1月3日 悲恋だからこそ美しい、駆け落ち
「この命など全く惜しくない。」
「私もそう。」
君の瞳には俺がいて。俺の瞳には君がいるだろう。
それだけで世界は美しかった。
微かに薫るアルコールのにほひから悠久の繋がりを感じる事が出来た。
俺は瞼が降りていく中世界と別れにつげた。
「さようなら。」
「また逢いましょう。」
彼女の声に目を移した。
彼女は美しく俺は笑みを浮かべていた。
「今のさよならは君にじゃないよ。」
「じゃあ、誰にいったの。」
「この世界にだよ。」
「よかった。じゃあまたね。」
「うん。また……」
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目の前には彼女がいた。
不思議な事に声が出ない。
しかし、彼女がいるだけで満足だ。
俺は幸せな気分に浸っていた。
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寒さから目を醒ました。
しばらく状況は飲み込めなかった。
隣にいる彼女を起こそうとして気が付いた。
『心中が失敗した。』
アルコールの量も薬の量も問題なかった。
しかし、何故か失敗した。
「どうしたの。」
物音に反応してか彼女も起き出した。
完全な失敗だった。
情報では間もなく俺たちは実家に戻される。
だからこそ心中をしようと思った。
ートントン
ノックの音が聞こえた。
お互い顔を見合わせた。
このままどこか行ってくれることを祈った。
『おーい。聞こえるか。いるのはわかっているんだ。』
聞いた覚えのある声だ。間違いなく俺たちを連れ戻しにきたんだろう。
『お前たち勘違いしているようだから。
言いに来たんだが、お前たちはもう俺達とは関係ない。
お前たちの言葉で言うなら自由の身だ。
その代わり俺たちの名前を二度と使うなよ。』
ドアの外からの声のはずが嫌に響いた。
隣にいる彼女もみるからに驚いていた。
その姿を見て少し美しくないなと思った。