はじまりのとき 3
あ〜、やっぱりこうなるんだよな。まあ、だいたい想像はついてたよ。しかし、ないものだろうか。こう、だれもが納得して、うなずけるようなそれっぽい名前は。
もう一度冷静になって考えてみる。やっぱりこういうのは自分で考えなければ納得できないような気がする。
その時だった。フッといきなり頭にひとつの名前が浮かんだ。
・・・?何か変な感じだ。妙に懐かしいようなこそばゆいようなそんな感じがした。そしてその名前しかあり得ない、なぜだかわからないけれど、自然とそう思えた。
「・・・わかった。」 俺はいつの間にかつぶやいていた。
「わかったって?おお!やっと納得のいく名前でも思いついたのか!」
俺の声につられて二人がこちらの方を向いた。
「もう、お母さんたちにはいい名前考えられないから、和哉、あんたが自分で決めちゃいなさい。」
お袋・・・。
えー、じゃあ改めて自分が女である間の仮の名ではあるけれども、割と悩んでやっとこさ考えついた名前を発表したいと思う。
「俺の名前は今から彩芽だ!!理由はわからん!!けれどこれしかないんだ!!」
言ってしまった。もう、後戻りはできないな。しばらくの間この名前とつきあっていくことになると思う。
「彩芽か・・・。うん、いい名前じゃないか。なかなか、かわいいと思うぞ!」
「そうね、いいと思うわ。でもいい?和哉。これからあんたは彩芽という名前で過ごすことになるけれど、私たちの息子、和哉はいつでもちゃんといることを忘れないでね。」
親父・・・お袋・・・。
・・・こうして俺は彩芽という名前を手にすることとなった。(ちなみに名字は、遠野をちょいといじって、宮野で行こうという話になっている。)
「彩芽ちゃん?大丈夫?」
先生が不安げな表情でこちらを見ている。いっきに現実まで引き戻された。すでに教室の扉の前、というところまで来ていた。いよいよみたいだ。
「大丈夫です。もう、準備はできてますから。」
それを聞くと先生は、形の良い目を細めてにっこりと笑った。・・・大丈夫。うまくやってやろうじゃないか。




