正義感?ほぼ強制イベントだよね?
「ここは私が取り押さえますので貴女は逃げてください」
「…え?」
銃を油断なく俺に向けながら亜美に手を差し伸べた。亜美は呆気に取られている。
「おい!犯人はアイツで…」
「黙りなさい!アンタは私が始末するんだから…!」
(うわっ、コレ完全に俺が犯人で亜美をいじめてたって思われてるじゃん…)
俺は凍りついた周囲とエグりまくった地面を見てため息をつく。
(…でも焦っていたとは言えやりすぎたかな)
「まぁ、一方的に殺されるのは嫌だからな…!"ブースト"」
「なに言ってるの?もしかして厨二病みたいなの拗らせているの?まぁいいわ、抵抗するなら撃つわよ」
パァン。
(抵抗してないのに撃つのかよっ!)
俺はヒールの準備をしながら目を閉じる。
(ブーストで身体強化したんだしそこまで痛くないはず…でも怖ぇぇ!)
チュイン。
だが、銃撃は俺から外れ後ろの壁に当たった。
「…っ、標準ミスったかしらね…」
少女は首を傾げる。
(何かわ分んねぇけど、ラッキー)
と、
「ちょっとぉ、商品に手ぇ出さないで欲しいんだけれ、ど!」
「きゃっ!?」
少女は何者かに押され倒れ込む。
少女の後ろにはパイプを手にした亜美が立っていた。
(やばいっ!?忘れてた…)
「痛ったぁ…ちょっと!貴女何を…」
「悪いけど、あなた邪魔よ」
亜美はパイプを少女に向かって振り下ろした。
「っ!?"エリアシールド"!」
ガキィィン。
パイプは少女の目の前で壁に阻まれる。亜美は悔しそうに顔を歪めながらこっちを睨む。
「ちょっとぉ、邪魔者の始末してるのに邪魔しないでよぉ」
「流石に目の前で巻き込まれた奴が殺されるのは見たくないからな…」
「え、あ、…ど、どうなってるの?」
少女は座り込んだまま、こっちと亜美を交互に見る。当然だ、いきなり味方だと思って守っていた奴に攻撃されるとか意味が分からないだろう。
(まぁ聞きもせずに攻撃してきたお前もお前だけどな…)
「アンタみたいなガキが飛び込んできたせいで魔法使いさんが困ってるのよぉ!」
亜美は両手を上に上げる。
ダダダダ。
どうやら援軍が来たらしい。マシンガンのような銃で俺ではなく少女を狙う。
(守らせるのが目的かよ!)
「っ!バリアで防いでいても拉致があかねぇ!おい、ロリっ子、こっち来い!逃げるぞ!」
「い、いや…いやぁ!」
少女はヘナヘナと座り込んだまま宙を見て動かなくなっていた。
(くそっ完全にパニックになってる。少女を攻撃して、俺に守らせるものを増やすとか悪趣味すぎんだろ!)
「吹き飛べ…"ウィンドインパクト"」
「ぐぁうわぁぁ!?」
ビルの屋上にいた援軍とやらがどさどさ落ちてくる。数は数十人。
(結構いる…どうする?倒そうにも魔力が…)
魔力は魔法を発動させるのに必要な力、なくなってしまうとただの一般人に過ぎない。
と、
「姉貴!あいつらがきました!」
「何ですって!?あんた達!に、逃げるよ!」
亜美達は何かを見つけると、仲間を連れ我先にと逃げ出した。
(何だ?もう対面する魔力も残ってない…せめてこの子だけでも…)
「"プライベートシールド"……」
俺の意識は暗闇に沈んでいった。