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魔法使いと発明娘  作者: 三本道
第一章
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科学都市って何ですか?






「ここが…日本?」


空から落ちる俺の目に異様な景色が飛び込んできた。


周りを海で囲まれ、切り取られたような鉄の島。


島に無理矢理詰め込まれたようにそびえ立つ高層ビルは、圧倒的な存在感を誇っている。


(何があったんだよ…日本は…)


時は数分遡る。






「アルガ様、本当に行ってしまわれるのですか?」


星が綺麗な夜、『アルガ様』と言い俺に詰め寄ってくるのは美少女ではなく、50代後半のおじさん。


おじさんのために弁解するが、一応ここの国『ファニアール』の国王をやっている少し偉いおじさんだ。


「はい、やっぱり故郷が恋しくなって…」


俺は頬に力を入れると無理に笑顔を作る。


(見ろ、これが正義の味方ならではの笑みだ…!)


決して国王に媚を売っているわけではない、この世界での『伝説の魔法使い(賢者とも言われている)』としての振る舞いをしているだけだ。


そう、颯爽と現れ笑顔で人を助けるという絶滅危惧種のイケメンのように。


「魔王は封印したといっても未だ2日しか経っておりません、封印を解いて出てきたらこの世界は終わりです!…アルガ様、どうかもう少しだけここに居てもらえないでしょうか?」


「あのぉ、さっきも言いましたよね?ようやく故郷にかえれる方法がみつかったんです、それに封印もなかなかなモノを施したので、そう簡単には解かれませんよ。あはは…」


国王のしつこい言及に頬が引き攣る。


俺は二年前の中学三年生の時にに日本から漂流したれっきとした日本人だ。


ちなみに『全属性魔法』、『無属性魔法』というお約束のチーターも貰っており、魔法使い(一説では賢者)となった俺はほんの数ヶ月でソロによる魔王の討伐にも成功もしている。


そして、定石では死ぬまで正義をまっとうした者としてのハッピーエンドが待っているものである。


が、


『もう人助けなんて疲れた…日本に帰りたい…』


俺はファンタジーのチート主人公のようには成れなかった。


せっかく来た異世界、チートまでもらって安泰確定の将来。魔法使いとして崇められる日々。


逆に言えば、秀でた魔法使いとして付きまとわれプライベートのない日々、おまけに強いボスはすべて俺任せ。


『もうこんな生活は嫌だ。魔王も倒したし、もう日本に帰ろう…!』


それから俺は最強の魔法使いという権力を利用し、この世界の端から端まで日本についての書籍をしらみつぶしに探しだした。


図書館の本をほぼ全て読み、魔王城も隅から隅まで見て回った。


そして一年たった昨日、ついに『禁忌魔法・ポータル』の書を魔王城にて見つけたのである。


(せっかく掴んだ希望なんだ。これ以上ここにいないためにも…!)


「国王様、人払いの魔法を…」


「…分かりました」


王は渋々人払いの結界を張る。


それを見届けると俺は書にかいてある詠唱を始めた。


「現世を司る創造神よ 時空を切り裂き我を迎えに来たまえ 運命を創り変え 新たなる世界を創りだせ! "ポータル"ッ!」


俺が唱えると同時に、足元に黒い魔法陣が発動する。


「こ、これが時空の転移魔法…ポータル…!?流石はアルガ様…」


「国王様、皆によろしくお願いします」


そう言い残すと、俺は地面に引き摺り込まれた…というより落ちた。


「ギャァァァァ」


俺は底のない暗闇を落ち続ける。


(ちょ、いつまで落ち続けんだよっ…!?)


「"フライ"っ…って魔法発動しねぇぇ」


魔法をかけたり、手で空を掴んでみるが、一向に止まる気配はない。


と、


「うわぁっ!?」


落ち始めて感覚数分、俺は真っ白の世界に放り出された。


光が目に刺さり思わず声をあげる。


(目ぇ痛ってぇ、何処だここ。日本についたのか?っていうか風がやべぇ)


凄い風圧の中、俺はそっと目を開けた。


「ここが…日本?」


目を開いた俺の下には異様な景色が広がっていた。


周りを海に囲まれた鉄の島、としか言いようがなかった。


小さい島にこれでもかと詰め込まれた高層ビル、そこに付いている無数の窓が太陽を反射しピカピカ光っている。


(って、このままじゃ落下して死ぬよな。使えるといいけど…"フライッ")


俺の思考に合わせて落下していた身体がピタッと止まる。


足の感覚的に地面を踏んでいるような安定感。


(おぉ、ここなら魔法は使えるんだな…)


俺は景色に唖然としながら空をある程度散歩し、そこらでは1番高い建物の屋上に身を下ろした。


「まず一個言えること…ここ何処だよっ!」


(瓦や石などで出来た屋根の中に所々高い程度のビルが建っている、それが日本だろっ!?こんな未来都市見た事ねぇぞ!)


「…もしかしてここ日本じゃないのか?」


目の前に広がっている光景は、意味もなさそうにひしめきあっている高層な建物。


(とりあえず…下に降りるか)


人目を気にしながらビルとビルの間を縫って降り路地に着地する。


路地の出口から見える生き物は、おそらく日本人だろう。


(やっぱりどう考えても、日本だよな。でもこんな所見たこともないし…家に帰らねぇとお金もねぇし…)


「きゃぁぁ!!」


(なんだ…!?)


耳を切り裂くような叫び声、これは完全にヤバい時の声だ。


(はぁ、異世界じゃ人助け漬けだったせいか、謎に強い正義感を持っちまったんだよな…もうそんなんじゃねぇのにな)


俺は路地の奥へと走り出した。


「やめてってば!」


悲鳴を出したのはこの女性だろう。彼女は何者か三人組に囲まれていた。






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