現実は
とりあえず異世界に転生したことは分かった。
なら、異世界定番でもある魔法を使ってみたいと思います。
もちろん赤ちゃんが魔法を使ったら大騒ぎになるだろうから、こっそりとである。
だが、俺のマミーが魔法を使っている所を見たことが無い。
パピーは存在自体見たことすらない、もしかすると俺が寝ている最中に来ているかもしれないが、見たことが無いので居るのかどうかも分からん。
見た事のない魔法が使えるのかは分からんが、試してみるのはタダだ、まずは自己流で頑張ることにする。
「ばぶぅ!(光よ!)」
…何となく言ってみたが、何も起こらなかったのでダメらしい。
なら、よく異世界物小説で丹田の辺りに魔力がって話が有るので、それを認知するところから始めることにする。
丹田ってみぞおち辺りだよな? この辺りに何か無いかじっくりと感覚を研ぎ澄ませて感知してみる。
・・・・
だああぁぁぁ~~分からん。
よくぽかぽかするとか言われているが、そんなもんねーよ。
もっと力を入れないとダメなのかもしれない。
プピッ…
「あぶぶ、あきゃきゃああ~、あうあうあ~!(へい、マミー、うんこが出た、何とかしてくれ!)」
「〇●▽、ロット、&%¥=!?」
毎度おなじみの公開プレイである。
今日の所はこれで勘弁してやろう(えらそう)。
・・・・
生後6か月くらいが過ぎ、俺もすくすくと成長を遂げている。
言葉はまだ話せないが、聞く分には問題が無くなった。
ふっ…俺の頭脳の凄さにはビックリだぜ!
え? 魔法? 何それ? 僕、赤ちゃんだからわかんな~い!(爆死)
そこにマミーがやってきた。
「ロット、今日お父さんが帰って来るよ!」
ホワッツ? え? 俺にパピーって居たの?
今まで会ってないからてっきり死んだもんだと思ってたよ。
「あぶぶ? あーうーあきゃきゃうきゃう?(まじっすか? 何処行ってたんっすか?)」
「あらら、お父さんが帰って来るって聞いたらご機嫌になったねぇ~」
いや、全然? つーか質問答えろよ!
って言うか言葉話せ無かったんでした。サーセン。
「お父さんは、街に出稼ぎに行ってるんだよ。」
あ、教えてくれるんっすね。アザーッス!
「あきゅあ、あきゃ?(何で、出稼ぎに?)」
「そうだね~、お土産一杯買ってきてくれると良いね~」
駄目だ、通じてなかった。
・・・・
日も暮れる時間にパピーが帰ってきた。
「ただいま、戻ったぞ。」
「あなた、お帰りなさい。」
「あきゃきゃ、きゅあきゃぁ~(パピー、お務めご苦労さんっす)」
「お、ロットか? 随分大きくなったんだな、見違えたぞ!」
パピーが俺を抱きかかえてほおずりしている。
「あきゃう! わきゃきゃうきゃあぶ!(痛てーよ、何すんだこのくそオヤジ!)」
「ほら、あなた、ロットが痛がってるわよ。」
「おお、すまん、つい嬉しくなってしまってな。」
そう言ってパピーが俺をベットに降ろしてくれた。
落ち着いたので俺のパピーを紹介するぜ!
熊、以上!
体はデカイは、胸毛やら腕毛やらがモジャモジャ、髭もモジャモジャ、顔は怖い、もうそれ以外に表現出来ん。
ただ、ジャガイモマミーと熊パピーの愛の子である俺の将来は…はい、終了~!!
もういいよ、諦めたよ、0歳児だけど諦めた、人間諦めも肝心だと思う。
「そろそろ夕食にしましょうか、ロットは今日から離乳食にも挑戦しましょうね。」
「あう?(何だと?)」
とうとう固形物が食べられるのか!? 苦節6ヵ月、長かった…
マミーがテーブルに食事を乗せて行く。
ご飯みたいな穀物や、野草の炒め物、そして何かの肉だ!
何と言うことでしょう、肉ですよ奥さん!
異世界初の固形物で肉を食わしてくれるなんて、なんで良いマミーなんでしょう!
「お、今日の夕食は旨そうだ。」
「今日はあなたが帰って来る日ですから、お疲れ様でした。」
うんうん、わかるよ、さすがは俺のマミーだ。
「はい、ロットのはこれね。」
コトンと置かれた器には、茶色いドロッとした何かが入っている。
「あうあ?(何っすかこれは?)」
「おいちいですよ~、あ~ん♪」
マジですか…
俺は味の無い良く分らん物体を食べさせられるのだった。
さすがにイキナリ肉は無いよな、うん。