1月4日 石の日
石だ。
絶対に石だ。
目の前にあるのは単なる石のはずだ。
デスストーンと言われた、その石はある神社の端の方の鎮座していた。
言われるまで気が付かないが確かに言われてみると独特の圧力を感じた。
『その石を触ったら半年以内に死が訪れる』
そんな噂が流れ始めたの1年前くらいだった。
その石を触ったとある有名人が翌日に死んだという話が急に流れ出した。
実際にその有名人はその神社の境内で死んだと瞬くワイドナショーを騒がせていた。
それ以来、様々な噂が流れた。
『友達もその石に触って4日後に死んだ』『絶対に触ってはいけないと一部では有名な話だ』『あの石の所為で死んだ人間は13ケタ入る』
尾ひれにはひれが付いて制御が出来なくなっていた。
その雑音を消すには根本を叩くしかない。
そして、造園業を営む俺の元に石の搬出の依頼が舞い込んできた。
コネも何もない俺の元にこの仕事が来る前に散々とたらい回しされてきた。
最初は良い仕事だと飛びついたが、今まさに後悔をしていた。
法外な値段で依頼を受けたので、直接手は下さずに無理やり後輩を連れてきて手伝いをさせている。
気休めかもしれないが、直接手を下すのは恐ろしかった。
何事もないように必死に祈った。
まず、問題の石にそばにある邪魔な小石をどかす。
ついでに辺りも綺麗にしてほしいとの事だったのですべて廃棄するためにトラックに積み込んだ。
次に問題の石だ。一人で持ち出せそうにもないので大人が3人くらい慎重に持ちあげた。
「痛っ」
「どうした。」
作業員の声に俺は大袈裟に反応した。
「大丈夫です。すこし石が尖っていたのでそれが刺さって。」
「そうか」
ほっと胸をなでおろした。
それから大きな問題は起こらなかった。
作業も一段落し、あとは石を持ち出すだけとなった。
「おーい!!」
振り返るとそこに宮司がいた。
「ちょっと待ってそれどうするの?」
「いや。持って行ってくれって。」
「それは幸運の石だよ。」
「幸運の石?」
「そう。ラッキーストーンってやつ。」
「じゃあ、もっていくのは?」
「それは……あれ?」
宮司は辺りを見渡した。
「もしかして、ここの石どこかにやった。」
「はい。辺りも掃除しようと思って。」
それから、宮司と俺達で廃棄するために積み込んだ石を探したがそこにはそれらしい石はなかった。