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第30話 昔の約束

今回のお話は、ジルベルトとアランの過去のお話になります。

 ジルベルトが女性を信用出来ず、懐疑的に見てしまう理由。

 それは、彼の幼少期の出来事が関係していた。




 まだ、ジルベルトが幼い頃───


 ジルベルトは、生まれた時から整った顔立ちをしており、さらに生来、何事も他の人間より能力が格段に高かった。

 その事に加え、この国の第一王子という立場でもあり、そんな彼の将来の隣の席に魅力を感じる者は数多くいた。

 令嬢方は、幼くとも自我が芽生えると、繕った表情でジルベルトへすり寄っていく。

 それに拍車をかけるのが、自分達の娘を次期王妃にしたいと目論む親であった。



 珍しくジルベルトがアランへ苦悩を溢したのは、ジルベルトと年頃が近く、高位貴族の子ども達が招かれた王妃主催のお茶会の次の日だった。

 ジルベルトと、他の貴族の子ども達との将来を見据えての交流を目的にした茶会であったが、純粋である子ども達であるはずなのに、親から様々な事を吹き込まれいたのか、表に出している顔と、頭で考えている事の違いを、ジルベルトは雰囲気から察し辟易としていた。

 そして次の日、幼い頃からずっと交流のあるアランへ、ジルベルトは気持ちを吐露したのだ。



『アラン……昨日の来ていた者達の振る舞いが、怖くて仕方がなかったのだけど……』


『俺も同じだよ』


『特に令嬢方は、子どもなのに何故あんな相応しくない化粧を施したり、香水まで付けているんだ?』


『それは、お前の気を引きたいからなんじゃないか?』


『あんなの、余計に引いてしまうよ……

 一緒に話したいとも思わない!

 それに、私はレティがいい!』


『レティがって、あいつはまだ三歳だぞ?』


『レティは、私自身を見てくれるんだ

 あんな、私の外見や立場しか見ていない者とは違うんだよ』


『それは、俺と一緒に生まれた時から、お前達兄弟と過ごす時間が多かったんだから、当たり前だと思うけど……』


『そういう事じゃないんだよ!

 レティが傍に居てくれると安心するし、王子としてじゃなくて本当の私を出せるんだ』




 そんな時、国を揺らがすような事件が起こる。


 ジルベルトが、彼の側付きであった女官に浚われそうになったのだ。

 それは、護衛騎士によって城外に出る前に食い止められ、未遂に終わったが、ジルベルトにとっては大きな恐怖を感じさせられる事件になった。

 そして、それはとても信頼し、姉のようにも慕っていた女官がその事件を起こした事に、ジルベルトのショックは大きかった。


 何故、その女官はそんな事を起こそうとしたのか……


 その女官が好意を持っていた相手が、王政派に不満を持っている者で、第一王子で未来の国王となるべく、才能の固まりのようなジルベルトが居なくなければ、王家が揺らぐと短絡的な考えから起こした事が明らかとなる。

 その女官や女官の実家である侯爵家、そしてその相手等に処罰がくだった後も、ジルベルトの恐怖心やショックはなかなか収まらなかった。

 ジルベルトは、その一件から自分の周囲におく者に、簡単に心を許さなくなる。

 表面上柔らかな笑みで、自身へ近付こうとする者へ拒否感を持つようになった。

 特に女性へは、懐疑的に見る癖が付いたのだった。


 ただ、それが例外な令嬢がいた。

 それは、幼い時からジルベルトの側にいたレティシアである。

 彼女が側にいるのが当たり前であり、ジルベルトはレティシアを自分の妃に絶対にしたいと強く望んでいた。

 それを、ジルベルトは実現させるために根回しをしていき、レティシアを自身の婚約者候補においたのだ。


 レティシアを婚約者候補にした時に、アランはジルベルトへ確認をした事があった。


『他人を信じられないお前の婚約者に、レティシアを候補にする事は父上と同じく俺も反対だ』


 そんなアランへ、ジルベルトは自分のレティシアへ向ける想いを必死に伝える。


『レティは、私にとって他人じゃない

 他の令嬢とは違う!

 それに私にだって、アランやサイモンに、オスカーやミカエルのような信頼している者だっている

 アランから、そんな風に言われると私だって悲しい』


『他の者が言えないから、俺が言っているんだろ!?

 レティシアは違うっていう事を、どう俺は信じればいいんだよ?

 お前の境遇は、理解しているつもりだ

 昔、あんな事があったんだからな

 だからこそ、心配しているんだ

 あいつが、お前に不信感を抱かせたらどうするつもりなんだ?

 今までの他の者へのように、あいつの言葉を信じないで切り捨てるのか?』


『レティは、私が自ら傍にいて欲しいという気持ちはずっと揺るがなかった

 レティの事はどんな事でも許せるし、信じている

 そして、彼女自身を私自身の目で見て知るまでは、他の声になど惑わされない

 レティの事は、他の者をみるような目で見ないと誓うよ』


『その言葉を信じていいのか?

 あいつの事を傷付けたら、不敬罪だと言われても俺は許さないからな!』


『信じていい

 私は絶対に、レティシアを信じている』




 昔のジルベルトとアランの約束───


 それすらも、今のジルベルトは忘れている事に、アランは堪えるので必死だった。

 今の状況はジルベルトの不可抗力で起きた事だとしても、アランは怒りと悲しみが募っていったのだ。


ここまで読んで頂きありがとうございます!


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