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第54話 断罪の始まり

 王城内の応接室では、マリアベルが腰掛ける長椅子の向かい側に、レティシアを隣に座らせたジルベルトが、彼女の腰を抱き寄せ自分の足は組んで腰掛けていた。

 一人掛け用の椅子にはアルフレッドが腰掛け、さらにその周囲を囲むようにジルベルトの側近候補である生徒会のメンバーが立つ。

 マリアベルは、この状況に苛立ちを隠せてはいなかった。

 そんなマリアベルを、何も言わずに眺めていたジルベルトは、くくくっと、笑い声を溢す。

 そのジルベルトの様子に、マリアベルは自分が馬鹿にされているかのように感じ、さらに苛立ちが高まった。


「何がおかしいのですか!?」


「ああ、これは失礼

 何か言いたい事があるなら、王女から先に話していいですよ?」


「わたくしよりも、ジルベルト様の方がわたくしに説明しなければならない事が、沢山あるのではないですか!?」


「私が、ですか?」


「そうです!

 話が違うではないですか!!

 然る場で、わたくしがジルベルト様へお伝えした事に対するお返事をしてくださると、仰有っていたじゃないですか!

 それなのに、先程の茶会での茶番はどういう事なのですか!?」


「王女が私に伝えた事とは、『皆が幸せになる為へ最善の選択する時……』と、いう事でしたか……?」


「そうですわ!

 こんな選択はあってはならないですわ!

 あんな風な茶番の為に、折角のお茶会が台無しになってしまいましたのよ!?

 それどころか、レティシアさんが茶会へ出席されるなんて、わたくしは聞いてはおりません!

 何より、何故レティシアさんをお隣に座らせていらっしゃるの!?

 その場所は、レティシアさんには相応しくはないわ!」


 マリアベルの今の言葉に、ジルベルトが纏う空気が一瞬で急降下した事を、この場にいるマリアベル以外の人間は皆気が付いた。

 そして、マリアベルの言葉はジルベルトのつのっている怒りにさらに拍車をかける。


「茶番も何も、私は、自身の婚約者については変える気など、初めから一つもない事を先程皆へ伝えました

 そして、何より我が国でおかしな動きをしている者がいる事を、未来を担う者達である生徒達に知らせましたが?

 その事に、おかしな点は何もないと思いますし、選択も間違ってもいないと思いますけれど……?」


「わたくしがお伝えした事と、全く違うではありませんか!」


 マリアベルが荒々しい声で怒りを露にすると、今までとは違う低い声が返ってきた。


「人が大人しくしていれば、身の程も弁えずに、キャンキャンと騒がしく言い立て、忌々しい……

 腹立たしいにも程がある……」


「え……」


 人が変わったかのような冷たい声で、鋭い視線を自分へ向けるジルベルトに、マリアベルはたじろぐ。


「マリアベル王女、貴女には話して貰わなければいけない事が多々あるとお伝えしましたが、なかなか話してくださらないようですので、話したくなるように会って頂きたい者がいるのですよ」


 ジルベルトはそう言うと、手を上げ合図を送った。

 その合図に、マリアベル達がいる応接室の扉が開く。扉の前にはオスカーの兄でプリシラの婚約者であるサイモンが、ある人物を連れて来ていた。

 その人物を見たマリアベルは驚愕する。


「カート……!?」


「……マリ……ア………」


「カートあなたっ!

 何、その顔色!?

 体調が悪いっていう話は、本当だったの!」


「それは───」


 扉の前にいた人物は、マリアベルの従兄妹のカーティスであった。

 マリアベルの言葉に答えようとカーティスが言葉を発しようとした時、ジルベルトは手を彼に翳す。


「ぐあっぁぁぁぁぁっ!!!」


 その瞬間、突然苦しみ出したカーティスの姿にマリアベルは、狼狽えた。


「な、何っ!?

 カート!? どうしたの!?」


 そんなマリアベルへ、ジルベルトは笑みを向ける。


「彼は、我が国で愚かにも罪を犯しましてね

 その為に、シャルテ(貴女の国)と、昔に交わした我が国で罪を犯した貴国民は身分に関係がなく我が国で拘束、尋問を執り行えるという条約通り、拘束しているのですよ」


「罪……?

 拘束って、カートは何も繋がれてなんて……」


「拘束にも幾つか種類がありましてね、他国の公爵家のご子息にまさか平民の罪人にも使うような、金物の拘束具を使うのも憚れましたし、傷が付いてしまってもいけませんので、傷が付かないように拘束しているのですよ

 その拘束の方法は……

 心臓に魔術の陣を施し、こちらが伝えた事に対して反した場合は、その陣で心臓に圧をかける仕組みになっています

 それは、多少苦しみは伴いますが、傷はつきませんのでご安心ください

 難しい術でもなく、少し魔力が高ければ使える術であって、特殊なものではありませんよ?

 貴国に使える術者がいるかはわかりませんが、我が国には私以上の魔力の保持者は多くいますのでね

 今は、こちらの許可無しに発言する事を禁じていたのにも関わらず、早々にそれを破ろうとしたので、圧を掛けたという事です」


 ジルベルトが穏やかな口調で笑みを向けながら話す内容は、顔を歪めたくなるような内容であり、さらにオーガストラ王国とシャルテ王国との力の差を伝えるものでもあった。


「心臓に拘束の陣なんて……

 こんな事……

 許されるとでも思っているの!?

 カートはシャルテ王国の王弟であるイェドヴァル公爵の子息で、王位継承権も持っている存在なのよ!?」


「初めに、他国で許されない事をしたのは彼でありますよ?」


 ジルベルトから、冷たさしか感じられない鋭い視線を向けられたマリアベルは、ビクリと身体を揺らす。


「………っ!?」


 ジルベルトは、隣に座るレティシアをさらに自分の傍に抱き寄せると、手を持ち上げた。

 そして、自分の指を彼女の指へ絡めたまま、自分の唇へ絡めた彼女の指を押し当てる。


「この男は、何よりも大切な私の婚約者であるレティシアに対し、壊して自分の人形にする等という、卑劣な事を考えた

 それだけで死にも値する

 だが、それだけでなく、あろうことか彼女の居場所を探る為に、彼女の親友である我が国の侯爵令嬢を拐い、拉致し、危害を加えるというおぞましい事が……あったのですよ

 シャルテの王位継承権を持つ者は、そんな卑劣で野蛮な事をされるのですね?」


 ジルベルトは足を組み直すと、さらに話を続けた。


「それだけでなく、色々と話してくれましたよ?

 我が国で何をしようとしていたのか、とか……

 ねぇ? マリアベル王女、知らない素振り等せずに、ご自分の口から話した方が身のためでは?」


「……………」


 ジルベルトの、笑みは浮かべているが目の笑っていない鋭い視線に、怯みそうになりながらも、マリアベルはキッと彼を睨み返した。

 その彼女の様子に、笑みを浮かべていたジルベルトの表情は一変し、顔から笑みを消す。


「こちらが、いつまでも優しくしていると思うな

 貴様達が、企てた事は国家間を揺るがす重罪だ」


 今までとは違い、さらに低い声に、冷徹な視線を向けるジルベルトの姿には、マリアベルが彼へ気を向けた要素は何一つなかった。


ここまで読んで頂きありがとうございます!

評価ポイントを頂き感謝です!

ブックマークもありがとうございます!励みになっております!




さて、今日のお話で今年の最後の更新となりました。

こんな拙いお話に、毎回足を運んでくださり本当に感謝で一杯であります。

お話の組み立てに悩む事も多々ありましたが、皆様の応援やお言葉、そして閲覧して頂いた足跡に励まされ、今年も頑張る事が出来ました!


突然の不安定な情勢に、色々とあった一年でしたが……

来年は少しでも皆様が穏やかに過ごせるような一年になって欲しいと強く思います。

こんな情勢ですが、皆様も少しでも良いお年を過ごせる事を願っております。


また、来年もどうぞ宜しくお願い致します!

更新ペースが、暫く崩れますが少しずつ更新していきたいと思っておりますので、最後までお立ち寄り頂ければ嬉しいです。


令和二年 12月31日 一ノ瀬葵


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