閑話 巴が見たもの そしてその続き
視界が開けると、何もなかった。
右も左も、後ろにも何もない。
上も下も、似たような感じ。
でも、その小さな足は確かに立っていた。
立つことができていた。
ゆっくりと視界が前に進んだように見える。
でも景色は一向に変わらないので、止まっている時とさほどな違いはない。上下に少し揺れて見えるだけ。
《ここどこぉ?》
女の子の声がした。すごく近くに聞こえた。
《おとうさん?おかあさん!》
両親を探す声が響いて消える。静かになった時、視界がぶれる。いきなり、後ろを向いたように見える。右、左。先ほどと全く変わらない景色だった。
《ここどこぉぉ!ねぇええ!》
キィーンと響く声。また静かになる。突然、視界がぼやけた。啜り泣く音も聞こえる。
《おどおさぁあん、おがあさぁぁああ……》
女の子の泣いている声が頭の中で響き続ける。
《 はこごだよぉぉ!みづけてよぉぉ!!》
「…………、……………ん!…………もえ………!」
そこで女の子の声と、雑音が混ざり、視界が薄れていく。
何もない景色から、目の前に女の子が立っている景色に切り替わった。この子は……。
「巴さん!」
女の子が名前を呼んだ。それは確か、俺を表した名前のはずだ。あー、記憶が流れてくる。この子を思い出した。
明ちゃんが俺を呼んでいた。
ー
《どうしたの?》
声がして、振り返る少女。見ても何もいない。
《泣いているの?》
見えない何かがそこにいて声だけが聞こえてくる。
少女は怖くなって目を逸らした。見えてはいなかったが、何かがあるのは感じたから。
《迷子かなぁ?》
逸らした先でも声がした。少女は尋ねた。
「あなたはだれ?どうしてみえないの?」
《イロって呼んで。見えないのは悪い神が見させないようにしているからだよ。》
「かわいそうだね。」
《……おいで、君のお家まで送ってあげるよ。》
「ほんと!?おうちがわかるの?」
《優しいお母さんと、優しいお父さん。それに大好きなお友達がいる所に送ってあげる。手を出してごらん?》
少女が手を伸ばすと、何かに触られた。
手を握られた感触があり、お母さんの手を思い出した。
少女も握り返す。
「あなたのおてて、みえないけどあたたかい。」
《そうかな。そんなこと初めて言われた。》
少女はイロと歩いた。
長い長い見えない道をただ歩いた。
気づいたら、家があった。
《これは君のお家だ。ここで幸せに暮らしていくといい。》
「ここ、わたしのおうちじゃないよ?」
《これから慣れていくさ。それと、君の名前は「めい」だから覚えておくといいよ。》
少女はそう言われて、名前を反芻した。
「めい……めい。わたしはめい。」
《よし、じゃあイロは行くね。幸せな夢を、めい。》
イロが手を離したようで、感触が無くなり、声も聞こえなくなった。
めいは目の前の家の扉を開けた。
家の中には母親と父親が待っていた。
「「おかえり、めい。」」
「ただいま。」
キイーと扉が閉まった。
少女は中島めいとして幸せに暮らした。
3日目の最後に巴が見た映像?とその続きの話です。
巴は後ろの話は見ていません。
読んでいただきありがとうございます。




