第17話 お茶菓子とお喋り
ジルベルトと気持ちを再確認したあの日から数日後、今度はレティシアがマリアベルの茶会へ招待されていた。
今回はクララは招待されていなく、ジルベルトも公務があり欠席していた。
そのかわり、アルフレッドが招待を受けて出席しており、今日の茶会の出席者はマリアベル、カーティス、アルフレッド、そしてレティシアの4人である。
ジルベルトからは、マリアベルへ謝罪はいらないとは言われたが、あの場で茶会への招待を断った事に、レティシアはマリアベルへ改めて謝罪をいれた。
「王女殿下、先日は折角のお茶会へのお招きをお断りしてまい、申し訳ありませんでした」
「いいのよレティシアさん
急な誘いであったし、レティシアさんにも都合がある事を考えないで、わたくしがお誘いしてしまったのだから」
「もったいないお言葉です」
「それに、今日は招待を受けてくださったから、一緒に楽しみましょうね」
「はい」
レティシアは、チラリとアルフレッドを見る。
アルフレッドは、以前クラスメートが招待されたお茶会から、あまりカーティスに良い印象を持っていないのか、カーティスを警戒しているように思えたからだ。
それとは別に、先日のクララが招かれていたお茶会に参加していたのが、どうしてジルベルトだけだったのかも気になっていた。
以前にジルベルトから聞いた、マリアベルとアルフレッドを婚約させたいと、シャルテ国王が考えているなら、アルフレッドを招くのではないかと思ったのだが、その場には彼の姿はなかった。
あの日、アルフレッドには公務などはなかったように思ったが、執務が忙しかったのだろうかとも思い、レティシアは疑問を持っていたのだ。
そんな事を考えていると、隣にいたカーティスが口を開く。
「それにしても、マリアはお茶会が好きだよね~
オーガストラに来てから、もう何度、大きいのから小さいのまで催したのかな?」
「いいじゃない、カート
お茶会をしたら、美味しいお茶にお菓子も色々と口にできるし、何と言っても楽しいお喋りを沢山できるもの」
「シャルテでも、よく催していたもんね
マリアの催す茶会に出席するのが、シャルテの令嬢のステータスみたいなものになりつつあったし?
レティシア嬢も、お茶会が好きなの?」
「えっ!? わ、わたくしですか?」
「レティシアさんも、お茶会楽しいわよね?」
「わたくしは……」
レティシア自身、お茶会にはトラウマがあった。
レティシアが、ジルベルトの婚約者候補になった当初に開かれていた、その他の婚約者候補の令嬢方とのお茶会から、毎回お茶会が催される度、令嬢方から陰湿な虐めを受けていたためだ。
だが、そんな事をマリアベルの前で話す訳にもいかず、レティシアは顔に笑顔を浮かべた。
「わたくしは、あまり話をする事は得意ではないのですが、王女殿下は出席者の事をとても気を配って見ていらして、皆を楽しめるよう気配りされている姿に感銘を受けます
わたくしも、もっと頑張らなければと、自分を叱咤しているところなんです
王女殿下と、こうして同じテーブルで歓談出来る事は、本当に光栄で楽しい時間を頂いております
それに、わたくしも美味しいお茶や、お菓子が大好きですので、お茶会はそれらを楽しむ醍醐味の一つでもありますよね」
「まぁ! そうよね!
ほらカート、皆、わたくしとのお茶会を楽しんでいるのよ?」
「別に、僕は楽しんでないとは言ってないじゃないか」
「レティシアさん、今日のお茶菓子もわたくしがこのオーガストラ王国に来て、美味しいと思ったものを用意したのよ?
このベリーのタルトなんて、とっても美味しいの」
「わたくしも、ベリーはとても好きなんです
王女殿下の選ばれたお菓子は、きらきらとして可愛くて、味もとっても美味しいですね」
マリアベルとレティシアが、お茶菓子の事で盛り上がっている様子を、笑みを浮かべながら見ていたカーティスは、アルフレッドへ目を向けた。
「アルフレッド殿下、女の子は、お菓子とか本当に大好きですよね?
殿下も、お茶会楽しんでいますか?」
カーティスへ視線を向けたアルフレッドは、多くを語らずその問いに答えた。
「別に、好きでも嫌いでもないが……」
「ふ~ん……
同じ王子でも、殿下は、兄君であるジルベルト殿下とは全く違いますよね?
先日の、マリアのお茶会ではジルベルト殿下は積極的に話されて、マリアやクララ嬢を楽しませていましたよ?」
アルフレッドは、今のカーティスの言葉にピクリと眉を動かした。
先日のクララが招待されていた茶会に、ジルベルトが急な誘いをマリアベルからかけられた為に、茶会へ参加せざるを得なかった事になったと、アルフレッドは後で聞いた。
アルフレッドは、丁度その時間は鍛練場にいた為にその茶会には参加していなかったが、もし鍛練場にいなくても、自分には声はかからなかっただろうと思っていた。
その理由は、マリアベルと親交を深めたクララが、ジルベルトと共にお茶を楽しみたいと、マリアベルへ願ったのではないかとも思っていたからだ。
そして、その事で、ジルベルトとレティシアに少し何かがあったと、ジルベルトの周囲の者の噂でアルフレッドの耳に入ってきていたのだ。
カーティスの話に、アルフレッドはレティシアの方をチラリと見ると、一瞬だけ彼女の表情に影がさしたように思え、アルフレッドの心境はだんだんと良い気分ではなくなっていった。
だからなのかわからないが、辺り触りなく答える。
「兄上と自分では、性格が違うからではないだろうか?」
そのアルフレッドの答えに、カーティスは笑みを浮かべたまま何も答えなかった。
その時、思い出したかのようにマリアベルが口を開く。
「そうそう、レティシアさんは、アルフレッド様やジルベルト様と幼馴染みなのですよね?
しかも、遠縁の間柄だとも聞きましたわ」
その問いに、アルフレッドが答える。
「ええ、自分達兄弟とレティシアは幼馴染みです
父上と彼女の父親の宰相が再従兄弟にあたるんです
それとは別に、古くからの友人同士という事もあって、自分と彼女は物心つく前からの付き合いになります」
「まあ、わたくし達と一緒ね、カート」
「そうだね、マリア
だけど、そんな間柄なのに、二人の関わり方が余所余所しいようにも思えるんだけど?
まぁ、王族と臣下という関係性もあるのだろうけど、小さな頃からずっとそんな感じなの?」
「わたくし達は、ずっと愛称呼びよね?
それは、お父様もカートのお父様の叔父様も、容認してくださっているけれど……
オーガストラ王国では、そうはいかないのかしら?」
マリアベルとカーティスの言葉に、アルフレッドはレティシアへ『ほら、みろ』と言わんような視線を送る。
「自分達も、私的な空間では王女達と同じように愛称で呼び合いますし、もっと気安い口調で話しますよ
でも、彼女がどうも頑ななんです、特に公の場ではね
自分は、あまりこういう堅苦しい感じは、好きではないのですけどね」
「えっ!? ア、殿下……、あの……」
アルフレッドの言葉に、レティシアは戸惑う。
「まぁ!
じゃあ、この場は私的な空間で良いじゃない?
わたくしだって、カートとそうやって振る舞っているのだし、レティシアさんも、そんな堅苦しく考えないでいいわよ
だって、もうわたくし達はお友達ですもの!」
「ですが……」
レティシアは、マリアベルからそう言われ、困った表情を浮かべながら、アルフレッドへ助けを求めようとする。
「王女がいいと言ってるなら、その堅苦しい振る舞いじゃなくてもいいだろう?」
「そんな訳には……」
レティシアが、その事に躊躇した時──
─────リーン……
「………っ!?」
アルフレッドは、突然耳に入ってきた鈴のような音と、今まで感じなかった僅かな魔力を感じ、表情を変えた。
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