転機 3
そんなこんなであれこれしていると、やがてチャイムが鳴り、先生がやってきた。いつもはだいたい先生が席に着くよううながしてから皆が座りだすのだが、今日はすでに皆が自分の席についている。まあ、早く転校生がどんなヤツなのか見てみたいってところだろう。ったく、ホントわかり易いのなんのってな。
まあ、かく言う俺も人のことは言えないわけだが。
「はいはい、今日はいいお知らせがあります。まあ、すでに皆さん知っているようですが・・・。このクラスに新しい仲間が増えます!」
待ってましたと言わんばかりに教室がざわめいた。
皆の妙にソワソワした様子を察してか、いつもより巻いて先生は話を進めているようだった。
「それじゃあ入ってきてもらえる?」
先生がそう扉のほうへ言った。いよいよ転校生との対面のようだ。まあとりあえず、緊張の一瞬ではないだろうか。
扉を開いて入ってきた人物を見て、かすかに女子の中から歓声が上がった。転校生は男子だった。
割と細身で身長は中ほど。学ランがよく似合い、顔は人懐っこそうな感じだ。パッと見た感じなぜかカステラとかミルフィーユとかそういった類の食べ物が頭に浮かんだ。意味がわからん。普通はせめて動物とかだろ。ああ、これは女子にもてそうな感じだ。俺だって今じゃこんな有様ではあるけれども、男子であるので、クラスの男子らの心なしか面白くなさげな表情にも同意したいところだ。
「関西の方から来ました、士和馬っていうものです。はやくなじんでいきたいと思ってますんで、皆さんどうぞよろしく。」
士 和馬と名乗ったそいつは終始、きさくな笑顔でそう話した。それがまた妙に板についていてけして悪い感じはしない。すぐに教室に拍手の音がわいた。(比率でいったら、男子3割女子7割ってところだったわけだが)
「それじゃあ士君。そうね・・・とりあえずあの窓際後ろから2列目の2番目の席を使ってくれる?ちょうど今日そこ休みだから。まだ席が準備できてないのよね。」
ひと段落したところで、先生が苦笑いしながらそう言った。
後ろから2列目の2番目・・・って隣の席じゃないか。なんという偶然。ていうか先生。席ぐらい事前に用意しておくべきでは?まあ、そんなときたま抜けてるところが人気のポイントなのかもしれないけれどさ。
それにハイ。とこれまた笑顔で答えると士がこっちに向かって歩いてきて、隣の席に座った。クラスの女子の数名がこっちを見て微妙に恨めしげな表情をしている。まあ確かに普通の女子だったらこれはそれなりにおいしい機会かもしれないが、残念ながら俺は普通ではないので別にこれといった感情は当然わかない。なぜか少し損な気分だ。まあ、友好的な態度でいることに悪い点はないだろう。
「よろしく、士君。私は宮野彩芽です。わからないことがあったら何でも聞いていいよ。」
そう思い俺は、きわめてまとも、かつ明るくそう話かけた。しかし返ってきた答えは微塵も想像していなかったものだった。
「その様子だともうその状態にも慣れたようですね。お待ちしていましたよ、和哉君。」
俺は一瞬固まった。・・・は?おいおい今こいつは何を言いやがった・・・?




