アリスとの共同作業
俺とパピーは何時もの如く市場へとやってきた。
まずは出店を管理している事務所へと向かう。
出店場所の変更手続きを行う。
もともとあった場所と値段が同じだったため、特に問題も無く変更することが出来た。
追加料金も発生しないみたいなので良かった。
手続きも済んだので俺達は新しい場所へと移動することにする。
いつも売っている場所の脇を抜け、進んでいると、何人かよく見かける人が居たが、ここで売らないことにビックリしていた。
慌てて一人の男性が声を掛けてきた。
「ちょ、ちょっと、今日はトマトを売らないのか?」
「いえ、売りますよ? ただ、今回は場所を変えることになりましたので。」
「そ、そうか、良かったよ。」
男性はホッとしている。
多分、この人は差額で儲けている人なんだろうな。
俺達はアリスの出店の所までやってきた。
「アリス、お待たせ~」
「待ってたわ!」
「今日はアリスの店の脇での出店に手続き変えてきたから。」
「そう、ならロットのは、そっちで売ることにするわ。」
「うん、で、僕は何をすれば良いの?」
「まずは持ってきたものを見せて頂戴。」
俺は今日の収穫物を見せた。
「こっちのは少し小さいけど、どうしたの?」
「明日は売りに来ないから、少し小さいけれど、全部収穫して持ってきたんだ。
こっちは安く売っても良いかなって思ってる。」
「ふ~ん、今日で終わりなんだ、そっか…」
アリスが少し落ち込んだみたいに見えたが、直ぐに気を取り直して言ってきた。
「まあいいわ、えっと、トマトが80個、少し小さいのが20個、トゥメイトウが40個ね。」
アリスは少し考えている。
「そうね、トマトとトゥメイトウのセットを鉄貨12枚、トマトと少し小さい物を鉄貨15枚、トマト単品を鉄貨10枚で売りましょう。」
どうやら抱き合わせ販売をするみたいだ。
「昨日の売値より安いけど良いの? 後、単品で売った方が高くならないかな?」
「この金額だからこそ売れると思うわよ、昨日と同じにしちゃうと、転売する人が買って行かなくなるから時間掛かるわよ?
それに、トマトだけなら単品でも良いけど、トゥメイトウだけだと時間掛かるし、一緒に売ったら早く売切れるわよ?」
「わかった。」
抱き合わせも確かに戦略だし、値段にも納得した。
こっちが売った後なら、後は相手がどう売ろうが知ったこと無いしな。
「後はこれね。」
アリスが紙に書いた何かを持ってきた。
読んでみると、トマトを使った料理のレシピだった。
「これ、昨日作ってみたんだけど、美味しかったな~」
アリスは思い出したのかにんまりしている。
「…はっ、よだれ出てないよね? よかった。
後は、これも追加しておかないとね。」
そう言って、看板に何かを書き足している。
読んでみると、『本日トマト販売最終日』の文字が目立つように書かれていた。
なるほど、人の心理的に、残り僅かとか本日限定とにすると、手に入らなくなるって思いから、どうしても欲しくなっちゃうからな。
俺には思い付かなかったな、さすがはアリスだ。
「これで準備完了~っと♪ じゃあ始めるわよ!」
トマトの販売を開始したと同時に、待ってましたと転売屋たちが群がってきた。
「トマトをくれ! …って高っ!」
「いらっしゃいませ~ どれを幾つ御用でしょうか?」
「うっ…そ、そうだな、トマトの単品を全部だ!」
「ありがとうございます~ えっと、鉄貨10枚が20個だから…えっと…」
「鉄貨200枚、または大鉄貨20枚か、銅貨2枚だ。」
「銅貨2枚で頼む。」
「まいどありがとうございました。」
「お、俺は…トマトとトゥメイトウのセットを10だ!」
「鉄貨120枚、または大鉄貨12枚、または銅貨1枚と大鉄貨2枚です。」
「大鉄貨12枚で。」
「まいどありがとうございます。」
最初は値段の高さに戸惑い、文句を言おうとした人も居たが、自分がそれ以上の金額で売っている以上、何も言えずに、買ってく人が沢山居たのは笑えた。
それに、今日が最終日と言うこともあり、手に入らなくなる前にってことでみんな競って買っていくのだった。
そして、いつもより時間は掛ったが、あっという間に全部売ることが出来た。
「やっぱりトマトの売り上げって凄いね、そして計算手伝えなくてごめんね。」
「気にしなくても良いよ。僕だったらこんな売り方なんて思いもしなかったし、出来なかった。ホント助かったよ。」
そして今日の売上は数えてみると初日の約10倍で鉄貨で言う所の980枚だった。これには俺もパピーも正直驚いている。
「ととととと、父さん、ききききききょ、今日はおおおおお、お肉かな?」
「そそそそ、そう、そうだな、買って帰ってもよよよ、良いかもな。」
「あんたたち、慌て過ぎよ?」
アリスがため息をついている。
「それで、ロットは今日でお終いなんだよね?」
「お終いと言っても、また野菜が出来たら売りに来るよ?」
アリスは、てっきりもう会えないと思っていたらしく、あんぐりと口を開けている。
「かかかか、勘違いし、しないでよね。やかましい人が居なくなるから少し静かになると思っただけよ、あー清々した。」
耳まで真っ赤にしていて説得力無いぞ?
「次は見てなさい! 絶対私が勝つんだから!」
「そうだな、アリスは凄いからきっとそうなるかもしれないな。」
「ふ、ふん。」
「アリス、これあげる。」
「い、良い心掛けじゃない、ってトマト? 5個も有るけど良いの?」
「うん、今日畑で一番出来が良かったものを取っておいたんだ、後で食べてよ。」
「嬉しい~ ありがとう! …はっ! かかか勘違いしないで、これは正当な報酬を貰っただけだからね。」
「分かってるよ。」
「ロット君、今回は色々とありがとう。だが、娘はやらんからな!」
「もう、あなたったら、ロット君、アリスのこと宜しくね♪」
「は、はぁ…」
「ちょ、か、母さん!」
「あなた、こんな優良物件なんか他に無いですよ?」
「しかしなぁ…」
「何か?」
「いえ、何でも無いです…」
アリスの家もマミーの権力が強いみたいだな。
つーか外堀埋められてんじゃね?
まぁ、アリスも性格は嫌いじゃないし、アリかもなしれないな。貴重なツンデレキャラだし、玉ねぎだけどな…
「じゃあ、アリスまたね。」
「次も絶対市場に来なさいよね! 来なかったら許さないんだから!」
「うん、分かったよ。」
「…」
「何?」
「指…」
「指がどうしたの?」
「約束なんだから小指を出しなさいって言ってるの!」
「えっと、はい。」
俺が小指を出すと、アリスの小指を絡めて、
「次も絶対来ること、約束、せせせのせ!」
そう言って指切りをした。
言葉は違うが、この世界も指切りって有るんだとその時は思ったのだった。
こして俺の初商売は終わったのだった。
アリス可愛いよアリス…タマネギだけどな。




