対面 2
ガラッ。
心なしかドアがいつもより大きな音を立てて開いた気がした。ああ・・・、すでになんとなく視線を感じる。
とりあえず、平静を装いつつ、ぎこちなく先生の隣まで歩いていって、前方に向き直った。そこには、・・・まあ当然ながらそこには見慣れたクラスメイトたちの姿があった。いつもと違う点と言えば、皆の俺を見る目がいつもと違っているくらいだろうか。とはいっても、それも当然のことだろうな。なんせ、みんなは俺と俺・・・ああ、ややこしいな。前の俺と現在の俺が同一人物なんて、ふつうわかるはずないしな。第一に、性別が違う。そして自分で言うのもなんだが、顔の構造もまるで違っている。そりゃあ、男と女なんだから、違っていて当然だろう。下手に、「あれ・・・なんか和哉に似てる・・・。」なんて言われた日には、たまったもんじゃない。
「はい、じゃあ宮野さん、自己紹介してもらえるかしら?」
先生はそういうと、一歩下がって場を譲ってきた。間際の片目をつむりながら(ウインクか?)の親指をグッと突き出したポーズをとっている。まあ、そんなことはどうでもいい。再び深呼吸をしてみる。(なにやら、この女状態になってから深呼吸が癖になってしまっているような気がする。)
「え〜、み、宮野彩芽です。まだこっちに来て長くないんで、慣れないことばかりなんですけど、早くみんなと仲良くなりたいです。どうぞよろしく。」
・・・はっ!!言ってから初めて気づいた。全くもって女子らしく(自分なりに)話すことを忘れていた。ああああああ・・・・一人で心の中で自己嫌悪に陥っていたけれども、幸い誰もそれを気にしているクラスメイトはいないようだった。先生が拍手をすると、それにとられるように、あちこちから拍手が起きる。そんな光景を見て少しばかし安心した俺だった。
そんなこんなで、なんとか朝のホームルールは終了した。一時間目の授業まで少し時間があるけれども、いきなり何かできる状況でもないので、机に突っ伏していると、誰かが話しかけてきた。
「み〜や〜のさんっ!!」
呼ばれたのが自分の名字だとコンマ数秒してから気づいて、勢いよく顔を上げた。
目に入ったのは、まぶしいばかりの笑顔。そこにいたのは、薫だった。こいつは雨風薫。いわゆる幼なじみと言うやつだ。家が近所のせいもあり、小さい頃から、一緒に遊んだりしていて、異性というよりは、兄弟と言った方がしっくりくるような関係だったやつだ。・・・というかこれはよく考えればまずくないか?こいつに俺の家から、今の俺、つまり宮野彩芽がでてきたりするのを見られたりすると、ものすごーくまずいことになる気がする。
「な、何?雨風さん。」
なんだよ、薫。と言ってしまいそうになるのをグッとこらえてそう言った。するとなぜか薫はパッと一層笑顔を浮かべた。
「えっ!?宮野さん、もう私の名前覚えてくれたの!?いや〜うれしいな〜。宮野さん!!わかんないこととかあったら、なんでも遠慮なく聞いてねっ!!」
!!やばっ。確かに転校初日のやつがクラスメイトの名前なんて知っている訳ないじゃないか。
「せ、先生から名簿見せてもらってたから、ね。割と人の名前覚えるの得意なんだよね。」
「あっ、なるほどね〜。でもなんで名前だけで私だってわかったの?宮野さんすごいね!!」
あああああ。馬鹿か俺は。ますます、不自然なことになってるじゃないか。まさに墓穴を掘るってやつだ。・・・まあ、薫はこのテンションの高さと、笑顔から、ただ純粋に驚いてるだけみたいだから、一応問題ないだろう。




