました。そのまま私の元まで歩いてきます。
ほう、強めに言えばすぐに従ってくれるのですか、今度からそうしましょうか。
私は玄関のドアノブを引きました。ガチャとドアを開け中に入ります。巴さんとシロも続きました。
「ただいま、戻りました。上がって下さい。」
「はい、お邪魔します。」
巴さんは緊張した表情をされていました。緊張するほどのことでしょうか。手を洗いに入るだけで。
「おかえり。あら、お客さん?」
後ろから聞き慣れた声がしました。私は巴さんに紹介します。
「私のお母さんです。」
「え?」
「こんばんは、明の母の美穂です。えっとどちらさん?」
お母さんは落ち着いていますね。私はお母さんにも紹介しました。といっても、巴さんの説明はどうしたらいいでしょうか。シロを介した友人という事にしましょう。
「シロと遊んでくれている。椋梨巴さんです。手が汚れたので洗ってもらおうと入ってもらいました。」
「そう、娘とうちの犬がお世話になりました。どうぞ上がって下さい。」
違和感なく伝わったようですね。これで巴さんはこれから自由に家に上げることができるようになりましたね。
「え?え?」
巴さんは何かが不明なようで、慌てています。間抜けみたいです。私は優しく教えてあげる事にしました。
「巴さん、洗面所はこっちです。お母さんはシロの足を拭いてあげて下さい。」
「分かったわ。」
「えー?えー?」
「こっちですよー、巴さん。」
「お邪魔、しますー?」
一応の挨拶は出来たみたいですね。手を引っ張って洗面所に連れて行きます。もう、子供じゃないんですから、自分の意思でついてきて下さいよ。
巴さんは手を水に当てて固まってます。私は洗い終わったので、タオルを置いてあげました。
「巴さーん洗ってくださーい。」
「あ、うん。」
巴さんは虚な目で自分の手を見ていました。
「もう何も信じない。」
どうしたのでしょう。何かに打ちのめされたような顔をしています。さっきまで楽しそうにしてたのに。分かんないなぁ。
「洗い終わったら、居間に来て下さい。ここを出たら、左に行って階段横を左です。」
「はい…。」
返事に覇気がない。そんなに缶探しで疲れたのでしょうか。まぁ、私も疲れました。もうほんとに落として欲しくはないですね。
お茶を飲みに台所へ。居間と隣接しているので来たらすぐに分かります。
冷蔵庫を開け、お茶をコップ二つに注ぎます。
あ、誰か入ってきましたね。
「明、帰ってたんだね。お客さんが来ているようだが?」
お父さんでした。まだ、巴さんには会っていないようですね。あ、噂をすれば何とやら、巴さんが居間に顔を見せました。
「えー?やっばり…」
「君がお客さんだね?ようこそ、明の父の秀人です。よろしく。」
「あ、椋梨巴っていいます。お邪魔しています。」
今度は自分から自己紹介してくれました。私の労力が減ってよかったです。そのタイミングでお母さんも入ってきました。
「巴さんはお夕食どうするの?もしよかったら食べてもらえないかしら。作りすぎて余っちゃうの。」
「ああ、それはいいね!君、ぜひ食べていってくれたまえ。美穂さんの料理は格別だぞ?」
「まあ、秀人さんたら。褒めても、お夕飯が増えるくらいしか出来ないわよー?」
「な…!君、絶対食べて行きたまえ!(本当に余る程に作ってしまうんだ美穂さんは。美味しさは保証するから、どうか減らすのを手伝ってくれ!)」
「は、はぁ。いいんでしょうか?」
「歓迎だとも!な、美穂さん?」
「ええ、明も良いわよね?」
何やら、話が勝手にとんとん拍子で進んで行きましたね。お父さんが巴さんに何か吹き込んでいましたが、内容は大体察することができます。残飯処理はお父さんとシロですからね。努力しているのでしょう。
私に異論はありません。先に食べ物を貰ったのはこっちですし、食べていくのを止めるつもりはありません。
さっきのやつの話がしたりないと思ってましたし。
巴さんが我が家の食卓に加わりました。
*
日記はこの後も続いている。
日記を読む手を止めたその人物は、虚空に向かってその名を呼んだ。
「変わったわね、明。」
その人物は笑っていた。嬉しそうに日記を眺めている。
日記がようやく面白くなってきたのだ。今まで退屈だった。
「今度はうまくいくと良いわね、明?」
続きを読もう。未来は見ない。
その人物は長い日記を読み続ける。
読んでいただきありがとうございます。
2022/10/13 タイトル変更
894-HK-2
↓
1122-HK-2
2023/02/26
一分変更。




