2話 俺は常に強い者の味方だ、ってか?
退屈な静寂は覆面の武装集団によって打ち破られた。
中学生達に黒い銃を突きつけるテロリスト達。クラスメイト達は、あるものは恐怖に椅子から転げ落ち、あるものは泣き喚き、あるものは固まったまま失禁していた。先生もぽかんと口を開けて両手をあげている。
まるでパニック映画のようなその様。
生存は絶望的。
だというのに、何故か笑いが込み上げてくる。
「滑稽だな」
「あ?」
あっ!やべ。
テロリストの一人が俺を睨みつけ、つかつかも席のところまで歩いてくる。
思わず口に出ちゃってましたか。
「滑稽ってのは俺達の事か?あ?」
「クラスの間抜けな連中を嗤ったつもりだったんだが、つっかかってくるってことは自分が滑稽だという心当たりでもあるのか?」
「なんだとガキ!!ぶっ殺す!!」
銃口が俺に向けられ、引き金が引かれる。俺が反射的に避けると、銃弾は後ろにいた陰キャの田中の頭蓋骨を粉砕した。
田中は間抜けなダンスを踊り、床に倒れる。
すまん田中。でもお前も俺がイジメられてるとき、自分がイジメられないように目を逸らしてただろ?俺も自分が死なないように弾を避けただけだ。これでおあいこだな。よかったね。
「なっ、銃を避けやがった!?」
どよめく武装集団。
これはチャンスだ。俺はネトゲじゃネゴシエーターと呼ばれていた。そのスキルを発揮するときかもな。
「運が良かっただけだ。落ち着けよ」
俺は水筒で麦茶を飲む。ほんのりと鉄の香りだ。
「ところでお前ら、本当にこのテロが成功すると思ってんのか?」
「あたりまえだ!俺達には神がついてる!死すら恐れない同志達も居る!!」
「じゃあ聞くが、この学校の生徒や教師の数は?防火扉の位置は?死角は?身を潜められる場所は?外部につながる連絡手段はいくつある?」
「なっーー!?」
「まさか敵の事を何も知らずに攻めて来たのか?」
俺はわざとらしく肩をすくめてみせる。テロリストは青筋を立てて歯軋りを繰り返す。こんなガキの挑発に乗るなんて小物だな。
「てめえ、言いたい事があるならハッキリ言いやがれ!!」
「俺が仲間になってやるよ」
「なっなにい!?ふざけてんじゃねええ!!」
「待て」
リーダー格っぽい男が雑魚テロリストを制止する。
「アンタはそこの雑魚よりかは話が通じそうだ」
「テメエを仲間に入れて、俺たちにどんな得がある?」
「さっき話したことさ。俺はこの中学校の構造をすべて把握している。ぼっちなりのスキルってやつだ」
「ほう?だが何故そんなものをわざわざ調べる必要がある?テロリストの襲撃に日々備えていたとでもいうのか?」
「俺はイジメられているんだ。俺は太極拳を独学で練習しているから、別に本気で喧嘩すれば負けないと思う。だが時間と体力の無駄だ。体育馬鹿から逃げたり、安全に飯を食ったりするには、頭が必要なんだよ」
コンコン。と頭を叩いてみせる。
「ククク……それでか、てめえ、その歳とは思えねえくらい眼の奥が濁ってるぜ。まるで深淵だ。二、三人殺してもなんとも思わねえ、そんな面だ」
「余計なお喋りが過ぎるぜ?」
「ッ!!」
クワッ!!
俺の眼光にテロリスト共は後退りする。
おいおい。そんなに濁ってるのかい?俺の眼は。ちょっとばかし傷ついたぜ。
「だか何故そんなに俺達の仲間になりてえんだ?」
「考えるまでもないだろ。いまこの教室には銃で武装した大人が20人と中学生のガキ20人。どちらが生き残る確率が高いかは明白だ。俺は常に強い者の味方なんでね」
「ククク……気に入ったぜ。いいぜガキ!その度胸気に入った!テメエは今から『アポカリプス・ジャッジメント』のメンバーだ!!」
こいつらそんなチーム名だったのか。
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