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葛藤

「いや〜、やっぱり、一日の最後はビールに限るよな!!」


そう言ってハッハッハ!とグラスを片手に笑い飛ばす親父。そしてその前の席で同じように


「や〜ね、お父さんったら。ほどほどにしないと早死にしちゃうわよ〜。ほら、和哉も言ってあげてよ〜。」


と、手を口に当てて笑っているお袋。


「なにを!?まだまだこれからだぞ〜!?」


・・・勘弁してくれ。明らかに会話が不自然じゃないか。いつもこんなテンションじゃないだろうに。あからさまに、気を使ってるのがバレバレだ。なんか、逆に意識してしまってちっともありがたくない。まあ、うれしくない訳じゃないけど・・・


現在俺たち家族はテーブルについて夕食の最中だ。食はあまり進まない。まあ、原因は明らかだ。先ほど風呂に入ろうとして、初めて直に、変わってしまった自分の姿を見てしまったからだ。別の状況でなら、喜ぶべきところなのかもしれないけれど、どういう訳か、微塵もそう言った感情はわかなかった。・・・いや、むしろ現実を突きつけられた感じがしてまたがっくりしてしまった。


「どうした、和哉?そんな顔して。あんまり気にするな?今の段階でなにも悩むことなんてないじゃないか?今日だってうまいこと話は決まっただろう。」


見かねたのか、親父が話しかけてきた。


「別に落ち込んでなんか・・・。」


そう、親父の言うように確かに今日はうまくいった。

昼間学校に担任と話しに行ったら、予想と裏腹に、すんなりと状況を飲み込んでくれたのだ。むしろ状況を楽しんでるようにも見えて、ちょっとムッとしたぐらいだ。

・・・とまあ、その結果であるが、俺(遠野和哉)は転校、そして、新しく今の女状態の俺は月曜から転入ということになった。まあ、妥当なところだと思う。

ついでに言えば、言い方は変だけれども、現在のクラスに入れてもらえるらしい。まあ、俺が抜けるせいで、一人減ってることになるから、当然と言えば当然の気もするけれど、やっぱり慣れた環境であるに越したことはないのでありがたい。


・・・一見問題はないように見えるな。とりあえず、俺が遠野和哉であるということだけは、クラスの連中にはばれたくないと思う。(ばれると、なにかいろいろまずい状況になる気がする。)


転入まで、あと二日ある。その間にありとあらゆる準備をしなければならない。

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