第1部 開幕
ピピピピピーーーーーーー
枕元に置いた携帯のアラームがけたたましい音を発している。毛布に顔を埋めたまま、手を伸ばして携帯を探す。春になったとはいってもまだ空気は俺の起床を妨げるのには充分過ぎるほどに冷たく張り詰めている。
ピッ。ようやく静かになった。なんて安心したのもつかの間、ディスプレイに表示された時計を見て俺は飛び起きた。
やばい、やばい。完全に寝過ごしてしまったようだ。昨日やっとテストが終わったばかりだからだろうか。さすがにテスト後に寝坊なんてありきたり過ぎてまずいよな。そう思い、即座に布団から抜け出すと、部屋のドアにかけてあるワイシャツと学ランをひっつかみ急いでそれを纏い始める。クローゼットの鏡を前に同時進行で鞄に教科書類も詰めていく。
そこで俺はようやくその変化に気がついた。
?何か違和感がある。特に胸のあたりが何か圧迫されているような・・・。ふと鏡の方をみるとそこに映っていたのは生まれてからずっと見てきた自分の姿ではなかった。肩くらいまで伸びた髪。うっすらと赤みを帯びた頬。そしてやや膨らんでいる胸元・・・。
??なんだこれ?状況が把握できないぞ。目をこすって、深呼吸して、再び鏡をのぞき込んだ後、俺は絶叫した。家のなかにかん高い叫び声が響き渡った。
「ちょっと和哉どうしたの?叫び声なんか上げて・・・、遅刻するわy・・・・・・」
叫び声を上げて心配そうに部屋にやってきたお袋も鏡の前で固まっている俺の姿を見て固まった。
「お、お袋・・・俺・・・」
「あ、ああ!和哉の彼女さんかしら!?やあねえ、もうあの子一言ぐらい言ってくれればいいのにねえ!」
そう言ってお袋はホホホと明らかに不自然な笑い声を上げた。いやいや待て待て。確かにこの状況では妥当な解釈だと思うが・・・違うだろ!!
「何いってんだよ!違うって!俺!俺だよ俺!和哉!」
「もう嫌ねえ。あんまりからかわないでちょうだい。和哉は男じゃないの〜。あなたはどうみてもかわいらしい女の子じゃないの〜」
かわいらしい女の子じゃないの〜・・・かわいらしい女の子・・・かわいらしい・・・その言葉が俺の心の中で何重にも広がった。嫌だー!!再び俺は叫んだ。
「どうしたんだ、一体!!朝から騒々しい!!和哉も早く準備をs・・・・」
なかなか下りてこないお袋を心配してか、部屋にやってきた親父も、部屋で固まる俺とお袋を見て固まった・・・。
お、俺これからどうなるんだろう・・・。




