トンクリと女の子
「ロット、起きなさい。」
マミーの声で目が覚めた。
「母さん、おはようございます。」
「ロット、起きたか、じゃあ行くぞ。」
まだ起きたばっかりなのに、パピー早いよ、早い男は嫌われるんだぞ?(意味深)
そんな俺の都合など関係無く、再び丸太の上に座り、宿を出発する。
チェックアウトの手続きは要らないのか? と思ったが、馬小屋だし要らないんだろうな。
「ロット、はい。」
マミーが何かを渡してきたので受け取ると、そいつはパンだった。
異世界来て初めてのパンですよ、いただきま~す!
ガッ!
「何じゃこりゃ~!」
「何って、パンよ?
そう言えば、ロットは食べたこと無かったかしら?」
「無いよ、それに、これ硬くて食べられないんですが…」
「ロットにはまだ早かったかしら、でもこれしか食べるの無いし、どうしましょう。」
「仕方がない、我慢しろ。」
「え~!!」
幼児虐待反対~!! ネグレクトは警察に捕まるんだぞ~!!
って、ここ異世界でした。残念…
お腹をグーグー鳴らしながら馬車は進んでいく。
目的地の材木売り場に到着したので、馬車を降りた。
「木材を売ってくるから、ここで待っててくれ。」
パピーは馬車を引いて行ってしまった。
仕方が無いので待つことにする。
お腹が減っているので、なるべく体力を使わないためにも地面に座り込む。
グウゥ~~
あ、またお腹が鳴った、腹減ったな…
そんなことを考えていると、突然声を掛けられた。
「お腹が減っているの?」
振り向くと、そこには5歳くらいの可愛い女の子が居た。
フラグキター!!
俺が頷くと、女の子が何かを手渡してきた。
「じゃあ、これあげる~♪」
「あ、ありがとう。」
女の子は俺に渡した後は、走って何処かに行ってしまった。
思いがけないプレゼントに、俺はぼーぜんと女の子が去っていくのを見ているだけだった。
女の子が見えなくなったので、ふと我に返り、俺は手のひらを開いて貰った物を見てみると、そこにはドングリみたいな小さな木の実が有った。
貰ったは良いが、これって食えるのか?
知らない物を食べて毒で死ぬのも馬鹿らしいので、マミーに確認してみることにした。
「母さん、これ貰ったんだけど。」
「ん? どれどれ、あートンクリね、美味しいわよ?」
「これって食べられるの?」
「ええ、そこにある石で殻を割ってみなさい。」
俺は言われたとおりに石で殻を割ると、中からアーモンドみたいな実が出てきた。
「このまま食べられるの?」
「ええ、大丈夫よ。」
マミーにそう言われたので口に入れてみると、ほんのりとした甘みでカリっとした食感でなかなか悪くない。
「おいしい…」
「よかったわね、ちゃんとお礼は言ったの?」
俺が頷くと、マミーは満足したみたいだった。
しらばらくして、パピーが戻ってきた。
「終わったぞ、次はロットの祝福だな。」
「そうね、じゃあ教会に行きましょう。」
どうやら祝福は教会で行われるみたいだ。
荷物の無くなった馬車に乗り込み、俺達は教会へ向かうことにした。
いったいこの女の子は誰なんだ?(棒読み)