魔法使いナメないでください。
(あー、コレ定番のやつだわ)
やれやれと、俺は驚いている女性を尻目に近づく。
「君、何して…」
こういうゴロツキには一度痛い目を合わせない限り無限に湧いてくるのだ。
ここはバシッと魔法で…。
「…なっ!?」
だが、俺はゴロツキの肩に手をかけ何かを感じ取ると、バックステップで距離を取った。
(なんだあの感触…人間にしたら冷た過ぎる!?)
3人組が俺の気配に気づき振り返る。無機質な鉄の顔。
女性を襲っていたのは人型のロボット達だった。
(ロボット…?ど、どうするべきだ?こ、壊しても良いんだよな…?)
俺は未だかつて出会ったことのない道の敵に頭を抱える。
「あのぉ、君、助けてくれようとするのは嬉しいんですけどぉ、ちょっと目を閉じててくれます?」
と、さっきまで完全に怯えていた女性が何かを手に余裕をかましている。
「え…?あ、はい」
俺が状況の読めなさに呆然としていると、女がおもむろに手にしていた物をロボットに向けて投げつけた。
(何だあれ…石投げて更に怒らせるとかやめ…)
バッチィバリィッ。
ロボット共は閃光が走ったかと思うとバタバタと倒れだす。
「はぁ?何だよそれ…」
状況を整理できない俺はその場で立ち尽くす。
「これは手榴スタンガンよ。あ、一応駆けつけてくれてありがとねー。私嬉しかったぁ」
完全に舐められている。最初の悲鳴も作り声だったのだろう、か。
(コレで万事解決かよ…)
俺が呆気に取られていると、倒れていたロボットの一体が起き上がると彼女目掛けて突進していった。
(あのスタンガンなんとかってやつ、威力不足だったのか…!)
「おい!後ろ!」
「え?きゃぁぁ!」
ロボットの突進に気づいた女が手榴スタンガンを投げているが、慌てているせいか一発も当たっていない。
(マジかよっ!?何してんだ!)
「"氷柱"」
俺が唱えると、地面から飛び出した女にとびかかろうとしたロボットを貫く。ロボットはボンッというと、黒い煙を吐き出した。
氷柱、水属性の応用魔法である。イメージした場所、形で幾らでも応用が効く優れた性能を誇っている。
「あのぉ、大丈夫ですか?」
俺は駆け足で女に近づく。
(さっきの口調といい『あなたが助けなくても勝てたわよ』とかいいそうだな…)
女は地面に座り込んでいた。呆然としている。
「あの、大丈夫ですかって聞いてるんですけど…」
「あぁごめんね、助けてくれてありがとう!それと…君、あれ何!?すごいね!」
女はさっきの舐めた態度から一転、ぶつかる勢いで俺に寄ってきた。
「あれですか?氷柱ってやつで、俺の魔法ですけど…」
「もしかして君魔法使いなの!?」
「え、まぁ、そうですけど…」
「そーなんだぁ」
女は満更でもない顔をする。
(意外に魔法も発見されてるのか?今の日本は…?)
と、
「っ!?…っぶねぇ…」
俺は咄嗟に彼女を引き寄せる。
チュイン。
先程まで女がいた場所には銃弾の跡ができていた。
(何だ何だ!?狙撃…?さっきのロボット操ってた奴らか…)
「"エリアシールド"!」
俺は女を立たせると瞬時に路地を覆うほどの巨大な透明の結界を展開する。
「な、何が起こってるの!?」
彼女は襲撃に結界、頭が追いついていないみたいだ。
「襲撃です…!さっきのロボットを動かしてた奴らなんじゃないですか?何か覚えは…」
「そんなのないです!亜美は何もしてないです!」
(亜美っていうんだな…って今はそれどころじゃねぇ!)
「しっかり捕まってください!"テレポート"」
「えっ?え…」
次の瞬間、俺達は路地から姿を消した。