転機 2
「おっはよー!!彩芽っ!」
俺が眠たそうな顔で教室に入ったと同時に、もう自分の名前となって久しいその名前を呼んだのは、薫だった。
「あ、おはよー。」
とりあえず笑顔をつくってそう答えた。まったく、どうしてこう朝からハイテンションでいられるっていうんだ。1パーセントずつくらい皆に配ってまわれば、そりゃあ、他クラスから軽く浮くくらいの活気あるクラスが誕生することだろう。
そう思ったところでふと違和感を感じた。おかしい、なぜか今日はいつもと違い妙にクラス全体が騒がしい。んー、いやなんというか少し空気の色が違う。
「あのさぁ、今日って何かあったっけ?」
数秒ほど今日の日程の中で、答えとしてめぼしいものを考えたけれども、何も浮かばなかったので薫に聞いてみた。
「そうなんだよ!彩芽は男子と女子どっちがいいの~?」
・・・いや、もうハイテンションについてはそのままで構いませんので、せめて質問には正しい返答をしてほしいんですが。
男子と女子だ?一体、何についての質問かも知らないってのになんと答えろというんだ。んー、自分がって言ったら今はとりあえずやっぱり男に戻りたいぞ。
「ちょっと待った、待った。ゴメン、それじゃあ話が全く見えないよ。」
「あ、ゴメンゴメン!ちょっと浮かれてたねー。そうそう、なんと今日うちのクラスに転校生が来るのよ!?ちょうどそのことをみんなで話してたんだ~。」
転校生だって?そりゃあ、また何か中途半端な時期だな。親の都合ってところだろうか。いや、訳ありの問題持ちってこともなくはないはずだ。どちらにしても確かに気になるな。それに、変な形とはいえ、一応転校生気分を経験している訳なので、少し親近感もわいてくる。




