第50話 尋問
今回短めであります……
王城内のある一室には、限られた者しか近付かないよう伝えられ、音を遮断するための魔術を施されていた。その部屋の中には、数人の姿があり、中からは苦しむような叫びが聞こえてくる。
「がはっっ!!」
「どうだ?
肺を直に凍らされる苦しさは?
まだ、話す気にはならないのか?」
魔術で拘束されたカーティスを、椅子に足を組んで腰掛けながら、カーティスが苦しむ様子をジルベルトは眺めていた。
「こ……、こんな事をして……問題になると思わないのか!?
僕を誰だと思ってる!!
僕は、シャルテ国王の甥だぞ!」
「だから、何だと言うのだ?」
カーティスは、ジルベルトのカーティスの立場など価値がないといわんばかりの返しに、さらに声を荒げた。
「なっ……、お前はこの国の王太子だろう!?
そんな立場の人間が、他国の王族と同等の立場の者に、こんな行為をする事は許されると思っているのか!?
シャルテと戦になってもいいというのか!?」
カーティスの言葉に、ジルベルトは嘲笑を浮かべる。
「お前に、国を巻き込む戦になる程の価値があると?」
「なっ!?」
ジルベルトは足を組み直すと、カーティスを見据えた。
「何も知らなく、頭が悪いようだから幾つか教えてやろうか……?」
ジルベルトは手を翳すと、彼の手の前には魔方陣が現れる。
その状態を維持したまま、ジルベルトは言葉を続けた。
「先ず、何代か前に我が国とシャルテは、お互い自国で罪を犯した相手国の犯罪者を拘束、尋問するは事は自国で行えるという権利を結んでいる
それが、どういう事かわかるか?
他国で問題を起こせば、その国のやり方で拘束、尋問はやっていいという事だ
そして、それは身分に対して例外はないとの記述もある
それでも一応、お前が罪を犯して拘束された事は、既にシャルテに伝えてあるんだよ
だが、その処遇について温情を求める声もなく、開戦しようかという動きもシャルテにはないようだが?」
その言葉が終わるのと同時に、ジルベルトは陣を発動させる。
先程からジルベルトがカーティスに使っている術は、氷の属性の術で、身体に傷が残らないよう、身体の内部にある臓器を一定時間、凍る程の冷気を直に感じさせるような術であった。
「ぐはっっ!!」
「私が自ら尋問するという事は、殆どないのだけどね?
だけどお前だけは、私自らで聞きたい事が沢山あるのだよ
早く、こちらの問いに答えてくれるかな?
私も暇ではないのだけどね?
それに、怒りで手元が狂ってしまいそうだよ
間違って痛めつける以上の事をしてしまったら、大変だろう?
ねぇ?
私の周囲へ鈍間な鼠を放ってみたり、我が国の侯爵家令嬢を拉致し、侮辱的な数々な振る舞いをしただけでなくてさ……
貴様は、とんでもない事を考えた
私の婚約者を、どうするってその汚い口で言ったのだっただろうか?」
術の強度が、じわりじわりと上がっていく都度、カーティスが痛みと苦しさで叫ぶ声が部屋の中に大きく響き渡る。
その時、ジルベルトの後ろにいたアランが止めに入った。
「それ以上はまずい
本当に殺してしまったり、障害が残ったら、流石にシャルテも黙ってはいないだろう?」
そのアランの言葉に、ジルベルトは術を弱めた。
「本当に忌々しい……
身分に守られて、助かるなんて……」
ジルベルトは、立ち上がりカーティスの側まで行くと見下ろした。
カーティスは、痛みと苦しさからか言葉すら発する事が出来ないでいる。
「この国でのお前とマリアベル王女の行動で、お前が知っている事全てを隠さずに言え」
殺気を含んだ視線を落としながら、ジルベルトはカーティスにそう告げた。
◇*◇*◇
カーティスの尋問の後、あまり良い気分でないままジルベルトが私室へ向かう。
私室の前ではアルフレッドが立って待っていた。
「アル? レティの様子は?
何故、レティの傍から離れているんだ?」
「兄上……
レティに、今の現状を話した」
アルフレッドのその言葉に、ジルベルトはピクリと顔を僅かに揺らす。
ジルベルトがそのまま無言でいる様子に、アルフレッドは言葉を続けた。
「レティも当事者だ
レティを守りたい気持ちはわかるけど、伝えるべき事は伝えなければいけないって俺は思うんだよ!
でなければ、兄上がレティを認めていないんじゃないかと、あいつが変に勘違いだってしてしまう」
「……お前なら、話してしまうと思っていたよ」
「兄上自らが、カーティス·イェドヴァルを尋問している事は言っていないけど……」
その言葉に、ジルベルトはため息を吐く。
「言うなら、全て言えばいいんだよ
変に隠し立てする必要はない
まぁ……
お前の、私を思っての優しさからであるのだろうけどね?」
「それは……」
「お前の言う通りだな
私からも話すよ
レティは、私が一番信用している相手であるからね」
「…………」
「アル」
「兄上……?」
ジルベルトは、アルフレッドを真っ直ぐ見据え口を開いた。
「お前は、私のあのような姿を見て、私がレティシアに相応しくないと思っているかもしれない
だが……、もう二度とあのような失態はおかさない
二度と彼女を手離すこともしない
私にとって、お前は大事な弟だ
私のこの想いを貫けば、そんな大事な弟のお前の事を傷付ける事は理解しているが、それでも私は彼女を誰にも差し出す気も、奪われる事を黙って見ているつもりもない
お前には悪いが、レティシアは私の唯一だ
それを、お前にはしっかりと伝えておきたかった」
そう言うと、ジルベルトは私室へ入っていく。
アルフレッドは、そんな兄の背中を眺めながら、自分の感情にゆっくりと蓋をして、早く平穏な日々が戻ってくる事を願った。
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