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対面 4

聡はさっき、確かに「初めてあった気がしなかった。」と言った。


まあ、普通に考えれば、よくある決まり文句のようにも聞こえるけれども、俺がそう感じなかった理由は別のところにある。それは薫だ。

実は、聡と悠人がやってくる前に薫と話していたとき、薫からも、ほとんど同じようなことを言われたのだ。


「なんかさ~、私、こういうこと言うのもベタかなって思うんだけどさ、ホントに宮野さんを見たとき、ぜんっぜん初対面って感じがしなかったんだよね~。・・・」


的な感じだったと思う。そのときは、こいつは何を言ってるんだ、ぐらいにしか思ってなかったのだけれども、聡の言葉を聞いた今では、そうは思はない。なぜなら、確かに今の俺の姿は以前からは微塵も想像がつかないくらいの別物なわけだけれども、実際に俺自身はこいつらと先週まで過ごしていた訳なのだから。

薫や聡が何らかの、・・・よく分からないが第六感的な何か未知のパワーにより以前の俺の存在を感じ取ってくれているのかもしれない。なにやら電波なことを言っているように聞こえるかもしれないが、こっちは大まじめだ。もしそれが本当なのなら、現在の自分が全く以前の自分と切り離されているわけではないのだから。それならばきっと元の自分の姿に戻る方法もなくはないはずだろう。


「そういやさ~、宮野さん。遠野和哉ってやつを知ってたりしない?」


・・・はぁ!?突然聡が話しかけてきた。考えごとをしていたので、話の流れはまったく途中から覚えてないけれど、なにがどう転んだら、こんな核心じみた質問につながるって言うんだ。


「え、え!?い、いや~まったくわからないかな。アハハ・・・。だ、誰それ?」


はいはい、もちろん動揺しまくりの俺はまるっきり不自然な答え方をしてしまった。


「いやさ~、実は宮野さんが転入してくる前にさ、クラスにそんなやつがいたんだけどさ~、割とよくつるんでたってのに、何のあいさつもなしにいきなり転校しちまったんだよ。ちょうどまさに宮野さんと、入れ替わり立ち替わりみたいな時期にさ。ほんっとなにしてんだろうな。次あったら絶対問い詰めてやるっつの。」


「へ、へ~そうなんだ。それは一度会ってみたかったね。」


ほっとけよ。俺だっていきなりこんなことになるなんて思いもよらなかったんだから、別れの挨拶なんてできるわけないだろ。

それにしても、確かに交代での転入と転校というのは、少し不自然かもしれない。まさかいきなりこんな危うい状況になるとは思いもよらなかった。もっといろいろ考えておくべきだったかもしれない・・・。


「だよね~。ホントに和哉どこ行っちゃったんだろ・・・。」


薫がため息混じりにそう言った。


「大丈夫だって。そんなに心配しなくても、多分和哉だってなんもなしに僕たちと別れるなんて望んでなかったはずだし、きっとまたなんらかの形で再会できるって。少なくとも僕はそう信じるよ。」


悠人・・・、お前はなんていいやつなんだ。ああ、いつか元に戻れたら、真っ先にお前らに会いに行くことを今この場で宣言するぞ。(心の中で。)


「あったりまえじゃない!!和哉のやつ、絶っ対にこのままじゃすまさないんだから!!」

えええええ・・・・。なんでそうなる。




・・・まあ、何はともあれ、そんな感じで俺の新しい日常は幕を開いた。現段階では・・・、まあ不安しかないんだけれども、今はそんなことはあまり考えたくない。大丈夫さ。少しずつでも、何か元に戻るための手がかり的なものを探して行きたいと思う。


                            第一章おわり 第2章に続きます。

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