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記憶を糧にやり直せたなら  作者: ひまガネTYPEMAN
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6話 神社での打ち合わせ

「後は依頼主を待つだけですね」


 集合時間の数分前。神社には既に怜と彰、そして天笠が集まっていた。


「でも、随分変わった集合場所ですね。皆いつもこんな感じなんですか?」


 額の汗を拭いながら、彰は苦笑しつつ言った。


「いいや。俺もこの集合場所には文句を言いたいところだ。駅から行けるようなところならクーラーも効いてて行きやすいってもんだろうに」

「人気が無いという点では良いと思いますよ」


 怜は一人涼しげな顔でそう言った。


「いいや。それについてもアレだぜ? 俺が到着した時には学生が一人いたんだ。まあ、上手いことバッティングは避けられたみてえだがな」

「悪かったな。色々と不満がでる対応で」


 三人が振り向くと、神社の入り口には二人の男女が立っていた。

 男の方は茶色に染めた髪の毛。そして耳にはピアスという大学生のような格好をしており、女の方は栗色に染めた髪を後ろで短く縛った運動系サークルに所属していそうな雰囲気をしていた。


「あぁ、悪い悪い。それで君らでいいのか? 俺らを応援に呼んだのは」

「ああ。俺は桜庭春樹ってんだ。で、こっちが明葉。夏見明葉だ」


 そう紹介されると、明葉は小さく頭を下げた。


「ご丁寧にすまねえな。俺らは――」

「あんたらの事は知ってる。早速、本題に入らせてもらう」

「――チッ。じゃあ、よろしく頼む」


 天笠は小さく舌打ちをし、桜庭に話を進めるよう促した。


「依頼内容は既に伝えた通り、俺たちの仕事を手伝ってほしい。ぶっ殺す対象である異形の化け物なんだが、そいつは数か月前から人を襲い喰らっている。喰い方は二通り。全身を喰らう場合と、、頭部のみを喰らう場合とだ。何故そんな違いがあるのかは知ったこっちゃないが、喰らった後に吐き出す肉片を調べてみたところ最近は頭部のみを喰らう方がお好みなようだ。被害者はみな人気のないところで襲われていて……まあ既に伝えた通り若い女性や少女、おっさんに若い男性と共通点の様な物はない」

「まあ、事前に連絡いただいた通りですね。他に何か分かったことは?」

「ああ……それなんだが」


 言い淀む桜庭を尻目に、明葉があっけらかんと言い放った。


「昨日殺しそこなって逃げられちゃいました」

「……この神社の前を流れる川の上流。そこにある住宅街でな。増水した川にダイブされちまった」

「なんだそりゃ……。まあ、そこで仕留められてりゃ俺らはやってきた意味が無くなってたってわけか。で、姿かたちは見たわけだろ? それについて教えてくれよ」


 天笠はため息を一つつくとそう言った。桜庭は自身の失態をフォローされたような気がして面白くない様子で舌打ちをすると説明を続けた。


「ああ。奴は俺を背後から襲ってきやがった。金属バットを使ってな。人語を喋っていたことから知能はあるようだ。姿は人の形をしてはいるが肌は真っ白。顔も口しかないというまさに異形といった様だ。加えて奴は身体を自在に伸縮させることが出来るようで、現に腕を伸ばし遠くの電線を手繰り寄せて跳躍。逃げちまった」


 人の形をしているということを聞き、彰が考えを述べた。


「人の形をしているとはいえ、それだけ奇妙な顔をしているのであれば街中に溶け込むといったことは難しいでしょう。昼間は人気のないところにでも身を隠し、夜中に行動しているんですかね。いや、そもそも身体を伸縮できるのではなく、自在に姿形を変形させることが出来るのかも……」

「まあ、そのあたりは俺たちも正確には分かっちゃいない。だからなのだろう。俺たちも探すのにはすげぇ苦労した。わざわざ囮になるべく夜中に歩き回ってようやく……って感じだったんだがな。だが、これからは奴を探す『当て』がある。さっきも言ったように俺たちは昨日奴に遭遇し、そしてその両足や胴体を吹き飛ばしてやった。傷を再生できる厄介な相手なら話は別だが、直ぐにでもこの川沿いを捜索し虫の息であろう奴を見つけ出し、今度こそぶっ殺す。今度は確実に脳天をぶち抜いてやってな」

「ああ、だからここを集合場所にしたと……」


 怜は納得した様子でそう言うと、他に情報は無いのかと尋ねた。


「他に……か。何かあるか? 明葉」


 桜庭は隣にいた明葉に尋ねた。


「声色を複数使い分けてたね。女の子の声だとか、おじさんの声だとか。それで動揺を誘うんだと思う。ただ……」

「ただ?」

「『早くコイツを殺してくれ』って……逃げる間際によくわからない言葉まで発してたね。若い男の声で、自分を殺してくれという言葉を発する意図が私には分からなかった。喰われた人の意識がまだ残っているようでもあったけど」

「そういえばそんなこともあったな。だが、あれも俺たちの動揺を誘う意図があったんだと俺は思うぜ? 喰われた人間が生きているんじゃ殺すのを躊躇してしまうかもしれないからな。まあ、俺には関係のない話だ。意識が残っていようがいまいがもう救いようのねえことは確かだ。俺は確実に仕留める。それだけだ」

「そうですか……まあ、油断をすれば我々が命を落としますからね。貴重な情報……ありがとうございました。では直ぐにでも探しますか。瀕死のままでいてくれたら良いんですけど」


 怜はそう言って立ち上がると、天笠、そして彰と共に神社を後にしようとした。


「ああっと。ちょっと風宮さんには聞きたいことがあるんだ。少し待ってくれ」

「?」


 突如二人で話し出す二人を遠目に見ながら、天笠と彰は神社の入り口でどこを探すべきか考えた。


「取りあえず俺も川沿いを探すとするか。お前はどうすんだ、彰?」

「数人で川沿いを歩いても効率は悪そうなんで、少し離れた場所も探してみようかなと。這いずって動き回るくらいは出来るのかもしれないので」

「じゃあ、私もそうしようかな!」


 突如背後から聞こえた声に彰は驚いて振り返った。

 見ると明葉がニコニコとした表情で満足げに立っていた。


「何を驚いてんの? 緊張感があって良いとは思うけどね」

「いやいや、驚かせようとしてんでしょ? これから例の異形を探しに行くかって気を引き締めてたんですよ」

「お前はあの桜庭ってのと行動しなくていいのかよ?」


 天笠はあきれた様子で言った。すると明葉は桜庭の方を見ながら返事をする。


「うん。面倒臭いからね。それにもうここより上流は見て回ったからそんなに人数も要らないでしょ」

「ああそうかい。まぁ好きにしろって」

「そうしようかな。それじゃあ何かあったら密に連絡を取りましょう」


 そう言うと明葉は手を振り行ってしまった。

そうこうしている内に話を終えた桜庭は辺りを見回し、明葉において行かれたことに気付くと小さく舌打ちをして川沿いに下流へと歩いて行った。


「おう。話は終わったのか? 怜。要件はなんだったよ?」

「ええ……まあ。なんだかよく分からない感じでしたね。どこに泊まっているか、だとか。今度は仕留め損ねないよう、一緒に行動してくれだとか」

「なんだそりゃ……? それで、どうするって?」

「適当に断りました……なんだか不気味だったんで」

「まあ、それが良いわな。気を付けたほうが良いぞ」

「そういえば風宮さん。昨日メールした件は大丈夫なんですか? 刑事を語る二人組が街中で、写真片手に探し回ってますけど……?」

「ああ……その件ですか。ちょっと、どういった人達なのか分からないので、今回はなるべく人目を避けて行動したいですね……」

「そうすると良い。俺は川沿いを探してみるがお前らはどうする?」

「では……我々も川沿いの……少し離れた場所でも見て回りますか。近くに中学校もあるみたいですし、人通りの少ない時間帯に生徒が襲われる……なんてことも考えられますからね。彰さんも一緒にお願いします」

「そうですね。取りあえず深夜くらいまで捜索しますか。めちゃくちゃ蒸し暑いですけどねぇ」


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