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第48話 友だちの切っ掛け

今回のお話は、レティシアとプリシラの過去、友だちになった頃のお話です。

本編の流れに、直接関わりのないお話になりますので、読みとばしてもらっても支障はありません。


 ───今から九年前……



 レティシアとプリシラの出会いは二人が7歳の時、王城の庭園であった。


 プリシラの兄のミカエルが、王子達との鍛練を行うある日に、見学に付いてきていたプリシラは、ジルベルトの計らいで王城の庭園を、サイモンと一緒に散歩をしたらどうかと勧められた。

 二人で沢山の花が咲く庭園を散歩していると、数名の令嬢方がテーブルを囲みお茶を楽しんでいる姿が目に入る。

 それに気が付いたプリシラが、何となくそちらを見ていると隣にいたサイモンが説明してくれた。


『恐らく、あそこでお茶を飲みながら話しているのは、ジルベルト殿下の婚約者候補の令嬢方だね

 殿下が、鍛練後に婚約者候補の令嬢方と交流を育む為のお茶会が、今日は行われると言っていたんだ』


『婚約者……候補……?』


 その時一人の令嬢が、一番幼い令嬢へわざとお茶をかけたように、プリシラとサイモンには見えた。

 しかし、その場にいる令嬢方は慌てたりする様子もなく、皆、お茶を掛けられた令嬢へ嘲笑を向ける。

 俯いたままその令嬢は、静かにその場を離れた。

 丁度離れた所で様子を見ていたサイモンとプリシラは、その令嬢と鉢合わせる。

 陶磁器のような真っ白な肌に、蜂蜜色のサラサラなブロンド。

 お人形のような容姿の令嬢の翠眼は、涙で潤んでいた。

 プリシラとぶつかりそうになった、その令嬢は脅えたような表情を二人に向け小さな声で謝る。


『も……、申し訳……ござい……ません……』


 小さくカタカタと震える令嬢に、プリシラは自分のハンカチを差し出した。


『大丈夫ですか?

 ドレスが濡れていらっしゃいますし、良かったら使ってください』


 その差し出されたハンカチを受け取っていいのか、どうなのか躊躇している令嬢にプリシラは笑みを向ける。

 その様子を見守っていたサイモンは口を開いた。


『君は、宰相のご息女のハーヴィル嬢だよね?

 ジルベルト殿下や、お兄さんのアランと一緒に君が居る時、私は何度かお会いしていると思うんだ

 私は、マルクス騎士団長の長男で、サイモン·マルクス

 そして、彼女はフォレスト財務大臣のご息女で、プリシラ·フォレスト嬢

 さっきのお茶会での様子が、私達にも少し見えてしまったのだけど……

 お茶で濡れたドレス(それ)って……、彼女達がわざとやったのではないかい?』


 サイモンの言葉に、彼女は慌てて言葉を発する。


『殿下やお父様方には言わないでくださいっ!』


『え……?』


 その彼女の必死な様子に、サイモンもプリシラも驚いた表情を浮かべた。


『でも……、明らかに彼女達には悪意があったように、私達にも見えたよ?

 こんな事を知っていながら、殿下や宰相に伝えないなんて、そんな事は出来ないよ

 それに、君は身分的にも彼女達よりも高い身分だ

 それを考えても、彼女達の振る舞いは貴族の令嬢としてあってはならない

 ましてや、彼女達は第一王子であるジルベルト殿下の婚約者候補に名前があがっている令嬢達であって、あんな振る舞いは婚約者候補としてあるまじき振る舞いだよ』


 レティシアは瞳に涙を浮かべながら、サイモンへ必死に願う。


『私……、わたくしの振る舞いが、淑女としてなっていなかったのです

 それを、皆様が教えてくださっただけですから……』


 レティシアの大きな瞳からポロリと零れた涙は、次から次へと溢れて落ちていった。

 そんなレティシアの頬に、プリシラは持っていたハンカチをあてる。


『泣かないで……

 そんなに泣いてしまったら、目が腫れてしまいます』


 その時、お茶会の場所へ向かっていたジルベルトが、三人に気が付き近付くと、レティシアが泣いている姿が目に入った。


『レティ!?

 どうしたんだ!?』


 レティシアは、ジルベルトの声にビクリと身体を揺らす。

 しかし次には、ジルベルトへ綺麗な淑女の礼(カーテシー)を向けた。


『このような姿を殿下にお見せしてしまい、申し訳ございません……

 わたくしが困っている所を、マルクス様とフォレスト様が助けてくださったのです』


『困ってって……何があったんだ……?

 それに、その言葉遣いは、ここは公の場所ではないのだから使わなくていいと、いつも言っているだろう?

 ………それよりも、レティ、そのドレス……』


 ジルベルトが、レティシアの濡れているドレスに気が付いた事に、レティシアは作った笑みを彼へ向けた。


『わたくしが、お茶を溢してしまい濡らしてしまったのです……

 そんな、わたくしの姿を見てお二方が助けてくださいました

 こんな姿で、お茶会に参加する事は憚れますので、本日は大変申し訳ありませんが、欠席させて頂く事をお許しください』


 レティシアの言葉に、複雑な表情を浮かべたジルベルトへ、側にいたサイモンは機転をきかし口を開く。


『殿下、お話の間に入って申し訳ありませんが、私の考えを聞いて頂けますか?』


『サイモン……? 何だ?』


『ハーヴィル嬢は、このまま濡れたドレスを着たままは良くないかと思いますので、彼女への付き添いをプリシラにお願いして、着替えに向かう事のお許しを、私からもお願いできますか?

 恐らく、まだアランも王城内に居ると思うので、ハーヴィル嬢もこのように動揺されていますし、着替えが終わったらアランと一緒に帰途について頂くのが良いのではないかと思ったのですが……

 プリシラ、彼女をお願い出来るよね?


 殿下、どうでしょうか?』


 サイモンの言葉に、プリシラも同意した様子を見たジルベルトは、レティシアの頭を一度優しく撫でる。


『わかった

 プリシラ嬢、レティを頼むよ

 レティ、王城の一つの応接室に替えのドレスを用意させるから、着替えたらそこで待っていてくれるかい?

 私も茶会へ顔を出したらそちらへ向かうから

 私が譲歩出来るのは、ここまでだよ?』


『はい……ありがとうございます』


 レティシアはジルベルトへ頭を下げると、戸惑いながらもプリシラと一緒に王城へ向かった。


『サイモン、婚約者であるプリシラ嬢との折角の時間を、レティシアの為に使わせてしまい、すまなかった』


『いえ、そんな事は何ともありません

 プリシラもわかっていると思います

 それと殿下、ハーヴィル嬢から口止めをされたのですが……

 やはり、黙っている訳にはいかないと思いますので、お伝えしますが……

 先程───』


 サイモンから聞いたことに、ジルベルトの纏う空気が変わった事は、サイモンにもすぐわかった。

 ジルベルトが、レティシアの事を特別に慈しんでいる事はサイモンも知っており、今伝えた事をジルベルトが知れば、彼がどう動くのか想像に容易かったのだ。







 その頃レティシアは、自分に付き添う事を命じられたプリシラに対して、申し訳ない気持ちでいっぱいであった。

 プリシラと直接話した事はなかったが、彼女の事はジルベルトや兄のアランから聞いていて知っていた。


『あの……、わたくしのせいで……申し訳ありません……』


『え?』


『一緒にいらしたマルクス様は、フォレスト様のご婚約者ですよね?

 折角のお二方のお時間を、わたくしのせいで……』


 プリシラは、レティシアにニコリと笑みを向ける。


『大丈夫ですよ!

 それに、困っている時はお互い様ですもの!』


 そのプリシラの笑みに、レティシアは先程まで沈んでいた気持ちが温かな気持ちになり、救われたような気分になった。

 フワリとレティシアも笑みを彼女へ向ける。

 その笑みはとても可愛らしいもので、プリシラは、『本当に妖精みたい』と、彼女が巷で妖精姫と言われている事を思い出した。

 プリシラは、先程から気になっている事をレティシアへ問う。


『あの……、不躾な質問で嫌な気持ちになってしまったら申し訳ありませんが……

 どうして、あんなに酷い事をされたのに、殿下方に言わないで欲しいなんて……』


 その質問に、レティシアはポツリと言葉を溢す。


『自分の大切な人に、自分が苛められる存在だなんて……

 恥ずかしくて、知られたくなかったんです……』


 プリシラは、レティシアのその気持ちがとてもわかった。

 その理由を言葉にしようかと口を開きかけた時、王城に出入りしていた令嬢方数名の話し声が偶然聞こえてくる。


『先程、殿下方の鍛練の時に、あの猿みたいな令嬢が居たのを見ました?』


『ええ、どうしてサイモン様の婚約者に、殿方と混じって剣など振り回している令嬢が選ばれたのかしらね?』


『本当に、恥ずかしくないのかしら?

 これで、容姿が整っているならまだ納得のしようもあるけれど、あんな地味な容姿で、サイモン様の隣に平気な顔をして並んでいるなんて、気が知れないわ』


 その酷い言葉の数々に、プリシラは表情を歪め俯く。

 そのプリシラの様子に、レティシアは彼女の手を握り締めた。


『私はフォレスト様の笑顔も、その優しさも素晴らしいと思いますし、大好きです!

 ついさっき、私の沈んでいた気持ちを救ってくれたもの!

 そんな、素晴らしいご令嬢だから、マルクス様はあなたの事を選んだのだと、私は思います!

 あんな、酷い言葉に傷付かなくていいんです!』


『ハーヴィル様……』


『レティ……

 私の事を、そう呼んでくれますか?』


『え……?』


『私の事をそう呼んでくれるのは、家族と殿下方しか居ないんです

 私はお友達も少ないくて……

 でも、私はフォレスト様にもそう呼んでもらいたいです……

 こんな……私だけど、お友達になってほしいんです

 駄目……でしょうか……?』


 それは、レティシアが頑張って勇気を出した言葉だった。

 その言葉に、プリシラは笑みを向ける。


『私の事も、プリシラと呼んでくれる? レティ……』


 プリシラの言葉に、二人は笑みを向けあう。

 プリシラは、あんな風にレティシア(自分)が苛められている時には、言い返しもしないレティシアが、プリシラ(自分)に対しての酷い言葉には怒ってくれる様子に、彼女はきっと人の事ばかり考えてしまう性格で、自分の事は後回しにしてしまうのかもしれないと感じた。

 それでも、プリシラにとってレティシアの言葉はとても嬉しいもので、救われる気持ちになったのは確かであった。




ここまで読んで頂きありがとうございます!



◇作者の呟き◇


今回のお話……あまり、本編とは関係のないお話のように思われた方がいらっしゃったら申し訳ありません……(早く本編進めろよ!)っていう、お叱りの声が聞こえてくるような気もします。。。


ですが、作者的に自分の危険をかえりみないで、なぜプリシラがあのようにカーティスの言質をとろうとしたのか、理由を描きたかったのですが……はしょりすぎてわかりにくかったらごめんなさい……


二人が友だちになった切っ掛けは、お互い周囲からの酷い言葉に傷付いていた事が切っ掛けという、なんだか傷をなめあっているような、スッキリした切っ掛けではありません。

しかし、お互いは、自分が辛い時に助けてもらった優しさや言葉が切っ掛けと思っています。

それからは、本当に心の許せる関係であります。


初め、プリシラの婚約者でオスカーの兄っていう語りでしか出て来なかったサイモンですが……前話と、今回の話にかなり入れました。

基本は穏やかで優しい性格ですが、プリシラを傷付ける存在には容赦なく、笑顔で徹底して排除していくような性格です。人を従えるような言葉選びが上手であり、オスカーよりも腹黒いかもしれません…

そういうところも、ジルベルトもサイモンも、お互い似ている所があると感じています。

剣術は、ジルベルトやオスカーよりは劣りますが、その二人を除けば上位にくるくらいの腕前であります。


金髪碧眼の整った容姿で、憧れる令嬢も多くそのやっかみがプリシラに向いているかたちです。

小さい頃から兄やマルクス兄弟達と混じって剣術を習っていた頃からの付き合いから、プリシラはサイモンから見初められています。(プリシラは、サイモンの父親が自分の特技に興味を持ち、家同士の婚約だと思っていますが、サイモンが願った事が大きいのです)っていう、裏話を何処かに入れたくて、プリシラが活躍した次の話に入れさせてもらいました。

また、次回からは本編に戻ります。

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