第37話 真相
マリアベルの滞在している部屋では、マリアベルとカーティスがお茶を口にしながら話をしていた。
マリアベルの座る長椅子の背凭れにとまる鴉に、カーティスは目を向ける。
「それで、鴉は何て?」
マリアベルは、自分の傍にいる鴉のローザに顔を向けると笑みを浮かべた。
「ジルベルト様が、わたくしがお伝えした皆様の幸せの意味を受け入れてくださって、ご自分の身の振り方を、漸く考え直してくださったようよ」
鴉のローザは、マリアベルが雛鳥の頃から調教し、そして彼女の魔力をローザに施した事から、マリアベルと意思疎通の出来る。彼女が何かを探りたい時に、密偵として飛ばしている鴉でもあった。
「へぇ……
他人の言いなりにはなりそうにない人だと思ったけど、本当にマリアの力は凄いね
マリアがこの国に来るなり、突然『第二王子より、第一王子の方がいいわ』なんて、婚約者のいる王太子を欲しがるから、どうなるのかと思ったんだよ
あの王太子も、一筋縄じゃいかなさそうだったから難しいんじゃないのかな?って、思っていたけど、今回もマリアの思い通りかぁ~」
「だから、そういう言い方は、まるでわたくしが悪者みたいで嫌だわ
わたくし、真実を伝えただけよ?
この王国にとっても、ジルベルト様にとっても、アルフレッド様やレティシアさんにとっても、良い事ばかりの提案なのだもの
頭の悪い人でなかったら、受け入れてくれて当然よ
それを、ジルベルト様も当然わかってくれたって事ね
頭の悪い方でなくて良かったわ」
「でもさ、初めにその方法をレティシア嬢に使った時は失敗したから、今回も上手くいくのかどうなのか、僕は半信半疑だったけどね?」
「それは、カートにも責任があるのじゃないかしら?
わたくし、ちゃんとレティシアさんを上手に眠らせたのよ
それなのにカートったら、レティシアさんの身に付けているものを手に入れられなかったじゃない?」
「まぁ、そうだけど……
まさか、あの何にも出来なさそうな第二王子が、威圧的に殺気を僕へ向けてくるとは思わなかったんだよ
思いもよらなかったから、手が一瞬止まってしまったのが、僕も悔しいんだよ?
あんな状態で、彼女の傍に近寄れないだろう?
本当は、僕が彼女を介抱する予定だったのにさ」
マリアベルとカーティスが話しているのは、マリアベルの開いた茶会中に、レティシアが意識を失った時の事であった。
「でも、ジルベルト様の意思を正しい方向に変える為としては、今回の方が良かったのかもしれないから、不幸中の幸いかもしれないわね」
カーティスは、マリアベルが手にしている瓶に目を向ける。
「そのケアルの樹液は凄い力だね
本当に、相手の身に付けている物で、その相手を上手く操れるんだから」
「操るなんて人聞きが悪いわ
その人の間違っている事を、正しい方向に向けてあげているだけよ?」
マリアベルの持っている瓶にはたっぷりと、ケアルの樹液と呼ばれる液体が入っており、その中にはジルベルトのイヤーカフが浸けられていた。
「シャルテの極秘の溶液に、マリアの魔力を込めたら、何でもマリアの思い通りになるんだから本当に凄いよ
でもさ、レティシア嬢を僕にくれるって言ってたのはどうなるわけ?
なんか、第二王子のモノになりそうな雰囲気なんだけど?
それと、クララ嬢はどうするの?
彼女に言っていた事とは、方向が変わっているけど?」
「クララさんは……、あんまり役には立たなかったけれど……
そのまま側妃扱いで、いいのじゃないかしら?
わたくしは、側妃を置く事には特に何も思わないから……
ジルベルト様が、寵愛を側妃へ向ける事は話は別だけれど……
寵愛を受けるのは、わたくしだけで十分だもの
レティシアさんの事は、カートが初めに失敗してしまったのだから仕方がないわ
本気であの方を気に入っているなら、お兄様方から王位を勝ち取る事ね
あんなに、一生懸命王妃教育を受けるくらい、王妃に固執しているような方なのだもの、第二王子妃ぐらいじゃ満足しないでしょう?
今回は、きっと悔しい気持ちであるかもしれないわね
カートが王太子になったら、目の色を変えるのじゃないかしら?
でも、カートの趣味って、よくわからないわ」
「マリアには敵う相手なんていないよ
だけど、う~ん……あんまり、玉座には興味がなかったけど、彼女は惜しいなって思うから……
それも、視野にいれようかな?」
「カートなら大丈夫よ
お父様はお兄様方よりもカートがお気に入りだし、それだけの力はあるでしょう?」
マリアベルとカーティスは、そんな話をしながらクスクスと笑い合った。
その頃、アルフレッドはアランと、ある場所へ向かっていた。
「アラン、そんなに苛立つなよ
あの兄上は、本来の兄上とは違う」
「わかってる!
だけど、感情が追い付かないんだよ!!
お前こそ、よくそんなに冷静でいられるな?」
「あんな言葉は、許せなかったよ
本気で腹が立ったし、兄上の話を聞いた時は兄上を軽蔑すらした
だけど……、このままじゃレティが一番可哀想だし、それに兄上がもし、本当の兄上に戻った時に、レティの事を自らが手放したなんて目の当たりにしたら、立ち直れないんじゃないかって思ったんだ
俺は、やっぱりあの二人には幸せになって欲しいんだよ」
アルフレッドの言葉に、複雑な表情をアランは向ける。
「お前は、本当にお人好しすぎるな……
レティシアの兄である俺が言う事じゃないが、こんな状況なら、お前がこのままレティシアを手にする事だって、出来るだろう?」
「それは………
きっと、レティにとって一番の幸せはそこには絶対にないから……」
「そうか……
ジルも、アルみたいな弟を持って幸せな奴だよ
本来のあいつに戻った時、お前には頭が上がらないんじゃないか?
あいつが、本来の自分を取り戻したら、言いたい事をいくらでも言ってやれ」
「早く……、取り返しがつかなくなる前に掴まないと……」
「ああ……」
二人はそう話すと、暗闇に消えていった。
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◇お知らせ◇
土日(11/28.29)と、私事の為月曜日(11/30)の更新をお休みさせて頂きます。
また、火曜日(12/1)から更新再開の予定です。
◇作者の呟き
さて、先ず伏線回収としてジルベルトに起こった異変を起こした相手がはっきりしました。
まぁ、これは皆様の想像通りだったのではないでしょうか?
まだ、残っている伏線が色々あったり、詳しく掘り下げる部分もあるのでこれからもどうぞ宜しくお願い致します。




