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木こり 1


あれから2年が過ぎ、俺も5歳になった。

時間が飛びすぎじゃね? と思うが、何もイベントが無かったんだし、仕方が無いと思う。

だが、今日は違う、何しろ今日は…


「ロット、準備は出来たか?」


「うん、父さん。」


実はこれから森に行って、パピーの仕事を手伝う予定だ。

パピー的には、本当は好きなように人生を歩んでも構わなかったらしいのだが、俺の職業が木こりだったのもあり、パピーは俺に仕事を継がせたいみたいだ。


「それじゃ行くぞ。」


そう言ってパピーと俺は森へと出発した。

30分ほど歩き、今日の作業現場へと到着した。

何本か木が切られているが、適当に切っている訳ではなく、間引きするような感じでまばらに切っているみたいだ。


「よし、ロット、その辺にある赤い印が見えるな?」


「うん。」


切った切り株に赤く印が書いてある。


「ロットは、あそこの目印の隣に新しい苗を植えるんだが、出来るか?」


「うん、任せてよ。」


「そうか、じゃあ俺は向こうにある木を切っているからな。

 危ないから近くに来るんじゃないぞ?」


「は~い。」


そしてパピーは森の奥に行ってしまった。

そして、コーン、コーンと切る音が聞こえてきた。


「よし、俺も仕事をするとするか。」


パピーが担いで持ってきた籠には小さな苗が10本有った。

と言うことは10本植えるのが俺の仕事になる訳だな。

驚いたことだが、この世界の木こりは、ただ木を切るだけでなく、切る木の管理、そして植林も行い、キチンと森を管理していると言うことだ。

まぁ、開拓目的ならまだしも、考えなしに木を切れば自然が壊れてしまうから当然と言えば当然かもしれないけどな。


俺は手に持ってきた木製スコップモドキを使って、印が付いている切り株の脇に穴を掘る。

子供の力で固い土を掘るのは、思ってた以上に結構重労働だ。まぁ5歳だし仕方が無いのかもしれんが…

とりあえず、出来る範囲で一生懸命穴を掘ることにする。

一気にスコップを土深くまで刺して掘るって芸当は到底出来ないので、スコップを何度も土に刺して少しづつ土を崩していき、柔らかくなった土を除ける方法を取ることにした。

時間はかかったが、30分くらいで苗を植えられる深さの穴が完成した。


まずは湧水があちこちに沸いているので、それを汲んでくる。

掘った穴に水を入れ、その辺にある枯葉を敷き詰め、さらに水を入れる。

本来ならば肥料とかなんだろうが、この世界にそんな都合が良いものは無いので、こういう方法を取っているみたいだ。

次に苗を穴に入れ、先ほど掘った時に出た土を隙間に詰めていく、少しだけ山にするがポイントである。

最後に上から水を掛けて植林は終了である。


「ふぅ~、ようやく1本終わったか。」


穴掘りに30分、水掛け、埋める等でだいたい45分くらいだろうか。

と言うことは、10本全部が終るのは8時間半ほどかかる計算だ。

文句を言っても仕方が無いし、効率が良くなれば多少は早くなるかもしれないし、頑張ることにする。


・・・・


何も考えずに黙々と作業を行う。

ちょうど半分の5本が終ったところでパピーが声を掛けてきた。


「ロット、お昼にするぞ。」


声を掛けられて気が付いたが、太陽の高さからお昼をちょっと過ぎたくらいの時間みたいだ。

自分でも驚いたが、かなり集中してやっていたみたいだ。


「ほぉ、もう半分も終わったのか、えらいぞ!」


パピーが俺の頭をぐわしぐわしと撫でる。


「痛いよ、父さん。」


「がはははっ、悪かった、ほら飯にするから手を洗ってこい。」


「は~い。」


俺は湧水で手を洗い、ついでに飲み水も確保しておく。

そして、パピーの所に戻る。


「ほら、ロットの分だ。」


手渡されたのは、おにぎりモドキだ。

何でおにぎりモドキかと言うと、米じゃないからだ。

多分、粟とか稗なんだろうと思う。

昔話とかでしか聞いたことが無かった食べ物だったが、味はそれほど悪くないと言うか、結構旨い。

唯一の不満は少し硬いくらいだ。お蔭で顎は丈夫になったと思う。

固いからシッカリ噛まなくてはならなく、噛むことで満腹中枢が刺激され、少量でも結構満足するのがお得である。


「よし、残りを終わらせてしまうか、ロットも頑張るんだぞ。」


「うん。」


二手に分かれ、午後の作業を再び開始するのだった。


・・・・


「終わった~」


夕刻になり、すべての苗を植え終えることが出来た。

パピーはすでに木を切り終わっていたが、俺の作業をじっくりと観察していて手伝ってはくれなかった。

まぁ、勉強と言うか作業が間違ってないかの確認とか、一人でもやっていけるようにとの教育も有ったんだろうな。


「よし、ごくろうさん。

 じゃあ、帰るぞ~」


「は~い。」


「ロット、帰る時は落ちている枝を拾っていくからな、拾ったら籠に入れなさい。」


「わかった~」


薪用の枝を持ち帰らないと飯が食えなくなるので仕方が無いことなのだ。

結構疲れてはいるが、頑張って拾いながら家に帰るのだった。


植林は考えなしに行うと花粉症みたいなのが起こるかもしれないな…

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