御者
俺が一人前と認定されて早3年が過ぎ、俺も10歳になった。
だから何も無かったんだってばよ、木を切って、植林しての毎日なんだからさ。
でも、今日は新しく俺にも…
「ロット、準備は出来たか?」
「うん、父さん。」
実はこれから街に行って、木材を売る予定だ。
とうとう俺も木材の販売をさせてもらえることになったのだ。
そして、3歳の時以来の街でもある。楽しみである。
「それじゃ行くぞ。」
そう言ってパピーと俺は街へと出発した。
今回は丸太の上ではなく、御者席である。
1時間ほど道を進み、ふとパピーが声を掛けてきた。
「ロット、ロパの操作をやってみなさい。」
「ちょ、いきなり言われたって出来ないよ。」
「大丈夫だ、最初はただ手綱を握っているだけで良い、勝手に道に沿って進むからな。」
「そ、そう? ならちょっとやってみる。」
俺がパピーより手綱を受け取り握る。
ロバは何も変わらずカッポカッポと歩き続けている。
「よし、その調子だ。
もし、ロパを止めたい場合は手綱を引けば止まるが、だけど強く引くなよ? ロパがビックリするからな。」
「わかった。」
「少しやってみよう、ロット、あそこの木の位置で一度止まりなさい。」
「うん。」
パピーが指定した木のところまで来たので、手綱を引いて馬車を止める。
「上手いぞ、そのくらいなら問題ないな、次は進ませ方だ。
軽く手綱でロパの背中を叩くと歩き出すが、強くたたくと走り出すから気を付けるんだぞ?
走らせるのはよっぽどのことが無い限りは絶対するんじゃないぞ?
ロパが怪我をするかもしれないのもあるが、俺たちも危険だからな。」
「わかった。」
俺は軽くパチンとロバの背中に打ち付けると、ロバがカッポカッポと進みだした。
「そうだ、良いぞ、やはりロットは筋が良い。」
「そうかな?」
「ああ、俺が言うんだ、間違いない、がはははっ。」
「へいへい。」
それからしばらく馬車を進めていると、またパピーが声を掛けてきた。
「そろそろ分かれ道が見えてくるから、曲がり方を教えておく。
いいか、手綱を引っ張り、ロパの顔を曲がりたい方向に向ければ後は勝手に曲がってくれるぞ。」
「わかった。」
「ほら、向こうに分かれ道が見えてきただろう? あそこを右に行ってくれ。」
「うん。」
曲がり道の5mほど手前になった時にパピーが声を掛けてきた。
「今だぞ。」
「あ、うん。」
俺は慌てていても、優しくロバの首を向けさせた。
ロバは向けられた右の道を進んでいく。
「どうした、指示が遅かったじゃないか。」
「ごめん、てっきり分かれ道の直前で指示するものだとばかり思ってたんだ。」
「そうか、俺の説明不足だったな、すまんかった。」
「ううん、こうしてキチンと教えてくれたし、間に合ったしね。」
「よし、これで一通りは教えた、街まではロットがやりなさい。
なに、ここからは街まで一本道だ、迷うこともない。」
「それって、父さんが楽したいだけじゃないの?」
「がははははっ、バレちまったか、いいじゃねーか。」
「いいけどね。」
こうして俺が御者をして街へと向かうのだった。
馬車運転してみたい。




