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第25話 暗転

 どれくらい時間が経ったのか、外はもう夕日も沈み、夜に変わろうとしていた。

 この時間に、ジルベルトの私室に居たのは、国王や宰相は一度部屋を離れており、レティシアとアルフレッド、アラン、そして意識のないジルベルトの4人だけであった。

 床にずっと膝をついたままのレティシアを、アランとアルフレッドはどうにか椅子に座らせたが、ジルベルトの手を握ったまま傍を離れようとはしなかった。

 アランは、時間も考えてレティシアへ声をかける。


「レティ、もう時間も遅い

 ジルは、いつ目を覚ますかもわからないし、今日の所は屋敷へ戻ろう」


「でも、ジルが……ジルに何かあったら……

 私……」


(何かなんて、そんな事考えたくもないのに

 だけど、こんな状態のジルの傍を離れたくはない……)


 レティシアの様子に、どうしたら良いかとアランやアルフレッドが考えている時、レティシアが握っていたジルベルトの手がピクリと動いた。


「ジ、ジルっ!?」


 ジルベルトが、ゆっくりと瞳をあけた事に、その場にいた三人とも大きく安堵する。


 目覚めたばかりのジルベルトは、傍で立っていたアランに初めに気が付いたようであった。


「……アラン?

 ……お前、どうして私の私室(ここ)にいる?」


「ジル! 大丈夫なのか?

 お前、執務室で倒れていたんだぞ!?」


「私が倒れただと……?」



 寝台の上で起き上がったジルベルトは、自分の手を握り傍で瞳を潤ましている存在へ視線を移す。



「ジル……良かった……」



 レティシアが心から安堵し、握っていた手に少し力を込めた時───










「誰だお前は?」







「え…………ジル……?」





 突然のジルベルトの言葉に、その場にいた三人共、時が止まったような感覚を覚える。


 ジルベルトはレティシアが握っていた手を振り払い、冷徹な視線を彼女へ向けた。


「誰の許可を得て、この場所に居る?

 それだけでなく、私にそう軽々しく触れていた理由は!?

 そして、私の名を敬称も付けず、況してや愛称呼びをするなど、不敬罪にあたる事を知らないのか!?」


 ジルベルトの言葉や態度に驚いたのは、レティシアだけでなく、アランやアルフレッドもだった。


「ジル! お前は何を言っているんだ!?」


「アラン!

 何故、私の私室に見知らぬ女がいるのだ!?

 誰が許可した!?

 お前はまだしも、ここは王族でなければ立ち入る事の出来ない場であるんだぞ!!

 お前もアルもそれをただ黙って見ているなど、どういう事なんだ!?」


 いつもとは、あまりに違いすぎるジルベルトの様子に、三人共言葉が出てこなかった。

 その時、レティシアは身体が震えるのを抑えて、椅子から立ち上がると頭を下げた。


「も、申し訳……ございません……

 失礼……い、いたします……」


「レティ!!」


 レティシアは、声を震わせながらその一言を言う事がやっとであり、そのまま彼女がジルベルトの私室から出ていくのを、アルフレッドは追い掛ける。

 その様子を訝しげにジルベルトは見ていた。


「アルの知り合いなのか?

 それなのに、何故私の私室に?」


「ジル、お前……

 本気で言ってるのか?」


「何が……?」


 アランは、今、自分の目の前で起きている事に、理解も感情も追い付いて来なく混乱しつつあったが、直ぐ様、冷静さを取り戻しジルベルトを見据えた。


「本気で、あいつの事がわからないのか?」


「何なんだ、アラン?」


「今、ここに居たのはハーヴィル公爵家令嬢のレティシア·ハーヴィルだ」


「ハーヴィル公爵家令嬢だと?

 宰相に、令嬢なんていないだろう?

 それとも、あの宰相に庶子でもいたというのか?」


「………歴としたハーヴィル公爵夫妻の実子で、両親共に俺と同じ血の流れている妹だよ

 俺と同じく、お前達兄弟の幼馴染みでもある」


「アラン、何を可笑しな事を……?

 お前に妹なんて居ないであろう?」


「おかしいのはお前だろ!?

 レティシアは、渋る父上をお前が何年にも渡って説き伏せ、懇願し、漸く今年国内外にお披露目したお前の正式な婚約者なんだぞ!?」


「は……?」


「それを、お前は全て知らないと言うのか!?

 俺達の事は覚えていて、どうしてレティシアの事はわからないんだ!?

 忘れたとでも言うのかよ!?」


「何だ……それは……」


 アランは、怒りで握っていた拳が震える事を抑えるのがやっとであった。

 信頼している友であり、未来の主君となる相手だとしても、自分の大切な妹をあのように扱われた事に、ジルベルトの異変への戸惑いよりも、怒りが勝っていたのだ。





 ◇*◇*◇



 あのように、怒りを露にしたジルベルトの前から離れなければならないと、咄嗟に判断し、彼の私室から出たレティシアには、何が起こっているのかわからなかった。


(何が起きたの……?

 ジルが……見たことのない表情で私を見ていた……)


 未だにレティシアの手の震えは止まらない。

 そして、頭の中を何度も、先程ジルベルトから言われた言葉が回る。



『誰だお前は?』


『誰の許可を得て、この場所に居る?

 それだけでなく、私にそう軽々しく触れていた理由は!?

 そして、私の名を敬称も付けず、況してや愛称呼びをするなど、不敬罪にあたる事を知らないのか!?』



「…………………」


(あんな冷たい目のジルなんか、見たことがない……

 あの言葉はまるで………私の事を───)


「レティっ!!」


 レティシアがジルベルトの私室を出て少しした所で佇んでいるのを、レティシアの後をすぐ追ったアルフレッドが声を掛けた。


「大丈夫か!?」


「………大丈夫よ……」


 俯いたままのレティシアへ、アルフレッドは言葉を続ける。


「さっきのは、兄上も目覚めたばかりで混乱していたんだと思うから……」


「……うん………」


「もう一度、お前の顔を見たらいつもの兄上に戻るよ

 だから……」


 アルフレッドがレティシアの手を取り、ジルベルトの私室へ戻ろうとした時……


「兄上の私室に戻ろう?」


「いやぁっ!!」


「レティ……?」


 その場から動く事を拒絶したレティシアは、青ざめた表情でガタガタと震え始めた事に、アルフレッドは戸惑う。


「やだ、行きたくない……

 だって……だって……」


「レティ、どうした……?」


「だって……また、同じようにジルから拒絶されたら私……

 平気じゃいられなくなる……

 さっきのジルは、まるで……私の事を……全く知らない相手へ向けるような目で、拒絶したの……

 そんな事がまた起こったら……私はどうしたらいいの?」


(これが悪夢ならいいのに……

 悪夢なら、早く目覚めさせて?

 お願いだから……

 お願い……)



ここまで読んで頂きありがとうございます!

ブックマークもありがとうございます!励みになっております!




◇作者の呟き◇


さて、この回の展開は皆様の想像通りでしたでしょうか?

こんな展開に賛否両論あるかと思い、苦手な方もいらっしゃるかと思いますが、このままシリアスモードに突入していきます……

ここから、伏線の残りを張りつつも、回収も始めていきたいと思います。

最終地点までたどり着けますように……

皆様も、どうぞ見守って頂けると嬉しいです。

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